相続税の未成年者控除とは|要件・計算方法・扶養義務者からの控除を税理士が解説
相続税の未成年者控除とは
要件・計算方法・扶養義務者からの控除を税理士が解説
相続または遺贈によって財産を取得した人が18歳未満の場合、 一定の要件を満たすと、相続税額から未成年者控除を差し引けます。 控除額は、原則として満18歳になるまでの年数1年につき10万円です。
未成年者控除は、相続財産の評価額や課税価格から差し引く制度ではありません。
相続税額を計算した後、その未成年者本人の相続税額から 直接差し引く「税額控除」です。
本人の税額から控除しきれない場合は、 一定の扶養義務者の相続税額から残額を控除できることがあります。 ただし、未成年者本人が相続または遺贈によって 財産を取得していることが必要です。
2022年4月1日以後の相続等では、 原則として18歳未満かどうかで判定します。
満18歳になるまでの年数に 10万円を乗じて計算します。
本人から控除しきれない場合は、 一定の扶養義務者から控除できます。
相続税の未成年者控除とは
未成年者控除とは、相続または遺贈によって財産を取得した人が 一定の未成年者に該当する場合に、 その人の相続税額から一定額を差し引く制度です。
未成年者は、将来の生活費や教育費等の負担が見込まれることから、 相続税負担を軽減する趣旨で設けられています。
税額計算上の位置付け
- 相続財産の課税価格を計算します。
- 基礎控除を差し引き、 相続税の総額を計算します。
- 相続税の総額を各人の取得割合に応じて配分します。
- 各人の相続税額から 未成年者控除等の税額控除を差し引きます。
- 最終的な納付税額を計算します。
基礎控除、相続税の総額、各相続人の納付税額までの流れは、 相続税の計算方法 で詳しく解説しています。
未成年者控除を受けるための要件
原則として、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 相続または遺贈によって財産を取得していること
- 財産を取得した時に18歳未満であること
- 法定相続人に該当すること
- 相続税法上、未成年者控除の対象となる 納税義務者に該当すること
要件1 相続または遺贈で財産を取得していること
未成年者が法定相続人であるだけでは足りません。 相続または遺贈によって、 実際に財産を取得している必要があります。
財産には、遺産分割により取得する預貯金や不動産のほか、 遺言による遺贈、相続税法上のみなし相続財産となる 死亡保険金等が含まれる場合があります。
要件2 財産取得時に18歳未満であること
2022年4月1日以後に相続または遺贈によって 財産を取得する場合は、 原則として18歳未満であることが必要です。
要件3 法定相続人であること
未成年者控除を受ける人は、 民法上の法定相続人である必要があります。
遺言により財産を取得した未成年者であっても、 法定相続人に該当しない人は、 原則として未成年者控除の対象になりません。
要件4 住所・国籍等の要件
日本国内に住所がある人は原則として対象になりますが、 一時居住者であり、かつ被相続人が外国人被相続人または 非居住被相続人に該当する場合などは、 対象外となることがあります。
日本国内に住所がない人でも、 日本国籍、相続開始前10年以内の国内住所歴、 被相続人の住所・国籍等によって 対象となる場合があります。
親権者と未成年者が共同相続人となる場合には、 特別代理人の選任が必要になることがあります。 詳しくは 未成年者が相続人の場合 をご覧ください。
未成年者控除額の計算方法
18歳になるまでの期間に1年未満の端数がある場合は、 その1年未満の期間を切り上げて、 1年として計算します。
実務上は、相続開始時の満年齢の1年未満を切り捨てて、 「18歳-相続開始時の満年齢」により年数を計算すると 分かりやすくなります。
18歳-15歳=3年
10万円×3年=30万円です。
年齢別の未成年者控除額
| 相続時の満年齢 | 18歳までの年数 | 未成年者控除額 |
|---|---|---|
| 0歳 | 18年 | 180万円 |
| 1歳 | 17年 | 170万円 |
| 3歳 | 15年 | 150万円 |
| 5歳 | 13年 | 130万円 |
| 8歳 | 10年 | 100万円 |
| 10歳 | 8年 | 80万円 |
| 12歳 | 6年 | 60万円 |
| 15歳 | 3年 | 30万円 |
| 16歳 | 2年 | 20万円 |
| 17歳 | 1年 | 10万円 |
※相続開始時の満年齢による早見表です。 実際の計算では、相続開始日と生年月日を確認します。
具体的な計算例
18歳まで3年
30万円18歳まで8年
80万円1年未満を1年として計算
10万円本人の相続税から全額控除できる場合
15歳の未成年者の相続税額が50万円で、 未成年者控除額が30万円の場合は、 次のように計算します。
この未成年者本人の納付税額は20万円です。
本人から控除しきれない場合
10歳の未成年者の相続税額が20万円で、 未成年者控除額が80万円の場合は、 本人の相続税額20万円を全額控除します。
残る60万円は、一定の扶養義務者の相続税額から 控除できる可能性があります。
本人の相続税額が生じない場合
未成年者本人が相続または遺贈によって財産を取得しているものの、 相続税の計算結果として、 本人に相続税額が生じない場合があります。
この場合でも、未成年者本人が適用要件を満たしていれば、 未成年者控除額を一定の扶養義務者の相続税額から 控除できることがあります。
遺産総額と相続人の構成から概算税額を確認する場合は、 相続税シミュレーション をご利用ください。
本人から控除しきれない場合は扶養義務者から控除できます
未成年者控除額が未成年者本人の相続税額を上回る場合、 控除しきれなかった金額を、 その未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引けます。
扶養義務者に含まれる主な人
- 配偶者
- 父母・祖父母等の直系尊属
- 子・孫等の直系卑属
- 兄弟姉妹
- 一定の三親等内の親族
税法上の扶養義務者は、 所得税の扶養控除における扶養親族と 同じ意味ではありません。
実際に所得税上の扶養控除を受けているか、 同居しているかだけで決まるものでもありません。
誰の相続税額から控除するか
扶養義務者が複数いる場合は、 各扶養義務者の相続税額や他の税額控除を確認し、 控除する金額を検討します。
同じ未成年者について、 控除しきれない金額を複数の扶養義務者から 重複して控除することはできません。
過去の相続でも未成年者控除を受けている場合
同じ未成年者が、今回より前の相続でも 未成年者控除を受けている場合には、 今回の相続で控除できる金額が制限されることがあります。
同一人物について未成年者控除を重ねて満額適用し、 本来の控除限度額を超えないようにするためです。
確認する主な資料
- 過去の相続税申告書
- 過去の第6表
- 過去の相続開始日
- 過去の相続時の年齢
- 実際に控除した金額
- 扶養義務者から控除した金額
相続放棄をした未成年者も控除対象になる場合があります
相続放棄をすると、民法上は初めから 相続人でなかったものとみなされます。
しかし、未成年者控除における法定相続人の判定では、 相続放棄がなかったものとした場合に 法定相続人に該当するかどうかを判定します。
そのため、相続放棄をした未成年者であっても、 遺贈や死亡保険金等によって 相続税の対象となる財産を取得している場合には、 未成年者控除を適用できることがあります。
親権者は相続し、未成年者だけが相続放棄する場合などは、 利益相反の検討が必要です。 詳しくは 未成年者が相続人の場合 をご確認ください。
胎児が生きて生まれた場合の未成年者控除
民法上、胎児は相続について既に生まれたものとみなされます。 ただし、死産の場合には相続人とはなりません。
胎児が生きて生まれ、 相続または遺贈によって財産を取得し、 その他の適用要件を満たす場合、 現行制度での未成年者控除額は180万円です。
未成年者が国外に居住している場合
未成年者が日本国外に住んでいる場合でも、 一定の要件を満たせば 未成年者控除を受けられます。
確認する主な事項
- 未成年者の現在の住所
- 未成年者の日本国籍の有無
- 相続開始前10年以内の日本国内住所歴
- 被相続人の住所
- 被相続人の日本国籍の有無
- 被相続人の過去の国内住所歴
- 一時居住者、外国人被相続人等への該当性
相続税申告書への記載方法
未成年者控除額および障害者控除額は、 相続税申告書の第6表 「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」で計算します。
第6表で確認する主な事項
- 未成年者の氏名
- 生年月日
- 相続開始時の年齢
- 18歳になるまでの年数
- 未成年者控除の計算額
- 本人の相続税額から控除する金額
- 扶養義務者から控除する金額
- 過去の相続で適用した控除額
e-Taxによる相続税申告でも、 第6表は送信対象となります。
未成年者控除でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 20歳未満なら控除できる | 現行制度では原則18歳未満です。 20歳基準は2022年3月31日以前の相続等に関する旧制度です。 |
| 遺産総額から控除する | 未成年者控除は、 各人の相続税額から差し引く税額控除です。 |
| 未成年者なら誰でも控除できる | 原則として法定相続人であり、 相続または遺贈で財産を取得する等の要件があります。 |
| 財産を取得しなくても親の税額から控除できる | 未成年者本人が財産を取得していない場合は、 扶養義務者からの控除もできません。 |
| 海外居住者は全員対象外 | 国籍、国内住所歴、被相続人の区分等により 対象となる場合があります。 |
| 本人の税額が0円なら使えない | 本人が財産を取得し、適用要件を満たしていれば、 一定の扶養義務者の相続税額から 控除できる場合があります。 |
| 相続放棄をしたら絶対に使えない | 遺贈等で財産を取得し、 一定の要件を満たせば適用できる場合があります。 |
| 過去に控除を受けても毎回満額使える | 過去の適用状況によって、 今回の控除額が制限される場合があります。 |
| 控除で税額が0円なら申告不要 | 遺産額が基礎控除を超える場合などは、 税額が0円でも申告が必要です。 |
未成年者控除についてよくある質問
17歳11か月の場合、控除額はいくらですか?
10万円です。 満18歳になるまでの期間に1年未満の端数がある場合は、 1年として計算します。
未成年者が財産を取得しなかった場合も控除できますか?
原則としてできません。 未成年者控除を受ける本人は、 相続または遺贈によって財産を取得している必要があります。 財産を取得していない場合は、 扶養義務者の相続税額から控除することもできません。
未成年者本人の相続税額が0円でも利用できますか?
本人が相続または遺贈によって財産を取得し、 その他の適用要件を満たしていれば、 一定の扶養義務者の相続税額から 控除できる場合があります。
母の相続税額から子の未成年者控除を引けますか?
子本人から控除しきれない金額があり、 母が扶養義務者に該当し、 母にも控除対象となる相続税額がある場合は、 控除できることがあります。
兄や姉の相続税額から控除できますか?
兄弟姉妹は扶養義務者に含まれるため、 適用要件を満たし、 その兄や姉に控除対象となる相続税額があれば、 控除できる場合があります。
相続放棄をした子も未成年者控除を使えますか?
相続放棄をしていても、 遺贈や死亡保険金等により 相続税の対象となる財産を取得し、 その他の要件を満たせば、 適用できる場合があります。
胎児にも未成年者控除がありますか?
胎児が生きて生まれ、 相続または遺贈によって財産を取得し、 その他の要件を満たす場合には、 現行制度で180万円の控除となります。
未成年者控除で相続税が0円になれば申告不要ですか?
必ずしも申告不要ではありません。 遺産総額が基礎控除を超え、 相続税の申告義務がある場合は、 控除後の納付税額が0円でも申告が必要です。
特別代理人を選任しなければ未成年者控除は使えませんか?
特別代理人の選任と未成年者控除は別の制度です。 特別代理人が必要かどうかは、 遺産分割等における親権者との利益相反によって判断します。
海外に住んでいる未成年者は対象外ですか?
一律に対象外ではありません。 本人と被相続人の住所、国籍、国内住所歴、 在留資格等を確認して判断します。
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主な根拠法令・公的資料
- 相続税法第19条の3 (未成年者控除)
- 相続税法施行令第4条の3
- 相続税法基本通達19の3-1から19の3-6
- 国税庁「No.4164 未成年者の税額控除」
- 国税庁「相続税法基本通達 第19条の3《未成年者控除》関係」
- 国税庁「相続税の申告書等の様式一覧」
本ページは、未成年者控除に関する一般的な取扱いを 分かりやすく説明するものです。 実際の適用可否や控除額は、相続開始日、生年月日、 法定相続人該当性、住所・国籍、財産取得状況、 相続放棄の有無、過去の未成年者控除の適用状況等によって異なります。 個別案件については、申告前に税理士または所轄税務署へご確認ください。


















