相続税評価額とは?土地・株式・預貯金など財産別の評価方法を税理士が解説
相続税評価額とは?
土地・株式・預貯金など財産別の評価方法を税理士が解説
相続税は、財産の購入価格や「今ならいくらで売れそうか」という感覚だけで計算するものではありません。相続開始時点を基準に、財産ごとの評価ルールに従って相続税評価額を算定します。
相続税評価は、①何が課税対象かを決める → ②相続開始日時点で財産ごとに評価する → ③評価額を合計して相続税計算へ進むという順番です。
現金や普通預金のように比較的確認しやすい財産もありますが、土地・マンション・非上場株式などは、評価単位、利用状況、権利関係、会社規模などによって評価額が変わります。「路線価×面積」「固定資産税評価額」「決算書の簿価」だけで判断しないことが重要です。
相続税評価額とは
相続税法22条では、相続などで取得した財産の価額は、原則として取得時の時価によるとされています。ただし、土地、株式、権利などの「時価」を毎回個別の売買価格だけで決めることは困難です。
そこで実務では、国税庁の財産評価基本通達その他の評価ルールに基づき、財産の種類ごとに評価します。2026年8月現在、財産評価基本通達は令和8年5月25日付改正分まで更新されています。
相続税評価額と「4つの土地価格」は違います
土地には複数の価格があります。相続税評価で混同しやすいため、役割を分けて理解することが大切です。
財産別|相続税評価方法の早見表
| 財産 | 基本的な評価方法 | 特に確認したい事項 |
|---|---|---|
| 現金 | 相続開始時点の金額 | 手元現金・金庫内現金等 |
| 普通預金 | 原則、相続開始日現在の残高 | 名義と実質所有者 |
| 定期預金 | 元本に既経過利息の手取相当額等を加味 | 利息計算 |
| 宅地 | 路線価方式または倍率方式 | 評価単位、地形、接道、利用状況 |
| 家屋 | 原則、固定資産税評価額を基礎 | 貸家か自用か |
| 居住用マンション | 土地・建物評価に区分所有補正率を反映する場合あり | 令和6年1月1日以後の新ルール |
| 上場株式 | 課税時期の最終価格等4つの価額を比較 | 月平均額・権利落等 |
| 非上場株式 | 類似業種比準価額、純資産価額、配当還元方式等 | 株主区分・会社規模・会社資産 |
| 投資信託 | 種類に応じ、課税時期の買取価格等を基礎 | 信託財産の種類・解約等の費用 |
| 死亡保険金 | 受取額を基礎に非課税限度額を別途検討 | 保険料負担者・受取人 |
| 生命保険契約に関する権利 | 原則、解約返戻金相当額等 | 契約者・被保険者・保険料負担者 |
| ゴルフ会員権 | 取引相場があるものは通常の取引価格の70%等 | 預託金、株式形態等 |
| 貸付金 | 元本+既経過利息等を基礎 | 回収可能性・契約内容 |
土地の評価は「路線価 × 面積」だけではありません
競合各社でも土地評価を大きく扱っていますが、実務で最も重要なのは、計算式より前の評価単位・現況・利用状況・権利関係の確認です。
STEP1 まず「どこまでを一つの土地として評価するか」を決める
相続税評価では、登記簿の一筆ごとに機械的に評価するとは限りません。原則として利用の単位を踏まえて評価単位を判定します。同じ一筆でも利用状況が異なれば分けて評価する場合があり、逆に複数筆を一体として評価する場合もあります。
STEP2 路線価方式か倍率方式かを確認する
STEP3 土地固有の事情を確認する
現地の利用状況、道路との関係、高低差、周辺状況などは、固定資産税資料や路線価図だけでは分からないことがあります。必要に応じて現地確認、役所調査、登記・公図・測量図等の確認を行います。
マンションは令和6年から評価ルールが変わっています
令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した一定の居住用の区分所有財産については、従来の土地部分・家屋部分の評価だけで終わらず、区分所有補正率による補正を行う場合があります。
築年数、総階数、所在階、敷地持分などを使って評価乖離率等を計算するため、特に高層マンションなどは旧来の評価方法をそのまま使わないよう注意が必要です。
株式・金融資産の評価
死亡日の株価だけで決めない
原則として、①課税時期の最終価格、②課税時期の属する月の月平均額、③前月の月平均額、④前々月の月平均額を比較し、一定のルールで評価します。
課税時期に最終価格がない場合や、権利落ち等がある場合には別途調整があります。
上場株式の評価を詳しく見る →「決算書の純資産÷株数」ではありません
取得した株主が同族株主等か、それ以外かを判定し、会社規模等に応じて類似業種比準価額、純資産価額等を使います。土地・有価証券を多く持つ会社などはさらに注意が必要です。
令和8年には純資産価額方式における「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の取扱いにも改正があるため、相続開始時点の現行ルール確認が必要です。
取引相場のない株式を詳しく見る →残高証明+必要に応じて利息を確認
普通預金は相続開始日現在の残高が基本です。定期預金などは既経過利息の手取相当額を加味する場合があります。また、評価以前に「誰の財産か」という名義預金の問題は別途判定が必要です。
預貯金・公社債を詳しく見る →基準価額をそのまま掛けるとは限りません
投資信託は種類に応じて、課税時期に買い取られる場合の価格等を基礎に評価し、既経過収益、源泉所得税相当額、買取割引料等を考慮するものがあります。
生命保険・その他の財産
評価額と非課税枠は別の話です
死亡保険金は受取額を確認し、その後、相続人が取得した一定の死亡保険金について非課税限度額を検討します。課税対象かどうかの判定と、評価・非課税枠の計算を分けて考えます。
生命保険・死亡退職金を詳しく見る →死亡保険金が発生していない契約も財産になることがあります
被相続人が保険料を負担していた契約で、死亡時に保険事故が発生していないものは、契約関係によって解約返戻金相当額等を評価する場合があります。
相場の有無・預託金の内容を確認
取引相場のあるゴルフ会員権は、原則として課税時期の通常の取引価格の70%相当額を基礎に評価します。取引価格に含まれない預託金がある場合は、その内容に応じた評価を加えます。
自動車・貸付金・貴金属・会員権など
金銭に見積もることができる経済的価値のある財産は、財産の性質に応じて評価します。購入価格が不明だから評価不要、ということにはなりません。
その他の相続財産を詳しく見る →自分で確認しやすい財産と、専門家確認を勧めたい財産
比較的確認しやすい
・手元現金
・普通預金
・固定資産税評価額が明確な自用家屋
・資料が揃った上場株式など
ただし、名義・相続開始日・利息・権利落等の論点があれば別途確認が必要です。
専門家確認を勧めたい
・不整形地、無道路地、貸地、借地
・賃貸アパート・収益不動産
・居住用マンション
・非上場株式
・会社が土地や有価証券を多く持つ場合
・海外資産、特殊な権利・会員権など
税務署はここを見る|評価額の「根拠」を説明できますか
税務調査では、財産を申告しているかだけでなく、その評価額が適切かも確認対象になります。土地の評価単位、補正率、利用状況、貸付状況、非上場株式の会社規模や株主区分など、評価の前提が事実と一致しているかが重要です。
適用できる減額要素を正しく反映し、適用できない補正を使わない。過大評価による払い過ぎと、過小評価による追徴リスクの両方を避けるのが財産評価です。
税理士はここを見る|評価の前に「事実」を確認する
評価が終わったら、相続税の計算へ
財産評価は相続税計算の途中にある重要な工程です。各財産の評価額を集計し、債務・葬式費用、生前贈与の加算等を整理し、基礎控除や各種特例・税額控除を適用して最終的な相続税額を計算します。
関連ページ|財産別に詳しく確認する
よくある質問
Q. 相続税評価額と不動産の売却価格は同じですか?
同じとは限りません。相続税評価は、相続税法・財産評価基本通達等に基づいて算定します。特に土地では実際の売却価格と相続税評価額に大きな差が生じることがあります。
Q. 固定資産税評価額をそのまま使えますか?
家屋は原則として固定資産税評価額が評価の基礎になりますが、土地は路線価方式または倍率方式等で評価します。財産の種類ごとに違います。
Q. 土地は路線価×面積だけで評価できますか?
標準的な土地で補正が不要なら単純な場合もありますが、実務では評価単位、奥行、間口、形状、接道、利用状況、権利関係等を確認する必要があります。
Q. マンションは固定資産税評価額と敷地権だけで評価できますか?
令和6年1月1日以後に取得した一定の居住用区分所有財産については、区分所有補正率による補正が必要になる場合があります。
Q. 上場株式は死亡日の終値だけで評価しますか?
原則として課税時期の最終価格のほか、その月・前月・前々月の月平均額を比較する仕組みがあります。最終価格がない場合や権利落等にも別の取扱いがあります。
Q. 非上場株式は会社の帳簿純資産を株数で割ればよいですか?
それだけではありません。株主区分、会社規模、資産構成等を判定し、類似業種比準価額、純資産価額、配当還元方式等の適用を検討します。
Q. 相続税評価は低ければ低いほどよいですか?
いいえ。適用できる評価減を正しく反映することは必要ですが、根拠のない過小評価は税務リスクになります。逆に、減額要素を見落とせば相続税を払い過ぎることがあります。
当事務所の考え方|「下げる評価」ではなく「説明できる評価」
相続税専門サイトでは「土地評価を最大限下げる」といった表現も見られます。しかし、当事務所が重視するのは、単に評価額を低くすることではありません。
現況・利用状況・権利関係・会社の内容などを確認し、適用できる評価上の調整を正しく反映し、その根拠を説明できる評価を行うこと。これが適正な相続税申告につながると考えています。
評価を高くし過ぎれば相続税を払い過ぎます。一方、評価を低くし過ぎれば税務調査で問題になる可能性があります。その両方を避けるため、資料だけでなく必要に応じて現地や事実関係まで確認して評価します。
相続税の財産評価について相談する
土地、マンション、非上場株式など、評価方法によって相続税額が大きく変わる財産があります。相続税申告とあわせて、財産評価についてもご相談ください。
主な根拠・参考資料
・相続税法第22条(評価の原則)
・国税庁「財産評価基本通達」(令和8年5月25日付改正分まで)
・国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
・国税庁 No.4602「土地家屋の評価」
・国税庁 No.4667「居住用の区分所有財産の評価」
・国税庁 No.4632「上場株式の評価」
・国税庁 No.4638「取引相場のない株式の評価」
・国税庁 No.4644「貸付信託・証券投資信託の評価」
・国税庁 No.4647「ゴルフ会員権の評価」
※本ページは一般的な制度説明です。個別の財産評価は、相続開始日、財産の種類、所在地、現況、利用状況、権利関係その他の事情により異なります。


















