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令和8年成年後見制度改正|後見・保佐の廃止、補助への一元化で何が変わる?

令和8年法律第45号|2026年6月成立・公布

令和8年 成年後見制度改正
後見・保佐の廃止で何が変わる?

2026年6月、成年後見制度を抜本的に見直す改正法が成立しました。現行の「後見・保佐・補助」の3類型を見直し、後見・保佐を廃止して補助へ一元化し、本人に必要な支援を必要な範囲で利用できる制度へ転換します。

30秒で結論

今回の改正の中心は、「判断能力の程度で一律に支援範囲を決める制度」から、「その人に必要な法律行為だけを支援する制度」へ変えることです。

後見・保佐は廃止され、補助へ一元化されます。遺産分割、不動産売却、預金管理、契約など、本人に必要な代理権・同意権等を個別に設定する方向になります。

さらに、支援の必要性がなくなった場合には制度を終了できる仕組みが設けられます。ただし、2026年8月現在は施行前であり、現在は「後見・保佐・補助」の現行制度が利用されています。

令和8年民法改正で成年後見制度がどう変わるかを示す図解。後見・保佐・補助の3類型から補助への一元化、必要な代理権・同意権、特定補助人、制度終了、任意後見との関係を整理
令和8年成年後見制度改正|「判断能力の程度」から「必要な支援の範囲」へ

なぜ成年後見制度を大きく変えるのか?

現行の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれています。

現行補助

判断能力が不十分な方。家庭裁判所が必要な特定の法律行為について代理権・同意権等を定めます。

現行保佐

判断能力が著しく不十分な方。重要な法律行為について同意権・取消権等が働きます。

現行後見

判断能力を欠く常況にある方。成年後見人が広範な代理権・取消権を持ちます。

現行制度の課題
例えば「遺産分割のために代理人が必要」という限定的な目的で後見を開始しても、本人の判断能力が回復しない限り、目的となった遺産分割が終わった後も制度が続くという問題があります。

改正後|後見・保佐を廃止し「補助」へ一元化

令和8年改正では、後見・保佐制度を廃止し、法定後見制度を補助制度へ一元化します。

重要なのは名称変更ではありません。
本人の判断能力の程度だけで支援内容を一律に決めず、「どの法律行為に、どの支援が必要なのか」を家庭裁判所が個別に設定する制度へ変わります。

例えば、必要な支援だけを設定

遺産分割

遺産分割協議を行うための代理権など。

不動産売却

自宅・収益不動産等の売却契約に必要な代理権など。

預金・財産管理

預貯金の管理・解約等に必要な代理権など。

重要な契約

本人が行う一定の法律行為について同意を要する仕組み。

施設・生活関係

本人の生活・療養看護に関する契約等を必要に応じて支援。

その他必要な法律行為

本人ごとの事情に応じて支援範囲を設計。

判断能力を欠く常況にある方は?「特定補助人」という仕組み

後見制度を廃止しても、判断能力を欠く常況にある方など、より手厚い支援が必要な方への保護がなくなるわけではありません。

改正法では、一定の場合に特定補助人を付する仕組みが設けられます。

「補助へ一元化=すべて本人の同意がなければ何もできない」という意味ではありません。
本人の判断能力や支援の必要性に応じ、特定補助人を含めた保護の仕組みが設けられます。

大きな変更|必要がなくなれば制度を終了できる

改正後は、本人の判断能力が完全に回復していなくても、補助を利用する必要性がなくなった場合には、家庭裁判所の判断により補助開始の審判等を取り消すことができる仕組みになります。

現行の問題 目的が終わっても制度が続く

例えば遺産分割のために成年後見を開始しても、本人の判断能力が回復しなければ、遺産分割終了後も原則として成年後見が継続します。

改正後 「必要性」がなくなれば終了へ

設定された代理権・同意権等が不要となり、補助を続ける必要性がなくなれば、制度利用そのものを終了できる可能性があります。

制度終了=本人の判断能力が回復した、という意味ではありません。
補助が終了しても、その後の個々の契約について本人に意思能力があるかは別に判断します。制度が終わったから本人が自由にすべての契約をできる、という意味ではありません。

すでに成年後見・保佐を利用している方はどうなる?

今回の改正は、新しく制度を利用する人だけの問題ではありません。施行前からすでに後見・保佐を利用している方についても経過措置が設けられます。

施行された瞬間に、現在の成年後見・保佐が自動的に終了するわけではありません。
既存利用者については経過措置により現在の法律関係を整理し、新制度への移行・取消し等を家庭裁判所の手続の中で判断します。
① 今の支援を継続

経過措置に基づき、現在の後見・保佐の法律関係を一定の範囲で継続するケース。

② 新しい補助へ移行

本人に必要な代理権・同意権等を改めて設定し、新制度の補助へ移行するケース。

③ 必要性がなくなれば取消し

支援の目的が終了するなど、制度利用の必要性がなくなった場合には審判の取消しを検討するケース。

例えば「遺産分割のために後見を開始した」ケース

父が認知症で、兄弟との遺産分割協議に参加できないため成年後見を開始したケースを考えます。

現行制度

遺産分割が終了しても、父の判断能力が回復しない限り、成年後見は原則として続きます。

改正後

遺産分割のための支援という必要性がなくなり、ほかに補助を続ける必要がないのであれば、制度終了を家庭裁判所に求めるという選択肢が生まれます。

既存の成年後見人が自分の判断だけで「終了」にすることはできません。
家庭裁判所による審判・経過措置に従った手続が必要です。施行時の具体的な申立書式・登記等は今後の裁判所・法務省の案内を確認します。

不動産売却ではどう変わる?

認知症対策では、「親の自宅を施設費のために売りたい」「収益物件を売却したい」という相談が多くあります。

改正後は、本人に必要な支援を個別に設定する考え方になるため、不動産売却に必要な代理権等を中心に制度を利用するという設計がしやすくなります。

ただし、居住用不動産の処分等について家庭裁判所の許可等が必要となる場面がなくなる、と単純に理解してはいけません。
具体的な処分権限・裁判所関与は施行後の条文・運用を確認する必要があります。

任意後見との関係も変わります

現行制度では、任意後見契約と法定後見の関係について一定の調整ルールがあります。令和8年改正では、この関係も見直されます。

改正後は、任意後見と法定後見(補助)を必要に応じて併存させることが可能となる仕組みが整備されます。
任意後見契約でカバーしていない行為について法定の補助を利用するなど、本人に必要な支援を組み合わせる考え方が取りやすくなります。

また、任意後見の監督のあり方についても見直しが行われます。具体的な利用方法は施行時の制度・家庭裁判所実務を確認する必要があります。

家族信託との関係|改正後も役割は同じではありません

成年後見制度が柔軟になることで、家族信託との使い分けも変わる可能性があります。しかし、両制度は同じものではありません。

成年後見・補助

本人自身を支援する制度。契約、財産管理、身上保護に関する法律行為等を本人のために支援します。

家族信託

信託した財産の管理・運用・処分・承継を設計する制度。対象は信託した財産に限られます。

改正後は「後見が嫌だから全部家族信託」という判断も見直す余地があります。
法定後見が必要な範囲だけ利用し、信託・任意後見・遺言等を組み合わせる設計がより重要になります。

補助人を途中で交代しやすくする仕組み

改正では、本人の利益のため特に必要がある場合に補助人を解任できる仕組みも整備されます。

不正や職務違反がある場合だけでなく、本人の状況・支援内容が変化し、別の支援者が適切になった場合などに対応しやすくする考え方です。

成年後見制度を「一度人を決めたら固定する制度」ではなく、本人の利益を中心に支援者・支援内容を見直せる制度へ近づける改正と考えられます。

いつから変わる?

2026年6月17日

改正法成立。

2026年6月24日

令和8年法律第45号・第46号公布。

公布から2年6か月以内

政令で定める日から成年後見制度の改正部分を施行。

「2028年12月24日施行」と確定しているわけではありません。
法律上は2026年6月24日から2年6か月を超えない範囲内で、政令が具体的な施行日を定めます。

2026年8月現在はどうすればよい?

改正法は成立していますが、成年後見制度の改正部分はまだ施行前です。現時点では、現在の「後見・保佐・補助」の制度を利用します。

すでに認知症が進んでいる

必要な契約・遺産分割・不動産売却等がある場合、現行の法定後見制度を検討します。

まだ判断能力がある

任意後見、財産管理委任、家族信託、遺言等を検討できます。

すでに成年後見中

今すぐ制度が変わるわけではありません。施行後の経過措置・移行手続を確認します。

「数年後に制度が良くなるから、今は何もしない」とは限りません。
現在必要な法律行為がある場合には、現在利用できる制度で対応する必要があります。

よくある誤解

  • 「後見制度はもう廃止された」→ 2026年8月現在は現行制度が利用されています。
  • 「施行されたら今の成年後見は自動解除」→ 既存利用者には経過措置があります。
  • 「補助へ一元化されれば本人が全部自由に契約できる」→ 個々の意思能力・支援権限は別に判断します。
  • 「遺産分割が終われば自動的に終了」→ 家庭裁判所による取消し等の手続が必要です。
  • 「家族信託が不要になる」→ 家族信託と成年後見は役割が異なります。
  • 「任意後見がなくなる」→ 任意後見制度も見直され、法定後見との関係が再設計されます。

専門家はここを見る

  • 本人が現在どこまで判断・意思表示できるか
  • 何の法律行為に支援が必要なのか
  • 遺産分割だけか、不動産売却・預金管理も必要か
  • 支援が一時的か、継続的か
  • すでに成年後見・保佐を利用しているか
  • 任意後見契約が存在するか
  • 家族信託・財産管理委任・遺言との役割分担
  • 本人の生活・意思決定を必要以上に制限しない設計になっているか

セルフチェック|ご家族の場合は?

  • 本人の判断能力がどの程度か確認した
  • 今必要な手続を具体的に整理した
  • 遺産分割・不動産売却・預金管理など目的を分けた
  • 法定後見が必要なのか、任意後見等で対応できるのか比較した
  • 家族信託の対象財産と、本人支援の必要性を分けて考えた
  • 既に後見中の場合、施行後の経過措置を確認する予定にしている

よくある質問

Q.すでに成年後見人が付いています。施行後は自動的に成年後見が終わりますか?
いいえ。施行前から利用している後見・保佐については経過措置が設けられます。施行と同時に自動的に解除される制度ではありません。新制度への移行や取消し等は、家庭裁判所の手続と施行時の経過措置に従って判断します。
Q.遺産分割のために成年後見を始めました。遺産分割後はやめられますか?
現行制度では本人の判断能力が回復しない限り原則として制度が続きます。改正後は、必要な代理権等がなくなり補助を続ける必要性がなくなった場合、家庭裁判所に補助開始の審判等の取消しを求める仕組みになります。
Q.制度が終了すれば、認知症の本人が自宅を自由に売却できますか?
必ずしもそうではありません。制度利用の有無と、個々の契約について本人に意思能力があるかは別問題です。本人に売買契約を理解・判断する能力がなければ、制度終了後であっても本人単独で有効に契約できるとは限りません。
Q.任意後見契約がある場合でも補助を利用できますか?
令和8年改正では任意後見制度と法定後見制度との関係も見直され、必要に応じて両制度を併存させることができる仕組みが整備されます。具体的な適用要件は施行時の法令・家庭裁判所実務を確認します。
Q.成年後見が柔軟になるなら家族信託は不要ですか?
いいえ。成年後見・補助は本人の法律行為を支援する制度、家族信託は信託した財産の管理・運用・処分・承継を設計する制度です。対象と機能が異なるため、改正後も使い分け・組合せを検討します。
Q.2026年8月現在、後見・保佐はもう申し立てられませんか?
申し立てられます。改正部分はまだ施行されていないため、現在は現行法の「後見・保佐・補助」の3類型が利用されています。

当事務所の考え方|「後見を使うか」ではなく「何を支援する必要があるか」から考える

今回の成年後見制度改正は、制度名を変えるだけではありません。

これまでの「判断能力がどの程度低下しているか」から制度を選ぶ考え方に加え、本人が今、何について支援を必要としているのかを中心に制度を設計する方向への大きな転換です。

遺産分割、不動産売却、預金管理、施設契約など、必要なことは家族ごとに異なります。また、家族信託・任意後見・財産管理委任・遺言など、判断能力があるうちに準備できる制度もあります。

当事務所では、制度ありきではなく、本人ができること、できなくなったこと、今後必要になることを整理し、必要以上に本人の権利を制限しない方法を検討することを大切にしています。

認知症・成年後見・財産管理を、今必要なことから整理したい方へ

遺産分割、不動産、預金、施設費、家族信託、任意後見など、ご家族の状況に応じて必要な制度を整理します。

お問い合わせ 成年後見の総合ページへ

主な一次情報

※本ページは2026年8月9日現在の法律・法務省公表資料に基づく一般的な説明です。成年後見制度の改正部分はまだ施行前です。施行日、既存利用者の移行手続、家庭裁判所の申立書式・運用等は今後の政令・省令・裁判所案内により具体化されるため、実際の手続時には最新情報をご確認ください。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
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