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不動産のサブリース方式|転貸・適正賃料・消費税の注意点

不動産法人化・サブリース方式の判断ガイド

不動産のサブリース方式|転貸・適正賃料・消費税の注意点

不動産法人化を検討する際、管理会社方式と並んで検討されるのがサブリース方式です。 不動産のサブリース方式とは、不動産の所有権を個人のままにして、法人がその不動産を借り上げ、入居者へ転貸する方法です。 「管理委託方式」と似ていますが、契約関係、家賃の受け取り方、空室・滞納リスクの負担が異なります。 また、同族会社とのサブリースでは、単に「家賃の何%を法人へ残すか」ではなく、 実際の契約内容、業務、リスク、費用、経済的合理性まで確認する必要があります。

30秒で結論
  • サブリースは、個人→法人のマスターリースと、法人→入居者の転貸借という二層の契約関係になります。
  • 管理委託方式とは、法人が「管理を受託する」のか、「自ら借りて転貸する」のかが大きく異なります。
  • マスターリース賃料に「5%なら安全」「10%なら適正」といった税務上の一律基準はありません。
  • 空室、滞納、募集、退去、修繕などを誰が負担するのかを確認し、法人が負うリスク・業務・費用に見合う契約条件かを考えます。
  • 住宅の転貸は、契約上の用途等の要件を満たせば、個人→法人、法人→入居者の貸付けとも消費税非課税となる場合があります。
  • 200戸以上の賃貸住宅管理業の登録義務と、サブリースに関する特定賃貸借契約の規制は別の論点です。
① 契約主体 誰と誰が賃貸借契約を結ぶか。
② 家賃の流れ 誰が入居者から家賃を受け取るか。
③ リスク・費用 空室・滞納・修繕等を誰が負担するか。
④ 税務・法規制 賃料の合理性、消費税、管理業法等を確認。

サブリース方式とは?

サブリース方式では、個人オーナーが不動産を所有したまま、法人がその物件を借り上げます。 そのうえで、法人が入居者へ転貸します。 国土交通省も、サブリースについて、オーナーとサブリース業者とのマスターリース契約と、 サブリース業者と入居者との転貸借契約という構造で説明しています。

サブリース方式の仕組み。個人オーナーが所有する不動産を法人が借り上げ、法人が入居者へ転貸する構造。
サブリース方式では、所有権は個人のままです。法人は借主となり、入居者に転貸する事業者として位置付けられます。
管理会社方式との一番大きな違いは、「法人が賃貸借契約の当事者になること」です。 管理委託では法人は管理を受託しますが、サブリースでは法人自身が物件を借りて、第三者へ転貸します。

管理委託方式とは何が違う?

両者は「法人を介して不動産賃貸を行う」という点では似ていますが、 法律関係と収入の流れが異なります。

管理委託方式とサブリース方式を比較した図。管理委託では個人と入居者が賃貸借契約を結び、サブリースでは個人と法人、法人と入居者の二層の契約関係になる。
「誰と誰が賃貸借契約を結んでいるか」を見ると、管理委託方式とサブリース方式の違いが整理しやすくなります。
比較 管理委託方式 サブリース方式
賃貸借契約 原則として個人と入居者 個人と法人、法人と入居者の二層構造
法人の立場 管理業務を受託 借主・転貸事業者
入居者からの家賃 原則として個人の収入 法人が受け取る転貸賃料
法人に残る差額 管理料 転貸賃料と借上げ賃料等との差額から法人負担費用を差し引いたもの
空室・滞納等 契約条件に応じて、原則として個人側が負担 契約条件に応じて、法人が一定のリスクを負う場合があります

契約主体と家賃の流れを整理する

サブリースを理解するときは、「家賃の何%を法人へ移せるか」から考えるのではなく、 まず契約関係から確認します。

① 個人 → 法人

マスターリース契約(賃貸借契約)。法人が個人から物件を借ります。

② 法人 → 入居者

転貸借契約。法人が借り上げた物件を入居者へ貸します。

「所有者」と「賃貸事業の主体」は同じとは限りません。 サブリースでは、所有者は個人、入居者との賃貸借契約の主体は法人、という構造が成立します。

マスターリース賃料は何%が適正?

「市場家賃の何%を法人へ残せばよいか」という質問は、サブリースを検討するときによく出てきます。 しかし、税務上の一律の安全率はありません。

「5%なら安全」「10%までなら大丈夫」といった一律の基準はありません。 契約の内容、法人が実際に行う業務、空室・滞納等のリスク、修繕や外注費などの負担、 外部の相場、契約条件その他の事情を総合して、賃料設定の合理性を検討します。

特に同族会社との取引では、単に「法人へ利益を移す」ことを目的として賃料を設定するのではなく、 独立・対等な当事者間であればどのような条件になるか、法人が実際にどのような役割と責任を負うのかを確認することが重要です。

賃料の合理性を判断する主な要素

マスターリース賃料を決める際は、「率」から逆算するのではなく、 法人が実際に負うリスク・業務・費用を一つずつ確認します。

サブリース方式における適正賃料を検討する主な要素。転貸賃料、空室リスク、滞納リスク、入退去・募集業務、修繕・維持管理、その他の費用を示す。
図は考え方の整理です。実際の賃料設定は、契約書・業務内容・物件の特性・リスク負担等を確認して検討します。
転貸賃料

法人が入居者から実際に受け取る賃料の水準。周辺の賃貸市場も確認します。

空室・滞納リスク

空室時にも借上げ賃料を支払うのか、滞納回収を誰が負うのかなどを確認します。

入退去・募集業務

募集、契約、更新、退去、原状回復等を法人がどこまで担うかを確認します。

修繕・維持管理

小修繕、原状回復、大規模修繕等について、誰が費用と手配を負担するかを確認します。

外部委託費

外部管理会社、清掃会社、修繕業者等へ委託している場合、その費用も見ます。

契約条件

固定賃料、賃料改定、解約、更新、修繕負担など、契約全体の条件を確認します。

適正賃料は、図の6項目だけで自動的に決まるものではありません。 実際には物件の規模・立地・用途、既存の管理契約、法人の体制、取引条件等も含めて判断します。

同族会社との取引と所得税法157条

個人オーナーと自分や親族が支配する法人との間で不動産を賃貸する場合、 一般の第三者との取引とは異なり、税務上の行為計算否認の問題が生じる可能性があります。

所得税法157条は、同族会社の行為又は計算をそのまま認めると、 株主等の所得税負担を不当に減少させる結果となると認められる場合に、 税務署長がその行為又は計算にかかわらず所得税額を計算できる旨を定めています。 国税庁の税務大学校でも、所得税法157条の趣旨、裁判例、経済的合理性をめぐる論点が整理されています。

重要: 所得税法157条は「法人に利益を残したら適用される」という規定ではありません。 また、賃料が特定の%を超えたら直ちに適用されるという単純な基準でもありません。 取引の目的、契約内容、賃料額、業務実態などを含む具体的事実の確認が必要です。

2025年大阪高裁判決から考えるサブリースの注意点

サブリースと同族会社間の賃料設定を考えるうえで、令和7年(2025年)4月25日の大阪高等裁判所判決(令和6年(行コ)第57号)は重要な参考事例です。 この事案では、個人が同族会社に不動産を一括賃貸し、同族会社が第三者へ転貸していました。 税務署は所得税法157条1項を適用し、約定賃料をその事案において相当と認められる賃料額に置き換えて所得を計算しました。 一審では納税者側の請求が認められた部分について、大阪高裁は一審判決を変更し、課税処分を適法としました。

この判決を「サブリースの○%ルール」として読まないことが重要です。 裁判所は、賃貸借契約の目的、賃貸料の金額、契約条件その他の事情を総合的に考慮して、 経済的合理性を判断しています。

したがって、実務上は、 「何%なら大丈夫か」ではなく、 「第三者との取引としても同じ条件を説明できるか」「法人がその差額を得るだけの業務・リスク・費用負担を実際にしているか」 を確認することが重要です。

判決の詳細については、判例本文・公表資料等を確認したうえで、個別事案の事実関係と判断理由を区別して検討します。

参考:大阪高等裁判所 令和7年4月25日判決(令和6年(行コ)第57号)。所得税法157条1項の適用と同族会社への不動産賃貸の経済的合理性が争点となった事案です。

空室・滞納・退去・修繕のリスクは誰が負う?

サブリースで法人に差額が残ることの合理性を考えるには、 その差額に対応するリスクと負担を確認します。

項目 確認すること 契約上の負担者
空室 空室期間中も固定の借上げ賃料を支払うのか 契約内容による
滞納 入居者から回収できない場合の負担を誰が負うか 契約内容による
入退去 募集、契約、更新、退去、原状回復手続を誰が行うか 契約内容による
修繕 小修繕・原状回復・設備交換・大規模修繕を誰が負担するか 契約内容による
外部管理会社 法人が外部業者へ再委託している場合の費用と役割 法人等
「法人がリスクを負う」とは、契約書に書けば足りるという意味ではありません。 実際の支払、業務、対応履歴等が契約内容と整合しているかまで確認することが重要です。

サブリースと消費税|住宅の転貸はどうなる?

消費税では、「法人が借りて転貸するから課税」という単純な判断にはなりません。 住宅として使用することが契約書等から明らかな場合には、転貸を前提とした住宅の貸付けも非課税となります。 国税庁は、賃借人が自ら使用せず第三者へ転貸する場合でも、住宅として転貸することが明らかであれば、 貸主→賃借人の貸付け、賃借人→転借人の貸付けとも住宅の貸付けとして非課税になる取扱いを示しています。

用途 個人 → 法人 法人 → 入居者
住宅 契約等で住宅使用が明らかな場合、原則非課税 住宅として転貸することが明らかな場合、原則非課税
事務所・店舗等 住宅の貸付けに該当しない限り、原則として課税 住宅の貸付けに該当しない限り、原則として課税
店舗併用等 住宅部分と事業用部分を合理的に区分して判定する場合があります
契約書の用途確認が重要です。 「住宅として転貸すること」が契約書その他の資料から明らかか、実際の利用状況はどうか、 事業用部分や別途料金があるかを確認します。

また、居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限や、その後に課税賃貸用へ用途変更した場合の調整など、 取得側の消費税については別の論点があります。 サブリースの家賃が非課税だからといって、法人側の消費税論点がすべてなくなるわけではありません。

賃貸住宅管理業法との関係

サブリースでは税務だけでなく、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」も確認します。

200戸以上の賃貸住宅管理業

自己所有物件の管理を除き、一定の賃貸住宅管理業を200戸以上営む場合は、 賃貸住宅管理業の登録が義務付けられています。

サブリースに関する規制

特定転貸事業者による誇大広告、不当な勧誘、マスターリース契約締結前の説明・書面交付等について、 登録制度とは別に確認すべき規制があります。

国土交通省は、賃貸住宅管理業の登録義務について200戸以上という基準を示しています。 この200戸という基準は、賃貸住宅管理業の登録義務を判断するための基準であり、サブリースそのものの戸数基準ではありません。 一方で、200戸未満であっても、特定転貸事業者等に対する一定の規制が登録の有無にかかわらず適用される旨をFAQで説明しています。

同族会社とのサブリースは、一般のサブリースと同じ?

必ずしも同じではありません。 賃貸住宅管理業法上の「特定賃貸借契約(マスターリース契約)」には、 賃借人が賃貸人と人的関係・資本関係その他の関係で一定の密接な関係を有する者として 国土交通省令で定める者である場合の除外があります。

そのため、親族や同族会社との契約では、一般のサブリース会社との契約と同じ規制関係になるとは限りません。 ただし、これは「同族会社なら法律を気にしなくてよい」という意味ではありません。 契約関係、実際の業務、入居者との関係、事業規模等を個別に確認します。

税務と不動産業法は、別々に確認します。 「賃貸住宅管理業法上の扱い」と「所得税法157条上の経済的合理性」は別の問題です。 一方が問題ないから、もう一方も問題ないとは限りません。

税理士はここを見る

① 契約主体

個人・法人・入居者の誰と誰が賃貸借契約を結んでいるか。

② 賃料設定

借上げ賃料と転貸賃料の差額に合理性があるか。

③ リスク

空室、滞納、修繕、退去等を誰が負担しているか。

④ 実態

契約書どおりに法人が実際の業務・対応を行っているか。

⑤ 外部委託

外部管理会社等との役割が重複していないか。

⑥ 消費税

住宅・事務所・店舗等の用途と契約内容が一致しているか。

⑦ 法規制

賃貸住宅管理業法・宅建業法等の適用関係を確認。

⑧ 継続性

法人維持費、社会保険、将来の売却・相続まで含めて考える。

サブリース方式のセルフチェック

  • 不動産の所有者は誰か
  • 個人と法人のマスターリース契約があるか
  • 法人と入居者の転貸借契約があるか
  • 法人が実際に負う業務・リスク・費用は何か
  • 借上げ賃料の算定根拠を説明できるか
  • 「○%だから」という理由だけで賃料を決めていないか
  • 空室・滞納時の契約条件を確認したか
  • 修繕・退去・原状回復の負担者を確認したか
  • 外部管理会社との役割が重複していないか
  • 住宅・事務所・店舗等の消費税区分を確認したか
  • 賃貸住宅管理業法等の適用関係を確認したか
  • 法人化による税・社会保険・維持コストまで比較したか

よくある質問

サブリースは、家賃の何%を法人に残せば大丈夫ですか?

税務上の一律の安全率はありません。 法人が実際に負う業務、空室・滞納リスク、修繕、外部委託費、契約条件、市場水準等を総合して賃料の合理性を確認します。

管理委託とサブリースは何が違いますか?

管理委託では、原則として個人と入居者が賃貸借契約を結び、法人は管理を受託します。 サブリースでは、個人と法人、法人と入居者の二層の賃貸借契約になります。

住宅を法人に貸して法人が入居者へ転貸する場合、消費税はかかりますか?

住宅として使用することが契約書等から明らかな場合、転貸であっても住宅の貸付けとして非課税となる取扱いがあります。 個人→法人、法人→入居者の双方について、契約内容と実際の用途を確認します。

200戸未満なら、サブリースに関する法律は関係ありませんか?

いいえ。200戸基準は賃貸住宅管理業の登録義務の判断です。 国土交通省は、200戸未満でも、特定転貸事業者等に対する一定の規制は登録の有無にかかわらず適用される旨を説明しています。

自分の家族の法人にサブリースする場合も、一般のサブリースと同じ規制ですか?

賃貸住宅管理業法上、一定の密接な関係を有する者との契約には特定賃貸借契約の定義上の除外があります。 ただし、税務上の経済的合理性や所得税法157条の問題とは別です。 個別の契約関係・事業実態を確認する必要があります。

サブリースにすると法人に利益を残せますか?

法人が借上げ賃料を支払い、入居者から転貸賃料を受け取る構造であれば、差額から法人負担費用を差し引いた金額が法人に残ります。 ただし、その差額が税務上合理的かどうかは別問題であり、法人が負う業務・リスク・費用等を含めて確認します。

2025年の大阪高裁判決は、サブリースの何%までなら認めるという判決ですか?

そのような一律の「%基準」を示した判決ではありません。 当該事案の契約目的、賃料、契約条件、業務実態等を踏まえて、所得税法157条の適用の可否が判断された事例です。

当事務所の考え方

サブリース方式を「家賃の一部を法人へ移す方法」とだけ考えないことが出発点だと考えています。

大切なのは、法人が賃貸事業の中で実際にどのような役割を担い、どのようなリスク・責任・費用を負うのかを整理することです。

そのうえで、マスターリース賃料がどのように決まり、第三者間の取引としても説明しやすい条件になっているかを確認します。

さらに、所得税・法人税・社会保険・消費税・法人維持コストだけでなく、将来の売却、相続、株式承継まで含めて比較します。 税負担を軽くすることだけを目的とせず、将来にわたって家族や税務署等へ説明できる仕組みかどうかを重視します。

このページの主な根拠・参考資料

サブリースは「賃料率」だけで判断しない

契約主体、賃料、空室・滞納リスク、修繕、業務実態、消費税、法規制まで確認したうえで、 法人化全体のメリットと負担を比較します。

不動産賃貸業の法人化|5つの方法を比較

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この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社で約10年間、企業経営・事業承継のコンサルティングに従事。その後、法律事務所で約5年間、相続・資産承継の実務を経験し、大手税理士法人では約10年間、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策などの資産税業務を専門に担当しました。 これまで培った税務・法務・経営の知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広い相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、**「創族(そうぞく)」**を理念に、相続税申告だけでなく、生前対策、遺言、家族信託、事業承継など、ご家族の将来を見据えた相続・資産承継に取り組んでいます。
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