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建物だけ法人化する方法|土地は個人・建物は法人にする税務と注意点

土地を売らずに法人活用を検討したい方へ

建物だけ法人化する方法|土地は個人・建物は法人にする場合の税務

土地は個人で持ち続け、賃貸建物だけを法人所有にする方法があります。 土地まで法人へ移す負担を避けながら、家賃収入の帰属を法人側へ変えられる可能性があります。 ただし、建物の移転価格、譲渡所得・消費税、個人所有地を法人が使う条件、地代・権利金、無償返還届出、相続時の土地・自社株評価まで一体で確認することが重要です。

まず結論です。
「建物だけ法人」は、土地の含み益が大きい場合などに有力な比較対象になります。 ただし、単に建物を法人名義へ変えればよいわけではありません。 ①建物を適正な時価で移す、②土地使用関係を設計する、③初期コストを何年で回収できるか、④相続・自社株まで確認する という順番で判断します。
土地を動かさない意味 土地まで法人へ売ると負担が大きい場合、土地は個人に残して建物だけを法人化する方法を比較します。
建物価格は「時価」が原則 簿価や固定資産税評価額をそのまま使うのではなく、適正な時価と価格根拠を確認します。
土地・相続まで一体判断 地代・権利金・無償返還届出だけでなく、土地評価と法人株式の評価までつなげます。

「建物だけ法人」とは

個人が土地と賃貸建物を所有している場合に、土地は個人所有のまま残し、建物だけを法人へ売却・移転する方法です。 建物の所有者が法人になれば、原則として建物から生じる家賃収入は法人側に帰属します。

建物だけ法人化の基本構造。土地は個人所有のまま、建物を法人所有にする方法
土地は個人に残し、賃貸建物を法人所有にする基本構造です。

なぜ「土地は個人・建物だけ法人」にするのか

土地まで法人へ売却すると、土地に大きな含み益がある場合には、個人側で大きな譲渡所得税等が生じることがあります。 法人側でも不動産取得税・登録免許税などの移転コストが発生します。

そのため、土地は個人所有のまま残し、家賃収入を生む建物だけを法人へ移す方法を比較することがあります。 土地を動かさない分、土地そのものの移転に伴う負担を避けられる一方で、法人が個人所有地を使うための新しい税務関係が生じます。

土地は個人所有のまま建物だけ法人にする理由。土地移転時の税負担を避けつつ建物を法人所有にする考え方

既存建物を移す場合と、新築時から法人で取得する場合は別です

「土地は個人・建物は法人」という最終形が同じでも、既存建物を個人から法人へ売る場合と、 新築時から法人が建物を取得する場合では入口の税負担が異なります。

方法入口で確認すること
既存建物を個人→法人へ売却 譲渡所得、建物譲渡の消費税、不動産取得税、登録免許税、適正な時価、借入・担保等を確認します。
新築時から法人が建物を取得 個人から法人への既存建物売却はありません。ただし、建築費の消費税、資金調達、個人所有地の使用関係等を確認します。
既存建物を法人へ移す方法と新築時から法人が建物を取得する方法の比較

建物だけ法人化を比較したいケース

比較する価値が高いケース

  • 土地の含み益が大きく、土地まで法人へ移す負担が重い
  • 賃貸建物から継続的に家賃収入が生じている
  • 今後も長期間、賃貸経営を継続する予定がある
  • 土地は個人で保有・承継したい事情がある
  • 所得税だけでなく相続・資産承継まで見直したい

慎重に検討したいケース

  • 建物自体にも大きな含み益がある
  • 近い将来に土地・建物を一括売却する予定がある
  • 借入・担保関係の変更が難しい
  • 建物移転の初期コストに対して年間メリットが小さい
  • 土地・法人株式を誰が承継するか決まっていない
「法人化できるか」と「法人化した方がよいか」は別です。
税率だけでなく、入口コスト、毎年の手取り、将来の売却、相続まで見て判断します。

建物を法人へ移すときの税金・費用

既存建物を法人へ移す場合には、法人化後の節税効果を見る前に、 移転時に一度発生する税金・費用を把握します。

個人側

  • 建物の譲渡所得税・住民税
  • 取得費・減価償却費相当額
  • 譲渡費用
  • 建物の時価・売買価格

法人側

  • 不動産取得税
  • 登録免許税・登記費用
  • 取得価額・減価償却
  • 購入資金・借入

取引全体

  • 建物譲渡に係る消費税(課税事業者等の場合)
  • 金融機関の承諾
  • 担保・保証関係
  • 売買契約・登記手続
建物の譲渡所得を計算する際の取得費は、購入代金・建築代金等から、所有期間中の減価償却費相当額を控除して計算するのが原則です。

建物の売買価格は「適正な時価」が原則です

個人から同族法人へ建物を売却する場合は適正な時価での売買が原則であることを示す図
個人と同族法人の間だから、自由な価格で売買できるわけではありません。
原則として、売買時点の適正な時価を合理的に検討し、その根拠を残します。

「簿価」や「固定資産税評価額」を、そのまま売買価格にするものではありません

建物の時価は、建物の種類・構造・築年数・残存耐用年数・維持管理状況・収益性・再調達価額・市場性など、 その建物の状況に応じて合理的に検討します。

固定資産税評価額は固定資産税等の課税のための評価額であり、個人と法人の売買価格そのものを示すものではありません。 また、帳簿価額も会計・税務上の残存価額であり、それだけで時価と判断することはできません。

価格設定で残しておきたいもの
時価算定に使った資料、計算過程、建物の状況、採用した価格の理由など、 後から「なぜこの価格にしたのか」を説明できる形にしておくことが重要です。

なお、法人への譲渡価額が時価の2分の1未満の場合には所得税法上の時価課税が問題となります。 また、2分の1以上であれば必ず問題がないという意味でもなく、同族会社との取引では取引条件全体の合理性を確認します。

個人から法人へ不動産を売却する際の価格・譲渡所得・消費税については、 不動産賃貸業の法人化|総合判断 もあわせてご覧ください。

建物を法人へ移した後は「法人が個人の土地を使う」関係になります

建物の所有者が法人、土地の所有者が個人になると、法人は個人所有地を建物敷地として使用します。 建物だけ法人化では、この土地使用関係の設計が非常に重要です。

建物だけ法人化した場合の土地使用関係。地代、権利金、相当の地代、無償返還届出などの確認ポイント

契約として決めること

  • 土地賃貸借か使用貸借か
  • 地代を支払うか、いくらにするか
  • 権利金を授受するか
  • 将来、土地をどのように返還するか

税務で確認すること

  • 権利金の認定課税
  • 相当の地代
  • 土地の無償返還に関する届出
  • 個人側の地代収入
  • 相続時の土地・自社株評価

地代・権利金・無償返還届出は「セット」で考えます

地代の設定

法人が個人所有地を使用する場合、地代を支払うのか、使用貸借とするのかなど、土地使用の条件を整理します。 地代の水準によって税務上の取扱いが変わるため、一律の金額や割合で決めるものではありません。

権利金・相当の地代

通常、権利金を授受する取引であるにもかかわらず権利金を収受しない場合には、権利金の認定課税が問題になることがあります。 一定の場合には、相当の地代を収受する方法もあります。

土地の無償返還に関する届出

契約上、将来土地を無償で返還することを定め、所定の届出を行うことで、権利金の認定課税を行わない取扱いがあります。 ただし、建物だけ法人にすれば必ずこの届出を出す、というものではありません。

無償返還届出を出せば、土地の相続税評価が必ず下がるわけではありません。
賃貸借か使用貸借か、地代の設定、法人と個人の関係、相続時の土地評価・法人株式評価まで一体で確認します。

相続では「土地」だけでなく「法人株式」まで見ます

土地を個人に残す以上、将来その個人に相続が発生すれば、土地は相続財産です。 一方、建物を法人が所有することで、個人が持つ法人株式の価値にも影響します。

無償返還届出がある土地の評価は、契約関係によって異なります。
国税庁の取扱いでは、借地権が設定され無償返還届出書が提出されている貸宅地は、原則として自用地価額の80%で評価する取扱いがあります。 一方、使用貸借に係る土地は自用地価額で評価する取扱いです。
「無償返還届出=土地が必ず20%評価減」ではありません。
土地評価だけを見ず、法人株式の評価、今後法人に蓄積される利益、誰が株式を承継するかまで確認します。

年間節税額より「何年で初期コストを回収できるか」を見ます

建物を法人へ移すときには税金・登記費用等の初期コストが発生します。 そのため、年間の節税効果だけではなく、実際の手取りが毎年いくら改善し、初期コストを何年で回収できるかを確認します。

建物法人化の損益分岐点年数。初期コストを年間の手取り改善額で割って回収年数を確認する考え方
損益分岐点年数 = 建物法人化の初期コスト ÷ 年間の手取り改善額

年間の手取り改善額には、所得税・住民税だけでなく、法人税、役員報酬、社会保険料、法人維持費、 個人側の地代収入、法人側の地代負担などを反映します。

数字でイメージする|建物だけ法人化の仮例

例えば、建物法人化に伴う税金・登記等の初期コストが300万円、 税金・社会保険・法人維持費等を反映した年間の手取り改善額が60万円であれば、 単純な回収年数は約5年です。

300万円 ÷ 60万円 = 約5年
※説明のための単純化した仮例です。実際には、建物の譲渡所得、消費税、不動産取得税、登録免許税、 法人税、役員報酬、社会保険、地代、法人維持費、将来の売却・相続等を個別に計算します。
建物だけ法人化のケーススタディ。初期コスト、年間手取り改善額、損益分岐点年数を比較するイメージ

「建物だけ法人」が本当に有利か、数字で比較します

建物の取得費・減価償却、家賃収入、借入、土地価額、個人の所得、法人の株主構成などを確認し、 個人所有を続ける場合と建物だけ法人へ移す場合の手取りと回収年数を比較します。

ご相談・お問い合わせ

実行前に確認する資料

最初からすべて揃っていなくても構いません。 まず次の資料があると、法人化の可否ではなく「法人化した方がよいか」を具体的に比較しやすくなります。

確認資料・項目確認する理由
土地・建物の登記事項証明書所有関係、担保、建物構造・床面積等を確認するため
建物の取得価額・建築費譲渡所得・取得費・法人取得価額を検討するため
減価償却明細建物の取得費・帳簿価額を確認するため
固定資産税評価証明書不動産取得税・登録免許税等の検討資料とするため
賃貸借契約・レントロール家賃収入・収益性・契約関係を確認するため
借入・担保資料金融機関の承諾・借換え等の要否を確認するため
個人の所得税申告書個人所有継続と法人化後の手取りを比較するため
法人の株主構成株式価値・贈与税・相続税への影響を確認するため
家族構成・相続財産土地と法人株式を将来誰が承継するか検討するため

建物だけ法人化する場合のよくある質問

土地まで法人へ売却する必要はありませんか?
必ずしも必要ではありません。土地を個人所有のまま残し、建物だけ法人所有にする方法があります。 ただし、法人が個人の土地を使用するため、土地使用契約・地代・権利金等を別途設計します。
建物を法人へ売る価格は、固定資産税評価額でよいですか?
原則として、適正な時価を前提に検討します。 固定資産税評価額は固定資産税等の課税のための評価額であり、そのまま売買価格とするものではありません。 建物の状況等を踏まえて時価を合理的に検討し、価格設定の根拠を残します。
土地は法人に無料で使わせてもよいですか?
使用貸借という選択肢はありますが、賃貸借とは税務・相続税評価の取扱いが異なります。 地代、権利金、無償返還届出、将来の土地評価まで確認して決めます。
無償返還届出を出せば土地の相続税評価は80%になりますか?
常に80%になるわけではありません。 借地権が設定され無償返還届出が提出されている貸宅地と、使用貸借に係る土地では評価の取扱いが異なります。 契約内容まで確認して判断します。
建物を法人へ売却すると消費税はかかりますか?
売主が課税事業者で、事業用資産である建物を対価を得て譲渡する場合などは、建物譲渡が消費税の課税対象となります。 売主の課税事業者該当性や取引内容を確認して判断します。
建物だけ法人にすれば相続税対策になりますか?
有効なケースはありますが、土地評価だけでは判断できません。 法人が建物を所有することで法人株式の価値にも影響するため、土地・自社株・今後法人に蓄積される所得まで合わせて検討します。

当事務所の考え方|「建物だけ法人」は節税額だけで決めません

建物だけ法人へ移す方法は、土地まで法人へ移す場合より単純に見えます。 しかし実務では、建物の時価、譲渡所得・消費税、法人の取得価額、土地使用契約、地代・権利金、無償返還届出、 相続時の土地評価、自社株評価までつながっています。

そのため、当事務所では「法人化すれば年間いくら節税できるか」だけではなく、 初期コストを何年で回収できるか、将来売却するときに困らないか、土地と法人株式を誰が承継するかまで含めて比較します。

このページの主な根拠・参考資料

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建物だけ法人にする前に、数字と土地使用関係を確認しましょう

建物の取得価額・減価償却、家賃収入、借入、土地価額、個人の所得、家族構成が分かれば、 個人所有を続ける場合と建物だけ法人へ移す場合を具体的に比較できます。

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この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
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