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相続税の計算方法|7ステップ・税率・具体例を税理士が図解

相続税の計算を「仕組み」から理解する

相続税は「遺産総額 × 税率」で計算する税金ではありません。

財産・みなし相続財産・債務・葬式費用・一定の生前贈与などを整理して各人の課税価格を求め、基礎控除を差し引いた後、いったん法定相続分で取得したものとして「相続税の総額」を計算します。その総額を実際の取得割合で各人に配分し、2割加算や配偶者の税額軽減、各種税額控除を反映して最終的な納付税額を求めます。

30秒で結論
相続税計算は、①各人の課税価格を確定する → ②家族全体の相続税の総額を計算する → ③実際の取得状況に応じて各人の納付税額を計算する、という3段階です。実務で難しいのは税率表ではなく、「計算式に入れる数字を正しく確定すること」です。
相続税計算の全体構造を3段階で示した図解
図解|相続税は「各人の課税価格」「相続税の総額」「各人の納付税額」の3段階で考えると理解しやすくなります。

まず理解したい|相続税計算は3段階

第1段階|各人の課税価格相続・遺贈等で取得した財産、みなし相続財産、相続時精算課税適用財産、非課税財産、債務・葬式費用、一定の暦年贈与などを反映します。
第2段階|相続税の総額課税価格の合計額から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて税率を適用します。
第3段階|各人の納付税額相続税の総額を実際の課税価格の割合で配分し、2割加算や配偶者の税額軽減、税額控除を反映します。
用語を区別してください。
「各人の課税価格」「課税価格の合計額」「課税遺産総額」「相続税の総額」「各人の納付税額」は、それぞれ別の数字です。この区別が相続税計算を理解する鍵になります。

相続税の計算方法|7つのステップ

相続税の計算方法を7つのステップで示した図解
図解|最初の3ステップで課税価格を正しく作り、次に相続税の総額、最後に各人の納付税額を求めます。
STEP 1

相続税の対象となる財産を確認する

現金・預貯金、土地、建物、有価証券、非上場株式、貸付金、事業用財産、貴金属などを確認します。死亡保険金や死亡退職金など、民法上の遺産そのものではなくても相続税上「みなし相続財産」として課税されるものもあります。

また、家族名義の預金であっても、資金の原資や管理・運用の実態によっては被相続人の財産と判断されることがあります。

STEP 2

財産を相続税評価額で評価する

相続税では、財産の購入価格や売却予定額をそのまま使うとは限りません。土地、建物、株式などは、相続税法や財産評価基本通達等に基づき評価します。

小規模宅地等の特例は「最後に税額から引く制度」ではありません。
一定の要件を満たす宅地等について、相続税の課税価格に算入する価額を減額する制度です。したがって、課税価格を作る段階で検討します。
STEP 3

非課税財産・債務・葬式費用・生前贈与等を反映する

一定の死亡保険金・死亡退職金には、相続人が取得した場合に「500万円 × 法定相続人の数」の非課税限度額があります。また、死亡時に現に存在し確実と認められる借入金・未払金等や、一定の葬式費用は控除対象となります。

取得財産等 + みなし相続財産 + 相続時精算課税適用財産 − 非課税財産 − 控除できる債務・葬式費用 + 加算対象となる暦年贈与等 → 各人の課税価格

葬式費用では、通夜・告別式・火葬・埋葬等に通常必要な費用は対象になり得ますが、香典返し、墓石・墓地の購入費、一定の法要費用などは原則として控除対象になりません。

2026年中に開始した相続について
暦年課税の贈与財産の加算対象期間は、相続開始日が2026年12月31日以前であれば原則として相続開始前3年以内です。2027年以後は令和5年度税制改正の経過措置により段階的に広がります。
STEP 4

課税価格の合計額から基礎控除を差し引く

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人が配偶者と子2人の3人なら、基礎控除額は4,800万円です。課税価格の合計額から基礎控除を差し引いた残額が「課税遺産総額」です。

相続放棄があっても人数計算から単純に外しません。
基礎控除等の法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして数えます。また、養子を人数に含める場合には税法上の制限があります。
STEP 5

課税遺産総額を法定相続分で取得したものとして仮計算する

ここが相続税計算の特徴です。実際の遺産分割とはいったん切り離し、課税遺産総額を法定相続人が民法上の法定相続分どおりに取得したものと仮定します。

法定相続分に応ずる取得金額 = 課税遺産総額 × 各法定相続人の法定相続分
STEP 6

税率を適用し「相続税の総額」を計算する

STEP5の各人の仮の取得金額に相続税の税率を適用し、その税額を合計します。この合計額が家族全体の「相続税の総額」です。

「遺産が2億円だから税率40%」ではありません。
速算表を適用するのは、基礎控除後の課税遺産総額を法定相続分で仮に分けた各取得金額です。
STEP 7

実際の取得割合で配分し、各人の納付税額を求める

各人の算出税額 = 相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

その後、相続税額の2割加算、配偶者の税額軽減、贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除等を各人ごとに反映します。

配偶者の税額軽減
配偶者が実際に取得した財産を基礎に、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額までを基準として税額を軽減する制度です。「配偶者なら1億6,000万円まで何もしなくても無税」という意味ではなく、原則として申告手続が必要で、未分割財産の取扱いにも注意が必要です。

具体例|遺産8,000万円・妻と子2人ならどう計算する?

遺産8000万円で妻と子2人の場合の相続税計算例
図解|具体例では、財産・債務から課税価格を求め、基礎控除後に法定相続分で相続税の総額を計算し、最後に各人の税額へ進みます。

図解では計算の考え方を一枚で示しています。以下では、計算構造を確認するため「正味の遺産額8,000万円」と単純化して相続税の総額まで計算します。

計算 結果
法定相続人 配偶者+子2人=3人
基礎控除 3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税遺産総額 8,000万円-4,800万円=3,200万円
法定相続分で仮分割 配偶者1,600万円、子各800万円
配偶者の仮の税額 1,600万円×15%-50万円=190万円
子の仮の税額 800万円×10%=80万円(1人につき)
相続税の総額 190万円+80万円+80万円=350万円

350万円は「相続税の総額」であって、そのまま最終納付額になるとは限りません。実際の取得割合で配分し、配偶者の税額軽減等を反映します。

相続税の税率|速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

計算式より重要な6つの判断ポイント

相続税計算で実務上重要な6つの判断ポイント
図解|相続税額は、最初に計算式へ入れる財産・債務・人数等の確定と、特例・遺産分割の判断で大きく変わります。
1|財産評価は正しいか土地の評価単位、路線価・倍率、利用状況、貸付状況、非上場株式などを確認します。
2|名義預金はないか名義ではなく、原資、通帳・印鑑の管理、入出金、贈与の事実などから実質的な帰属を確認します。
3|生前贈与を漏らしていないか暦年課税・相続時精算課税、贈与時期、相続・遺贈による取得の有無等を確認します。
4|法定相続人の数は正しいか相続放棄、養子、代襲相続、相続資格の重複等がある場合は税法上の人数を確認します。
5|遺産分割はどうするか誰が何を取得するかによって、各人の税額や配偶者軽減、小規模宅地等の特例等に影響します。
6|特例・税額控除を使えるか小規模宅地等の特例、配偶者軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除等を個別に検討します。

裁決事例から分かる|計算式に入れる「前提」が重要

裁決例1|法定相続人の数

相続資格が重複しても、人の数が二重に増えるわけではない

国税不服審判所の公表裁決では、基礎控除額の計算における「相続人の数」は、同じ人が複数の相続資格に該当しても、その資格数ではなく実際の相続人の実数で数えると判断されています。

実務上の意味:基礎控除は単純な人数入力に見えても、養子、代襲相続、相続放棄、資格重複などがある場合には前提確認が必要です。

裁決例2|名義預金・家族名義財産

口座名義だけでは財産の帰属は決まらない

公表裁決では、被相続人や共同相続人名義の預貯金から引き出された現金や親族名義の定期預金等について、資金の原資や管理状況などの事実関係から被相続人の財産と認定された事例があります。

実務上の意味:相続税計算の入口は「通帳を合計すること」ではなく、相続開始時に誰の財産だったかを確認することです。

裁決例3|配偶者の税額軽減

「未分割か」「配偶者が実際に取得したか」が問題になる

相続税法19条の2では、原則として分割されていない財産を配偶者の税額軽減の対象に含めません。一方、公表裁決には、遺産分割前でも配偶者が金融機関から払戻しを受けて実際に取得していた法定相続分相当の預金について、「分割された財産」として扱われた事例があります。

実務上の意味:「配偶者なら1億6,000万円まで」と金額だけを見るのではなく、取得状況・分割状況・申告手続まで確認します。

税務署はここを見る|申告税額だけでなく、その前提

相続税の確認では、計算結果だけでなく、その税額になった前提資料が重要です。特に、預貯金の資金移動、家族名義財産、過去の贈与、不動産の利用状況、債務の実在性、特例の適用要件などは、課税価格そのものを左右します。

  • 被相続人・家族名義口座の入出金と資金原資
  • 相続開始前の贈与・資金移動
  • 土地・建物の利用状況と評価根拠
  • 借入金・未払金等の債務が実在し、確実か
  • 死亡保険金・死亡退職金の契約関係と受取人
  • 小規模宅地等の特例その他の適用要件

税理士はここを見る|税率表より先に確認する8項目

  • 相続人:誰が法定相続人か
  • 財産帰属:名義と実質的所有者が一致しているか
  • 財産評価:土地・株式等をいくらで評価するか
  • 生前贈与:暦年課税か相続時精算課税か、いつ贈与したか
  • 債務・葬式費用:控除できる範囲か
  • 遺産分割:誰が何を取得するか
  • 特例:小規模宅地等の特例や税額軽減・控除を使えるか
  • 二次相続:一次相続だけでなく家族全体の将来負担をどう考えるか

相続税計算で本当に難しいのは電卓の操作ではなく、「どの数字を計算式に入れるべきか」を確定することです。

セルフチェック|相続税の概算前に確認してください

  • □ 預貯金だけでなく、不動産・株式・保険等を確認した
  • □ 家族名義の預貯金・証券について原資を確認した
  • □ 過去の生前贈与を確認した
  • □ 法定相続人の人数を戸籍関係から確認した
  • □ 借入金・未払金・葬式費用を確認した
  • □ 土地を相続税評価額で検討した
  • □ 小規模宅地等の特例の可能性を確認した
  • □ 配偶者の税額軽減等を「申告不要判定」と混同していない

概算額を数字で確認したい方へ

このページで計算の仕組みを理解した後は、相続税シミュレーションで概算額をご確認ください。シミュレーションは初期判断のための目安です。

相続税シミュレーション 相続税の総合案内

相続税の計算方法|よくある質問

Q. 遺産総額に税率を掛ければ相続税が分かりますか?

分かりません。課税価格の合計額から基礎控除を差し引き、法定相続分で相続税の総額を計算した後、実際の取得割合で各人へ配分する仕組みです。

Q. 遺産が基礎控除以下なら申告不要ですか?

課税価格の合計額が基礎控除以下で、申告を要件とする特例等を利用する必要もなければ、通常は相続税申告は不要です。ただし、みなし相続財産、生前贈与、名義預金等を含めた課税価格が正しいかを先に確認します。

Q. 相続放棄した人は基礎控除の人数から外れますか?

外れません。基礎控除等の人数計算では、相続放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。

Q. 配偶者なら1億6,000万円まで申告しなくてよいですか?

違います。配偶者の税額軽減によって納付税額が0円となる場合でも、その軽減を受けるために原則として相続税申告が必要です。

Q. 生前贈与した財産は相続税に関係ありませんか?

関係する場合があります。暦年課税の加算対象期間内の贈与や相続時精算課税適用財産などは相続税計算へ反映される場合があります。

Q. 家族名義の預金は相続税の対象ですか?

名義だけでは判断できません。資金の原資、管理、入出金、贈与の成立等を確認し、実質的な財産帰属を判断します。

Q. 相続税シミュレーションと実際の税額が違うことはありますか?

あります。土地評価、名義預金、生前贈与、小規模宅地等の特例、債務、遺産分割、税額控除等を簡易計算で完全に反映できないためです。

このページと他の相続税ページの役割

知りたいこと 確認するページ
相続税の計算方法を理解したい このページ
自分のケースを概算したい 相続税シミュレーション
相続税全体を整理したい 相続税で困ったら最初に読むページ

根拠法令・公的資料

本ページは、相続税法、国税庁公表資料、国税不服審判所の公表裁決等を確認して構成しています。個別案件では相続開始日や事実関係により適用関係が異なる場合があります。

  • 相続税法15条(遺産に係る基礎控除)、16条(相続税の総額)、17条(各相続人等の相続税額)、18条(相続税額の加算)、19条の2(配偶者に対する相続税額の軽減)等
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4155 相続税の税率」
  • 国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
  • 国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」「No.4126 相続財産から控除できる債務」「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」
  • 国税不服審判所 公表裁決「相続税の総額」「配偶者に対する相続税額の軽減」ほか

当事務所の考え方

相続税の計算式自体は法令で決められています。しかし実際の申告では、財産の帰属、評価、生前贈与、債務、遺産分割、特例の適用可否など、計算式へ数字を入れる前の判断が税額を左右します。

そのため当事務所では、単に「相続税はいくらか」を計算するのではなく、誰が相続人なのか、何が相続税の対象財産なのか、その財産をいくらで評価するのか、どの特例を適用できるのかを順番に確認した上で税額を計算することを大切にしています。

相続税がかかるか分からない、計算の前提から確認したい方へ

財産の内容、相続人、過去の贈与、遺産分割等を確認し、申告の要否と相続税額を整理します。

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この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木 清子
保有資格税理士・行政書士
専門分野相続税・家族問題・不動産
経歴早稲田大学卒業後、大手税理士法人において、相続税申告、財産評価、遺産分割、生前対策、相続手続など、数多くの資産税案件に携わった後、佐々木税務会計事務所の共同代表として現在に至ります。 これまで、遺産総額数千万円規模の一般のご家庭から、数百億円規模の資産を有する地主・企業オーナーまで、幅広い相続・資産承継をサポートしてまいりました。 相続は、ご家族ごとに事情や想いが異なります。税法や制度だけでなく、お客様のお話を丁寧に伺い、それぞれのご家庭に適した相続・資産承継をご提案することを大切にしています。
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