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非上場株式の評価方法が見直しへ|相続税・贈与税への影響と注意点【2026年】

2026年8月14日、相続・贈与の対象となる非上場会社の株式(自社株)の評価ルールについて、国税庁が抜本的な見直しを進めているとの報道がありました。

会社オーナーの方にとって重要なのは、難しい計算式そのものではありません。今回の話は、簡単に言えば、「これまでのルールで算定していた自社株の相続税・贈与税評価が、将来も同じ前提で計算できるとは限らない」という話です。

2026年8月14日時点|まだ評価方法は変わっていません 国税庁では有識者会議による検討が進んでいますが、新しい評価方式、具体的な計算式、適用開始日、経過措置などは現時点で確定していません。
30秒で結論
  • 国税庁は、非上場株式の評価制度そのものを見直しています。
  • 会計検査院は、類似業種比準価額と純資産価額に大きな差が生じている実態を確認しました。
  • 特に確認したいのは、会社に純資産・内部留保等が蓄積している一方、税務上の株価が純資産価額より相当低くなっている会社です。
  • 資産管理会社、不動産保有会社、株式保有会社についても、現在の評価方法と純資産価額の差を把握しておく意味があります。
  • ただし、新ルールの内容・適用開始日はまだ未定です。「今すぐ贈与すべき」と判断する段階ではありません。

1.あなたの会社は要確認?|まずは6つのチェック

まずは、次の図でご自身の会社が今回の見直しと関係しやすいかを確認してください。

非上場株式評価ルール見直しについて自社が確認対象になりやすいかを6項目で確認するチェック図
図1:非上場会社のオーナー、事業承継予定、内部留保・純資産が大きい会社、資産管理会社など、まず確認したい6項目を整理しています。 クリックで拡大できます。
この6項目は「国税庁が名指しした対象会社一覧」ではありません。
会計検査院・国税庁の公表資料で示された論点をもとに、今回の見直しとの関係を確認しておきたい会社像として当事務所が整理したものです。

2.特に確認したいのは、どんな会社?

資料を読み解くうえで最も重要なのは、単に「利益が多い会社」「不動産会社」という業種名ではありません。

見るべきポイントは、「会社に蓄積された価値」と「相続税・贈与税上の株式評価額」との差です。
純資産価額が大きい一方、類似業種比準方式等による現在の評価額が相当低くなっている会社は、今後の見直しとの関係を特に確認しておく意味があります。
非上場株式評価の見直しで特に確認したい会社を内部留保、会社規模、評価差、会社規模区分、過去の株価対策、資産管理会社などで整理した図
図2:特に確認したい会社像を、長年黒字で純資産が大きい会社、規模の大きい会社、評価方式間の差が大きい会社、資産管理会社などに分けて整理しています。 クリックで拡大できます。

会計検査院の調査では、純資産価額に対する申告評価額の中央値は、大会社0.32倍・中会社0.50倍・小会社0.61倍でした。会社規模が大きいほど評価額が相対的に低くなる傾向が確認されており、会社規模区分と評価方式の関係自体も現在の検討論点です。

3.資産管理会社・不動産所有会社・株式保有会社はどう考える?

資産管理会社をお持ちの方については、今回の見直しを継続して確認しておく価値があります。

株式保有の資産管理会社

上場株式・投資信託等の金融資産を長期間保有し、会社の純資産が大きくなっているケース。

不動産所有会社

賃貸不動産を長期間保有し、賃貸収入・内部留保・含み益等によって会社価値が大きくなっているケース。

高収益の資産管理会社

継続的な利益が会社内に蓄積され、現預金・有価証券・不動産等が増加しているケース。

ただし、国税庁が「資産管理会社」「不動産会社」を今回の見直し対象として名指ししているわけではありません。
上記は、会計検査院・国税庁資料で問題となっている「純資産価額と税務上の評価額の乖離」という観点から、実務上確認しておきたい会社像を整理したものです。

また、株式等の保有割合や土地等の保有割合が一定以上の会社には、現行制度でも株式等保有特定会社・土地保有特定会社等の別ルールが適用される場合があります。そのため、「資産管理会社だから評価額が上がる」と単純には判断できません。

非上場株式の評価方法による純資産価額と類似業種比準価額の差を示す図解
図3:評価方式によって株価にどの程度の差が生じているのかを整理しています。クリックで拡大できます。

4.そもそも何が問題なの?|同じ会社でも評価方法で大きな差

非上場会社の株式には、市場で取引される「今日の株価」がありません。そのため、相続税・贈与税では国税庁の財産評価基本通達に基づいて評価します。

純資産価額の中央値42,648円1株当たり
類似業種比準価額の中央値11,622円1株当たり
比率27.2%純資産価額に対して

会計検査院が令和2年・3年分の申告を調査したところ、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の27.2%でした。

さらに、純資産価額が0円だった会社を除く612社のうち、477社(77.9%)で類似業種比準価額が純資産価額の50%未満でした。

評価額が低いこと自体を違法とする話ではありません。
国税庁のルールを適正に適用した結果として低い評価額になることと、制度上の差を利用して評価額を意図的に圧縮する行為をどう考えるかは別の問題です。

5.誰が問題を指摘したの?|会計検査院 → 国会 → 国税庁

2019年税務大学校が研究論文を公表
評価方式や会社規模区分等について研究。ただし研究論文であり、正式な改正案ではありません。
2024年11月会計検査院が実態を検査
評価方式間の大きな乖離、会社規模による評価差等を指摘しました。
2025年2月25日衆議院財務金融委員会で議論
田中健議員が会計検査院の指摘を踏まえて国税庁へ質問しました。
同日国税庁「必要な実態把握を行う」
国税庁は会計検査院の指摘を踏まえて実態把握を進める考えを示しました。
2026年4月20日~7月3日国税庁有識者会議
第1回から第4回まで、評価制度の見直しを具体的に検討しています。
会計検査院、国会、国税庁が非上場株式評価見直しに至った経緯を整理した図解
図4:どの機関が何を問題視し、現在の国税庁の検討へつながったのか。クリックで拡大できます。

6.国税庁は何を変えようとしているの?

会社規模区分大会社・中会社・小会社で評価方法を分ける現在の仕組み。
類似業種比準方式純資産価額との大きな差、配当・利益・純資産等の評価要素。
純資産価額方式一方で純資産価額側が高すぎないかという議論もあります。
配当還元方式現在の還元率等が実態に合っているか。
評価額圧縮スキームへの対応会社規模や評価要素等を利用した極端な株価圧縮への対応。
国税庁が検討している非上場株式評価ルール見直しの論点を示す図解
図5:何をどのように見直す可能性があるのかを整理しています。具体的な新制度は未確定です。クリックで拡大できます。

7.いつから変わる?|現時点のスケジュール感

時期動き状況
2024年11月会計検査院が問題を指摘完了
2025年2月国会で議論、国税庁が実態把握を表明完了
2026年4月20日第1回有識者会議完了
2026年5月11日第2回有識者会議完了
2026年6月4日第3回有識者会議完了
2026年7月3日第4回有識者会議完了
2026年8月以降見直し内容の具体化検討中
新制度公表評価方式・通達等の見直し未定
適用開始日新ルールの適用未定
経過措置旧ルールとの切替え未定
「2027年から変わる」とは、まだ言えません 2026年8月14日時点では、「2027年1月1日から」「2027年4月1日から」などの具体的な適用開始日は公表されていません。

現行の非上場株式評価は、相続税法の時価評価を前提として、主として国税庁の財産評価基本通達により具体的な評価方法が定められています。今後どのような形式で見直しが行われるかについても、正式な公表を確認する必要があります。

8.自社株の評価額は、今後必ず上がるの?

現時点では、そう断定できません。

現在低く評価されているケースについては、将来の評価額が上がる可能性を意識する必要があります。

一方で、有識者会議では通常の中小企業の事業承継への配慮や、純資産価額方式そのものの見直しを求める意見も出ています。

今回の見直し=すべての中小企業の自社株評価を引き上げる、という話ではありません。

9.今、何をしておけばいい?

現在の自社株評価額を把握する現行ルールで1株いくらになるか。
純資産価額も確認する現在の評価額と純資産価額にどの程度の差があるか。
評価方式を確認する類似業種比準、純資産、併用、配当還元等のどれを使っているか。
特定評価会社への該当性を確認する土地保有特定会社・株式等保有特定会社等に該当していないか。
今後1~3年の承継予定を整理する相続、贈与、事業承継の予定時期を確認する。
国税庁の具体案公表後に再計算する新ルール、適用日、経過措置が公表された段階で影響を判定します。
報道だけを理由に「改正前に急いで贈与した方がよい」と判断する段階ではありません。
株式移転は税額だけでなく、経営権、議決権、後継者、納税資金、事業承継税制等も含めて検討する必要があります。

10.現在の評価制度を最低限確認

大会社

原則として類似業種比準方式。

中会社

類似業種比準価額と純資産価額を一定割合で併用。

小会社

原則は純資産価額方式。一定の場合は類似業種比準価額を加味した方式も選択可能。

詳しい現行制度は、当事務所の 「取引相場のない株式」 をご参照ください。

11.よくある質問

Q.資産管理会社は今回の見直し対象ですか?

国税庁が資産管理会社を一律に見直し対象として名指ししているわけではありません。ただし、純資産価額と税務上の株式評価額に大きな差がある場合は、今回の見直しとの関係を継続的に確認しておく意味があります。

Q.不動産所有会社は株価が上がるのでしょうか?

現時点では断定できません。不動産を多く保有する会社には、現行制度でも土地保有特定会社等の別ルールが適用される場合があります。個別会社の資産構成と現在の評価方式を確認する必要があります。

Q.2027年から新制度になりますか?

2026年8月14日時点では具体的な適用開始日は公表されていません。2027年から変更されると断定することはできません。

Q.今のうちに自社株を贈与した方がよいですか?

報道だけを理由に急いで贈与する段階ではありません。具体的な新ルール、適用開始日、経過措置を確認したうえで、経営権・後継者・事業承継税制等と合わせて判断する必要があります。

12.当事務所の考え方|今は「急ぐ」より「現在地を把握する」段階です

特に、長年利益を蓄積してきた会社、株式・不動産を保有する資産管理会社、純資産価額と現在の自社株評価額に大きな差がある会社については、具体的な見直し案が公表されたときにすぐ影響を判定できる状態にしておくことが重要だと考えます。

まず確認したいのは4つです。
  1. 現在の自社株評価額
  2. 純資産価額
  3. 両者の差
  4. 今後の相続・贈与・事業承継予定
この記事は今後の国税庁公表に合わせて更新します。
具体的な見直し案、財産評価基本通達の改正案・改正通達、適用開始日、経過措置等が公表された場合は、決定事項と検討事項を区別して追記します。
図解5点の役割
図1・図2で「自分の会社が関係しそうか」を確認し、図3で「何が問題なのか」、図4で「誰が問題提起したのか」、図5で「国税庁が何を見直そうとしているのか」を順番に理解できる構成にしています。

主な根拠・一次資料

※会計検査院の各倍率・中央値は調査対象全体の結果であり、個別会社の評価倍率を示すものではありません。

※資産管理会社、不動産所有会社、株式保有会社についての記載は、国税庁がこれらを一律に見直し対象と明示したものではなく、一次資料の問題意識から当事務所が実務上の確認対象として整理したものです。

※2026年8月14日時点で新しい評価方式・適用開始日は未定です。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
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