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海外に住む子へ贈与するときの相続時精算課税|110万円以下でも届出が必要?

海外居住の子・孫への生前贈与

海外に住む子へ贈与するときの相続時精算課税
110万円以下でも届出が必要?

贈与税が0円でも、「何もしなくてよい」とは限りません。初めて制度を選ぶ年と、すでに選択済みの年では、必要な手続が異なります。

30秒で結論

海外に住む子や孫へ110万円以下の財産を贈与し、その年に初めて相続時精算課税を選択する場合、贈与税の申告書が不要でも「相続時精算課税選択届出書」は期限内に提出する必要があります。

一方、同じ贈与者についてすでに相続時精算課税を選択済みで、その年の対象贈与が基礎控除額以下である場合には、原則として改めて選択届出書を提出する必要はありません。

海外居住者の場合は、これに加えて、国内の住所・居所、贈与税の課税範囲、納税地、納税管理人、提出方法を早めに確認します。

まず確認|今回が「初年度」か「2年目以降」か

初めて選択する年

110万円以下でも選択届出書が必要

贈与税の申告義務がない場合でも、相続時精算課税を選ぶための届出は別に必要です。

期限:原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
すでに選択済み

毎年、選択届出書を出す制度ではありません

同じ特定贈与者についてすでに選択済みで、その年の対象贈与が基礎控除額以下であれば、通常は贈与税申告も再度の選択届出も不要です。

ただし、他の贈与者からの贈与や他制度の適用関係は別途確認します。
図解で確認:最初に見るべきポイントは、贈与額だけではありません。「今回が初めて選択する年か」「すでに選択済みか」を先に確認します。
海外に住む子や孫への110万円以下の贈与について、相続時精算課税を初めて選択する年は選択届出書が必要で、2年目以降は基礎控除以下なら原則として贈与税申告と選択届出書の再提出が不要であることを示す判断フロー
相続時精算課税の初年度と2年目以降、海外居住者の追加確認事項をまとめた判断フロー
図の赤枠に該当する方は要注意です。
110万円以下でも、初年度の選択届出書を期限内に提出しなければ、その年から相続時精算課税を選択することは原則としてできません。

よくある失敗|「100万円だから何もしなくてよい」

日本に住む父が、海外に生活の本拠を移した子へ、日本の預貯金100万円を贈与するケースを考えます。

子は今回の贈与から相続時精算課税を選択する予定です。令和6年1月1日以後の相続時精算課税には年110万円の基礎控除があるため、他の対象贈与がなければ、100万円の贈与について贈与税額は生じず、贈与税の申告書も原則として不要です。

しかし、ここで「申告書が不要=選択届出書も不要」と考えると、手続を誤ります。

相続時精算課税を初めて選ぶ年には、贈与税申告書の要否とは別に、相続時精算課税選択届出書を期限内に提出しなければなりません。期限を過ぎてから、当初の予定どおりに遡って選択することは原則としてできません。

「贈与税申告」と「選択届出」は別の手続です

確認事項贈与税の申告書相続時精算課税選択届出書
目的その年の贈与税額を申告する相続時精算課税を選択する意思を届け出る
110万円以下の場合基礎控除後の課税価格がなければ原則不要初めて選択する年は必要
毎年必要か申告義務がある年に提出同じ特定贈与者について原則として初年度のみ
期限徒過の影響内容により期限後申告等の問題その年からの相続時精算課税選択が原則不可
重要:相続時精算課税は、いったん選択すると、その特定贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません。届出を出すかどうかは、単年度の税額だけでなく、将来の相続まで含めて判断します。

海外に住む子への贈与では、何を追加確認するのか

  • 本当に日本の税法上、国内に住所がない状態か
  • 国内に「居所」が残っていないか
  • 贈与者・受贈者の国籍と過去の国内居住歴
  • 贈与する財産が国内財産か国外財産か
  • 相続時精算課税の年齢・続柄要件を満たすか
  • 受贈者の納税地をどこにするか
  • 納税管理人を定める必要があるか
  • 戸籍等の添付書類を期限までに用意できるか
  • 書面提出かe-Tax提出か
  • 贈与先の国で贈与税・所得税・報告義務がないか

日本の贈与税だけでなく、居住国側の税制や申告義務が生じることがあります。外国税制については、現地専門家との確認が必要です。

納税地と納税管理人は、期限直前ではなく先に確認します

相続時精算課税選択届出書は、受贈者の納税地を所轄する税務署長へ提出します。そのため、海外居住者の案件では、まず提出先を確定できる状態にする必要があります。

また、国税通則法上の納税管理人の事務範囲には、申告書だけでなく、国税に関する申請・請求・届出その他の書類の作成・提出や、税務署からの書類受領も含まれます。

表現上の注意:国税庁の一般向け案内は「贈与税の申告をする必要がある場合」を中心に納税管理人を説明しています。一方、選択届出書のみを提出する場合でも、届出その他の国税手続を国内で処理する必要があるため、国内の住所・居所、提出方法、納税管理人の要否を個別に確認するのが安全です。
  1. 受贈者の国内住所・居所と居住実態を確認
    住民票だけで決めず、生活の本拠や国内滞在状況も確認します。
  2. 贈与税の課税範囲と納税地を確認
    贈与者・受贈者の住所、国籍、国内居住歴、財産所在地を整理します。
  3. 納税管理人の要否と人選を確認
    必要な場合は、国内で継続的に連絡・書類受領ができる人を選びます。
  4. 選択届出書と添付書類を準備
    戸籍等は取得に時間を要することがあるため、早めに着手します。
  5. 提出方法と到達確認を決める
    書面提出、送付、e-Tax等のうち、期限内提出を確実に確認できる方法を選びます。

必要書類|初年度に準備するもの

基本となるのは、相続時精算課税選択届出書と、受贈者の続柄・生年月日等を確認できる戸籍謄本または抄本等です。具体的な添付書類は、贈与者と受贈者の関係、特例の利用有無などにより異なります。

主な書類

  • 相続時精算課税選択届出書
  • 受贈者の戸籍謄本または抄本等
  • 贈与税申告が必要な場合は贈与税申告書
  • 必要に応じて納税管理人届出書
  • 必要に応じて納税地に関する手続書類

早めに確認する事項

  • 海外から戸籍等をどう取得するか
  • マイナンバー・本人確認書類の取扱い
  • 電子提出に必要な利用者識別番号等
  • 税務署からの通知を誰が受けるか
  • 提出後の受信通知・控えをどう保管するか

税理士はここを見る

1.制度選択が本当に有利か

110万円が相続時に加算されない点だけでなく、撤回できないこと、将来の値上がり・値下がり、相続税申告、他の相続人との公平まで確認します。

2.贈与の成立と証拠

資金移動だけでなく、贈与者・受贈者双方の意思、贈与契約、受贈者による管理・支配を確認します。

3.海外居住者の課税範囲

「海外に住んでいる」という一言では決まりません。国籍、過去の居住歴、財産所在地を確認します。

4.期限内提出の証明

期限当日の準備ではなく、添付書類、提出先、電子送信環境、受信通知まで含めて逆算します。

セルフチェック

  • 今回が、その贈与者について相続時精算課税を初めて選ぶ年である
  • 贈与者の年齢と受贈者の年齢・続柄を確認した
  • 贈与額が110万円以下だから手続不要、とは考えていない
  • 受贈者の国内住所・居所の有無を確認した
  • 贈与者・受贈者の国籍と過去の居住歴を確認した
  • 贈与財産の所在地を確認した
  • 提出先税務署を確認した
  • 納税管理人の要否を確認した
  • 戸籍等の添付書類を準備できる
  • 居住国側の税務も確認した
一つでも未確認の項目がある場合は、贈与実行前または遅くとも提出期限より十分前に整理してください。

よくある質問

Q.100万円の贈与なら、贈与税申告も選択届出も不要ですか?
いいえ。贈与税申告書は原則不要でも、その年に初めて相続時精算課税を選択するなら、選択届出書は期限内に必要です。
Q.すでに前年に相続時精算課税を選んでいます。今年も届出が必要ですか?
同じ特定贈与者について、通常は再度の選択届出は不要です。その年の対象贈与が基礎控除額以下なら、原則として贈与税申告も不要です。
Q.期限を過ぎた後に届出を出せば認められますか?
原則として、その年から相続時精算課税を選択することはできません。災害等による期限延長など、法令上の例外に該当するかは個別に確認します。
Q.海外に住んでいれば、必ず納税管理人が必要ですか?
国内の住所・居所、処理する国税手続、提出方法等により確認が必要です。「海外在住」という事実だけで機械的に結論を出さず、納税地と合わせて整理します。
Q.海外からe-Taxで提出できますか?
利用するシステムや手続によって対応範囲が異なります。選択届出書だけを電子提出する場合は、対応するe-Taxソフト、利用者識別番号、電子証明書等を事前に確認します。
Q.日本で税金がかからなければ、居住国でも何もしなくてよいですか?
そうとは限りません。居住国で贈与税、所得税、情報報告義務等が生じる場合があります。現地専門家への確認が必要です。

当事務所の考え方

相続時精算課税は、110万円以下の贈与であっても、制度選択そのものが将来の相続税計算や申告に影響します。単に「今年の贈与税が0円になるか」で決める制度ではありません。

特に海外居住の子や孫への贈与は、日本の贈与税だけでなく、住所・居所、国籍、居住歴、財産所在地、納税地、納税管理人、提出方法、居住国側の税務まで確認項目が増えます。

当事務所では、制度を先に当てはめるのではなく、ご家族の状況、贈与の目的、将来の相続、他の相続人との関係まで整理したうえで、実行するか、時期を変えるか、別の方法を選ぶかを検討します。

海外に住むご家族への贈与は、実行前の確認が重要です

贈与額が110万円以下でも、初年度の選択届出、納税地、納税管理人、居住国側の税務など、確認すべき事項があります。

お問い合わせ 0422-07-5393

関連ページ・公的資料

本ページは一般的な制度説明です。実際の適用は、贈与時点の法令、当事者の住所・居所、国籍、居住歴、財産所在地等により異なります。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木 清子
保有資格税理士・行政書士
専門分野相続税・家族問題・不動産
経歴大手税理士法人において、相続税申告、財産評価、遺産分割、生前対策、相続手続など、数多くの資産税案件に携わった後、佐々木税務会計事務所の共同代表として現在に至ります。 これまで、遺産総額数千万円規模の一般のご家庭から、数百億円規模の資産を有する地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしてまいりました。 相続は、ご家族ごとに抱える事情や想いが異なり、同じ案件は一つとしてありません。 そのため私は、税法や制度だけに目を向けるのではなく、お客様一人ひとりのお話を丁寧にお伺いし、ご家族にとって最適な選択肢をご提案することを何より大切にしています。 相続税申告はもちろん、財産評価、遺産分割、生前対策、遺言書の作成、資産承継など、それぞれのご家庭の状況に応じたきめ細やかなサポートを心掛けています。 また、相続手続が完了した後も、ご家族が安心して生活を送れるよう、資産承継後の見守りや財産管理に関するご相談にも継続して対応しております。 相続は、一度きりの手続きではなく、ご家族のこれからの人生につながる大切な節目です。 だからこそ、お客様の不安に寄り添い、一つひとつの疑問を丁寧に解消しながら、安心して未来へ歩んでいただけるよう、誠実にサポートしてまいります。
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