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現金・預金の生前贈与|名義預金と判断されないための方法を税理士が解説

令和8年(2026年)版
子や孫名義の預金でも、
実質が親の財産なら「名義預金」です

現金・預金は生前贈与を実行しやすい財産ですが、名義だけを子や孫へ変え、親が通帳や資金を管理し続けると、贈与が成立していないと判断されることがあります。 大切なのは、契約書の有無だけでなく、贈与の合意、資金移動、受贈者の認識、管理・使用の実態です。

結論:名義ではなく、「誰の資金で、誰が管理し、誰が自由に使えるか」で整理します。 年110万円以下で贈与税申告が不要でも、贈与の事実を説明できる資料と実態が必要です。 反対に、親名義の口座であっても、実質的に子の資金である事情が明確なら、名義だけで親の相続財産と決まるわけではありません。

1.名義預金とは

「名義預金」は法律上の制度名ではなく、口座名義人と実質的な所有者が異なる預金を指す実務上の呼び方です。 子や孫名義の口座であっても、資金を出した人が親や祖父母で、本人が贈与を知らず、親が管理・使用している場合には、実質的に親や祖父母の財産と判断されることがあります。

名義預金と判断されやすい構造
資金を出した人
口座名義
しかし
通帳・印鑑・使用権限
実質所有者親と判断される可能性
口座名義だけでは、贈与の成立や財産の帰属は決まりません。
相続税では、被相続人が実質的に所有していた現金・預貯金は相続財産となります。名義、原資、管理状況、贈与の合意、入出金の使途などを総合して判断します。

2.現金・預金の贈与が成立したと説明するための要素

①贈与意思
贈与者が無償で与える意思
②受贈意思
受贈者が受け取る意思
③資金移動
贈与者から受贈者へ移転
④管理支配
受贈者が管理・使用できる
⑤記録
契約・振込・申告等の資料
贈与者の意思

財産を無償で相手に移し、返還を求めない意思が必要です。預けただけ、管理を任せただけでは贈与とは限りません。

受贈者の意思

受贈者が贈与の事実を認識し、受け取る意思を有することが必要です。本人が口座の存在すら知らない状態は問題になります。

財産の移転

贈与者の口座から受贈者の口座への振込など、資金の移転経路を明確にします。

受贈者の管理・使用

受贈者が通帳等を管理し、自分の判断で引出し・使用できることが重要です。

贈与は契約です。 現金贈与は書面がなくても成立し得ますが、後日の相続税申告や税務調査で事実を説明するため、契約書と客観的な資金移動記録を残すことが実務上重要です。

3.贈与契約書があれば、必ず認められるわけではありません

贈与を説明する資料の組合せ
贈与契約書当事者・日付・金額・財産
銀行振込贈与者口座から本人名義口座へ
管理実態本人が通帳等を管理
必要に応じ申告受贈者が申告・納税
贈与契約書に記載したい事項
  • 贈与者と受贈者の住所・氏名
  • 贈与する財産の種類と金額
  • 贈与日または振込日
  • 振込先口座などの特定
  • 贈与者が贈与し、受贈者が受諾する旨
  • 当事者の署名または記名押印
  • 未成年者の場合の親権者の関与
後から一括して過去分の契約書を作成することは避けます。
契約書は各年の贈与時に作成し、実際の振込日・金額と一致させます。形式だけ整えても、受贈者が知らず親が管理していた事実は解消されません。

4.銀行振込と現金手渡しは、どちらがよいか

方法 利点 注意点
銀行振込 贈与者、受贈者、日付、金額、資金経路が通帳等に残る 振込後も親が受贈者口座を管理していれば、名義預金の問題は残る
現金手渡し 法律上、現金の贈与自体は可能 資金移動の客観的記録が弱く、相続時に金額・時期・受領事実を説明しにくい
受贈者口座への現金入金 受贈者口座に入金記録が残る 入金者・資金源が通帳だけでは分からないことがあり、契約書や出金記録が必要
原則として、贈与者本人の口座から受贈者本人の口座へ振り込む方法が、資金経路を説明しやすい方法です。 現金手渡しをする場合は、契約書、受領書、贈与者の出金記録、受贈者の入金記録を残します。
受贈者の口座へ振り込めば、それだけで贈与が完成するわけではありません。
贈与の合意がなく、受贈者が存在を知らず、贈与者が引き続き管理・使用している場合には、預金の実質的な帰属が問題になります。

5.通帳・印鑑・キャッシュカード・暗証番号は誰が管理するか

通帳・インターネットバンキング

原則として受贈者が管理し、残高・入出金を自分で確認できる状態にします。

届出印

贈与者の印鑑を使い回さず、受贈者本人の印鑑として管理します。

カード・暗証番号

受贈者が保管し、贈与者が自由に出金できる状態を避けます。

登録住所・連絡先

受贈者の住所、電話番号、メールアドレスを登録し、金融機関から本人へ連絡が届くようにします。

使
預金の使用

受贈者が自分の判断で使用・運用できることが重要です。ただし、必ず使い切る必要はありません。

資料の保存

契約書、通帳写し、振込明細、申告書を贈与者・受贈者双方で保存します。

「親が管理している」という一事だけで直ちに名義預金と決まるわけではありません。
高齢者や未成年者について補助的に管理する合理的事情があることもあります。ただし、誰が意思決定し、誰のために管理・使用しているかを説明できる必要があります。

6.未成年の子・孫へ贈与する場合

未成年者も贈与を受けることができます。 ただし、年齢や理解力に応じ、親権者が法定代理人として契約に関与し、財産管理を補助することがあります。

親から未成年の子へ贈与

親自身が贈与者であり、同時に子の法定代理人となる場面では、利益相反や契約手続の整理が必要です。契約当事者・署名方法を個別に確認します。

祖父母から未成年の孫へ贈与

親権者が孫を代理して受諾する方法があります。通帳等を親権者が管理する場合も、孫のための管理であることを明確にします。

  • 本人へ年齢に応じて贈与の内容を説明する
  • 親権者が自己資金と混在させない
  • 教育費等に使う場合は、誰のために何へ支出したか記録する
  • 成人後は本人へ通帳・カード・管理権限を引き渡す
親権者が管理しているだけで、当然に名義預金になるわけではありません。
未成年者の財産を親権者が管理することはありますが、その預金が未成年者へ有効に贈与され、未成年者のために分別管理されていることが重要です。

7.年110万円以下の贈与と毎年贈与

暦年課税の基本
1年間の贈与合計父・母・祖父母等から受けた財産を合計
基礎控除110万円受贈者ごと
課税価格超えた部分に贈与税
  • 年110万円は贈与者ごとではなく、受贈者ごとの合計です
  • 年110万円以下なら、暦年課税では原則として贈与税申告は不要です
  • 申告不要でも、贈与契約書や振込記録を残します
  • 毎年同じ日・同じ金額でも、それだけで直ちに一括課税されるわけではありません
  • 当初から複数年分の給付を約束している場合は、定期金に関する権利の贈与となる可能性があります
毎年あえて日付や金額を変えることは、法令上の必須要件ではありません。
各年に独立した贈与契約と実行があるかが重要です。また、110万円を少し超えて申告することも、贈与成立の必須条件ではありません。

8.贈与者が亡くなったとき、現金・預金をどう確認するか

相続税の対象となるのは、相続開始時に被相続人が実質的に所有していた財産です。 被相続人名義の現金・預貯金だけでなく、家族名義の口座でも実質的に被相続人の財産であれば相続財産に含めます。

相続時の確認手順
口座名義誰の名義か
資金原資誰の収入・財産か
管理状況誰が通帳等を保管したか
使用状況誰のために使ったか
実質所有者総合判断
確認しておきたい資料
  • 被相続人・家族名義口座の通帳、取引履歴
  • 口座開設申込書、届出印、登録住所・電話番号
  • 贈与契約書、振込明細、受領書
  • 贈与税申告書、納付書
  • 被相続人・受贈者の収入、給与、年金、過去の財産状況
  • 預金の使用目的と出金先
  • 通帳・カードを保管していた場所と管理者
贈与税申告をしているから、必ず受贈者の財産になるとは限りません。
申告書は重要な資料の一つですが、贈与の合意や管理・使用の実態と矛盾する場合には、預金の帰属が問題となります。

9.相続税の税務調査で確認されやすい事項

1
口座の原資

口座名義人に、その預金を形成できる収入・資産があったかを確認します。

2
口座開設の経緯

誰が金融機関で手続し、届出印・住所・連絡先を設定したかを確認します。

3
通帳等の保管者

通帳、印鑑、カード、暗証番号、ネットバンキングを誰が管理していたかを確認します。

4
受贈者の認識

本人が口座・残高・贈与の事実を知り、自由に処分できたかを確認します。

5
入出金の使途

被相続人の生活費や不動産購入など、実質的に被相続人のために使われていないかを確認します。

6
契約・申告との整合

契約書、振込、贈与税申告、預金管理の事実が一致しているかを確認します。

税務調査への対策は、形式的な書類を増やすことではありません。 贈与を実行した時点から、契約、資金移動、管理・使用を実態に合わせて行い、その記録を保存することが重要です。

10.既に名義預金の疑いがある場合の整理

過去に親が子名義口座を開設し、親が資金を入れ、現在も管理している場合、状況を確認せずに通帳だけを子へ渡したり、過去の日付で契約書を作ったりすることは避けます。

STEP 1 口座開設時からの原資・入出金・管理状況を確認
STEP 2 過去に有効な贈与が成立していたかを事実認定
STEP 3 親の財産、子の財産、混在部分を区分
STEP 4 必要に応じて現在時点から正式な贈与を実行
STEP 5 贈与税申告・期限後申告・相続税申告への影響を検討
名義預金を本人へ返すだけなら、常に新たな贈与になるとは限りません。
そもそも誰の財産であったかにより結論が異なります。実質的に親の財産なら、親から子へ移す時点で新たな贈与となる可能性があります。実質的に子の財産なら、管理権限を子へ戻す行為と整理される場合があります。
相続開始後は、勝手に名義預金を相続財産から除外しないでください。
被相続人の資金・管理による預金と判断される場合は、相続税申告書の現金・預貯金等として計上し、遺産分割の対象となる可能性があります。

11.現金・預金を適切に生前贈与する流れ

STEP 1 相続税の見込みと贈与者の生活資金を確認
STEP 2 受贈者、金額、時期、暦年課税・精算課税を決定
STEP 3 各年の贈与について双方で合意
STEP 4 贈与契約書を作成
STEP 5 贈与者口座から受贈者本人の口座へ振込
STEP 6 受贈者が通帳・カード等を管理
STEP 7 必要な贈与税申告・届出を期限内に実施
STEP 8 契約書・通帳・振込明細・申告書を継続保存

12.現金贈与・名義預金に関するよくある質問

Q1.子名義の預金は、すべて子の財産ですか。
名義だけでは決まりません。資金を出した人、口座開設の経緯、贈与の合意、通帳等の管理、預金の使用状況から実質的な所有者を判断します。
Q2.贈与契約書があれば名義預金になりませんか。
契約書は重要な資料ですが、それだけでは足りません。受贈者が贈与を認識し、実際に財産が移り、受贈者が管理・使用できる実態が必要です。
Q3.毎年110万円を振り込めば、贈与税はかかりませんか。
受贈者がその年に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、暦年課税では原則として贈与税はかかりません。ただし、生前贈与加算や贈与の実態は別に確認します。
Q4.父と母から110万円ずつ受け取れますか。
受け取ることはできますが、暦年課税の110万円は受贈者ごとの年額です。父母から合計220万円を受けた場合は、220万円から110万円を控除して贈与税を計算します。
Q5.現金手渡しでも贈与できますか。
可能ですが、資金移動の客観的証拠が弱くなります。契約書、受領書、贈与者の出金記録、受贈者の入金記録を残すことが重要です。
Q6.親が通帳を預かっていると、必ず名義預金ですか。
必ずではありません。未成年者や高齢者の財産を補助的に管理する場合もあります。ただし、本人への贈与が成立し、本人のために分別管理され、親が自己のために使用できない状態であることを説明する必要があります。
Q7.贈与税申告をすれば、贈与として確定しますか。
申告書は重要な資料の一つですが、預金の実質的な帰属を最終的に決めるものではありません。契約・資金移動・管理実態との整合が必要です。
Q8.孫名義の口座へ教育資金を入れておけば非課税ですか。
一括して孫名義口座へ入金しただけでは、当然に教育費の非課税になるわけではありません。扶養義務者が通常必要な教育費を必要な都度直接支払う場合など、非課税要件を確認します。
Q9.親が亡くなった後、名義預金は誰が相続しますか。
実質的に親の財産であれば相続財産となり、遺言または遺産分割等により取得者を決めます。口座名義人が当然に取得するとは限りません。
Q10.過去の名義預金を今から子へ渡せば問題ありませんか。
過去に贈与が成立していなかった場合、現在時点で親から子へ新たに贈与したこととなり、贈与税が生じる可能性があります。過去の事実関係を整理してから対応します。

13.関連する生前贈与ページ

預金の名義ではなく、原資・契約・管理実態を整理します

当事務所では、過去の通帳・入出金・贈与契約・申告状況を確認し、現金贈与の実行方法、名義預金の整理、相続税申告への反映まで一体で検討します。

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監修・更新情報

監修:佐々木税務会計事務所

最終更新:令和8年8月

本ページは一般的な考え方を説明するものです。預金の帰属は、契約書の有無だけでなく、原資、管理、使用、当事者の認識その他の具体的事実に基づいて個別に判断されます。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木 清子
保有資格税理士・行政書士
専門分野相続税・家族問題・不動産
経歴大手税理士法人において、相続税申告、財産評価、遺産分割、生前対策、相続手続など、数多くの資産税案件に携わった後、佐々木税務会計事務所の共同代表として現在に至ります。 これまで、遺産総額数千万円規模の一般のご家庭から、数百億円規模の資産を有する地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしてまいりました。 相続は、ご家族ごとに抱える事情や想いが異なり、同じ案件は一つとしてありません。 そのため私は、税法や制度だけに目を向けるのではなく、お客様一人ひとりのお話を丁寧にお伺いし、ご家族にとって最適な選択肢をご提案することを何より大切にしています。 相続税申告はもちろん、財産評価、遺産分割、生前対策、遺言書の作成、資産承継など、それぞれのご家庭の状況に応じたきめ細やかなサポートを心掛けています。 また、相続手続が完了した後も、ご家族が安心して生活を送れるよう、資産承継後の見守りや財産管理に関するご相談にも継続して対応しております。 相続は、一度きりの手続きではなく、ご家族のこれからの人生につながる大切な節目です。 だからこそ、お客様の不安に寄り添い、一つひとつの疑問を丁寧に解消しながら、安心して未来へ歩んでいただけるよう、誠実にサポートしてまいります。
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