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自社株式の贈与|株価評価・贈与税・相続時精算課税・手続を税理士が解説

COMPANY STOCK GIFT

自社株式の贈与
後継者へ株式を引き継ぐ前に最初に読むページ

自社株式の贈与は、贈与税だけで判断するものではありません。 株価、後継者、議決権、会社の将来性、他の相続人との公平、 相続による承継、買取方式、事業承継税制まで比較する必要があります。

このページでは、自社株を贈与すると決める前に何を考え、 贈与すると決めた後に何を行うのかを実務の順序で整理します。

COMMON CONCERNS

このようなお悩みはありませんか?

01

後継者へ自社株を渡したい

誰に、いつ、何株を渡すかを整理します。

02

自社株の評価額が分からない

株主区分、会社規模、資産・利益・配当から評価します。

03

贈与税が高くならないか心配

暦年課税、相続時精算課税、事業承継税制を比較します。

04

今贈与するか相続まで待つか迷う

将来株価、相続税、経営権、納税資金を比較します。

05

銀行から買取方式を提案された

時価、資金調達、売主・買主双方の課税を確認します。

06

税務調査や評価否認が心配

評価、契約、承認、名義書換、申告を一体で整えます。

3-MINUTE DECISION

自社株式の贈与を検討する前の判断ナビ

後継者は決まっていますか?
NO

贈与を急がず、後継者候補、第三者承継、M&Aを含めて事業承継全体を整理します。

YES

現在の株価と将来の株価見込みを確認します。

贈与日時点の株価を評価しましたか?
NO

契約前に税務上の株価を試算します。

YES

贈与税、相続税、議決権を比較します。

贈与以外の方法と比較しましたか?
相続買取方式事業承継税制 暦年贈与相続時精算課税
贈与を選ぶ場合

株数・時期・課税方式・契約・承認・名義書換・申告を設計します。

HOW WE THINK

税理士は自社株式の贈与をどう考えるか

  1. 後継者は確定しているか経営を任せられる状態か、承継時期はいつか。
  2. 株価はいくらか贈与日時点の税務上の株価を確認する。
  3. 株価は今後どう動くか利益、配当、純資産、事業計画を確認する。
  4. 何株を渡すか議決権割合と経営権への影響を確認する。
  5. どの課税方式を使うか暦年課税、相続時精算課税、事業承継税制を比較する。
  6. 相続との関係はどうか相続税、遺留分、他の相続人との公平を確認する。
  7. 贈与後の会社運営はどうなるか配当、役員体制、残株式の承継を確認する。

「株価が低いから贈与する」のではなく、 贈与後の会社と家族の状態まで見て判断することが重要です。

POSITIONING

自社株承継の中で「贈与」をどう位置付けるか

方法 主な税負担 資金負担 特徴
暦年課税による贈与 贈与税 受贈者の納税資金 一括・段階承継が可能。累進税率。
相続時精算課税による贈与 一定額超は20%、相続時精算 贈与税が生じる場合 一度選択すると撤回不可。原則として贈与時価額で相続時精算。
法人版事業承継税制 一定要件で納税猶予・免除 制度対応・担保等 認定、申告、継続届出等が必要。
相続による承継 相続税 相続税の納税資金 生前負担なし。承継時期、遺産分割、遺留分の不確実性。
買取方式 売主の譲渡所得課税等 後継者・会社の買取資金 対価を得て承継。時価・資金調達・会社法・所得税・法人税を検討。

※買取方式には、後継者個人による取得、自己株式取得、持株会社等を利用する方法があります。 所得税基本通達59-6は、個人が非上場株式を贈与・低額譲渡等した場合の 「その時における価額」を検討する上で重要ですが、方式の適否は同通達だけでは決まりません。

WHEN GIFTING MAY FIT

自社株式の贈与が選択肢になりやすいケース

検討しやすいケース

  • 後継者が明確に決まっている
  • 後継者が経営へ関与している
  • 今後の利益増加や株価上昇が見込まれる
  • 段階的に議決権を移したい
  • 他の財産で相続人間の調整ができる
  • 贈与税・相続税の試算が完了している

慎重に考えるケース

  • 後継者が確定していない
  • 会社売却・第三者承継の可能性がある
  • 株価が高く、受贈者に納税資金がない
  • 現経営者が全ての経営権を維持したい
  • 他の相続人との公平が整理されていない
  • 近く大きな利益・資産変動が予定されている

VALUATION

自社株式の贈与では、最初に株価を評価します

非上場株式には市場価格がありません。 受贈者の株主区分と会社の状況に応じ、財産評価基本通達に基づいて評価します。

類似業種比準方式

類似業種の上場株価を基に、配当・利益・簿価純資産を比準します。

純資産価額方式

資産・負債を相続税評価額へ洗い替えて計算します。

配当還元方式

同族株主以外の株主等に用いる特例方式で、自由に選択できません。

評価で確認する主な事項

  • 贈与後の株主構成・議決権割合
  • 同族株主・中心的な同族株主等の判定
  • 会社規模・業種目
  • 配当・利益・簿価純資産
  • 土地・有価証券等の含み損益
  • 株式等保有特定会社・土地保有特定会社
  • 開業後3年未満・休業中等の会社
  • 増資・自己株式取得・特別配当
  • 贈与日前後の資産売却・組織再編
  • 贈与日時点の会社の実態

少数株主になる予定だから配当還元方式、と単純に判断することはできません。 株主区分と同族関係者の判定を正確に行います。

ANNUAL TAXATION

暦年課税で自社株式を贈与する場合

1月1日から12月31日までに受けた贈与財産の合計額から 基礎控除110万円を差し引き、累進税率で計算します。

暦年課税の基本式 (年間贈与財産 − 110万円)× 税率 − 控除額

メリット

  • 贈与時点で承継を確定できる
  • 複数年に分けた段階承継が可能
  • 将来の株価上昇分を後継者側へ移せる可能性
  • 課税方式の撤回制限がない

注意点

  • 株価が高いと贈与税負担が大きい
  • 基礎控除は受贈者ごとに年間110万円
  • 複数年の給付をあらかじめ約束すると定期贈与の問題が生じ得る
  • 相続開始前贈与の加算対象となる場合がある

SETTLEMENT AT INHERITANCE

相続時精算課税で自社株式を贈与する場合

年110万円の基礎控除

令和6年1月1日以後の贈与から適用されます。

累計2,500万円の特別控除

期限内申告が必要です。

税率20%

基礎控除・特別控除後の金額に適用します。

自社株で特に重要な注意点

  • 一度選択すると、その特定贈与者からの贈与について暦年課税へ戻れません。
  • 原則として贈与時の価額を基礎に相続時に加算します。
  • 贈与後に株価が下がっても、原則として贈与時価額を基礎に精算します。
  • 贈与後の株価上昇分を相続時の課税価格へ直接加えない効果が期待できる場合があります。
  • 選択届出書は原則として贈与年の翌年3月15日までに提出します。

BUSINESS SUCCESSION TAX SYSTEM

法人版事業承継税制との関係

令和8年8月時点の重要事項

特例措置は、特例承継計画を令和8年3月31日までに提出済みであることが前提です。 対象となる贈与等の期限は令和9年12月31日です。 計画未提出の場合は、一般措置その他の方法を検討します。

通常贈与との違い

  • 直ちに免税ではなく、原則として納税猶予
  • 認定、申告、担保、継続届出等が必要
  • 要件を外れると猶予税額等の納付が必要となる場合がある

比較時に確認すること

  • 贈与者・後継者・会社の要件
  • 対象株式数と議決権
  • 代表者変更・株式売却予定
  • M&Aや組織再編の可能性
  • 長期管理できる体制

CONTROL & VOTING RIGHTS

何株を贈与するかは、税額だけで決めません

過半数

通常の株主総会決議へ大きく影響します。

3分の2以上

定款変更等の特別決議へ大きく影響します。

3分の1超

特別決議を単独で阻止できる可能性があります。

※種類株式、議決権制限株式、自己株式、株主間契約等がある場合は単純な株数だけでは判断できません。

PRACTICAL PROCEDURE

自社株式を贈与するときの実務手続

  1. STEP 1

    会社・株主・後継者の確認

    定款、登記、株主名簿、株式異動、株券発行の有無を確認します。

  2. STEP 2

    株価評価

    決算書、申告書、固定資産・有価証券資料等から評価します。

  3. STEP 3

    承継方法・税額比較

    暦年課税、相続時精算課税、事業承継税制、相続、買取方式を比較します。

  4. STEP 4

    株数・贈与日・課税方式の決定

    議決権、株価変動、決算日、申告期限を踏まえます。

  5. STEP 5

    会社法上の承認

    譲渡制限株式の場合、定款に従い株主総会・取締役会等で承認します。

  6. STEP 6

    贈与契約書の作成

    株式数、種類、贈与日、受諾等を明確にします。

  7. STEP 7

    株主名簿の名義書換

    会社が株主名簿を書き換え、必要資料を保存します。

  8. STEP 8

    贈与税申告・納税

    原則として翌年2月1日から3月15日までに受贈者が申告・納税します。

  9. STEP 9

    贈与後の管理

    配当、議決権、役員体制、残株式の承継を管理します。

DOCUMENTS

株価評価・贈与設計で確認する資料

会社関係

  • 定款・登記事項証明書
  • 株主名簿
  • 過去の株式異動資料
  • 種類株式等の資料

税務・会計関係

  • 直近3期程度の決算書・法人税申告書
  • 勘定科目内訳書
  • 固定資産台帳
  • 土地・有価証券の時価資料

承継関係

  • 現経営者・後継者の持株状況
  • 役員・親族関係
  • 他の相続財産
  • 事業計画・利益予測

COMMON FAILURES

自社株式の贈与でよくある失敗

FAILURE 01

株価を評価せず贈与した

額面や帳簿価額で考え、申告時に高額評価が判明。

契約前に評価する。
FAILURE 02

配当還元方式を自由に選んだ

株主区分の誤りで評価方式が否認されるリスク。

贈与後の株主構成で判定する。
FAILURE 03

契約だけで会社手続をしなかった

承認・名義書換がなく株主の実態が不明確。

契約・承認・名義書換を一体で行う。
FAILURE 04

相続時精算課税の届出が遅れた

期限後提出では原則として適用不可。

翌年3月15日までを管理する。
FAILURE 05

税金だけで過半数を渡した

経営体制が整う前に支配権だけ移転。

議決権と経営承継を合わせる。
FAILURE 06

他の相続人を考慮しなかった

相続時に遺留分・分割問題が発生。

遺言・保険・他財産で調整する。
FAILURE 07

重要取引を評価に反映しなかった

資産売却、特別配当、増資等が株価へ影響。

贈与日前後の重要事象を確認する。
FAILURE 08

事業承継税制を免税と理解した

届出・要件逸脱で猶予税額の納付問題。

適用後の管理まで設計する。
FAILURE 09

複数年の贈与を先に約束した

定期贈与として課税される問題。

各年ごとに贈与を判断する。

LEARN FROM CASES

公表裁決・低額譲渡事件から学ぶ注意点

以下は国税不服審判所の公表裁決を要約したものです。個別事件の結論を他案件へそのまま適用することはできません。

CASE 01|平成10年1月29日裁決

配当還元方式を利用した贈与税負担の軽減が問題となった事例

概要

配当還元方式による低評価を利用して贈与税負担を軽減する目的が認定されました。

判断

配当還元方式ではなく、時価純資産価額を基に評価するのが相当とされました。

実務上の教訓:形式的要件だけでなく、取得・贈与の目的と一連の取引まで見られます。

CASE 02|平成9年7月4日裁決

相続税軽減目的で取得した株式に配当還元方式を認めなかった事例

概要

取得から売却までの一連の行為から租税負担軽減目的が推認されました。

判断

会社が取引に用いていた客観的な純資産価額を基に評価すべきとされました。

実務上の教訓:現実の取引価格や社内売買基準と税務評価額の関係を確認します。

CASE 03|平成20年10月21日裁決

著しく低い価額で株式を取得し、差額に贈与税が課された事例

概要

株式を低額で取得したところ、税務署が時価との差額を贈与と認定しました。

争点

契約の錯誤無効等が争われました。

実務上の教訓:売買形式でも、時価との差額に買主側の贈与税が生じ得ます。

CASE 04|令和7年9月10日裁決

親族関係会社への低額譲渡で所得税法59条が適用された事例

概要

非上場株式の譲渡価額が時価の2分の1未満として、みなし譲渡課税が行われました。

判断

株主間の対立等は、所得税基本通達59-6による評価を排除する特別事情に当たらないとされました。

実務上の教訓:買取方式では売買価額の根拠と、売主・買主双方の課税を確認します。

CASE 05|平成10年9月28日裁決

人為的に評価差額を作った取引で通達評価が排斥された事例

概要

借入、会社設立、低額現物出資等により評価差額を作り出したとされました。

判断

評価通達を形式的に適用して法人税額等相当額を控除することは不適当とされました。

実務上の教訓:株価対策は事業目的、経済合理性、一連の取引を説明できることが必要です。

TAX AUDIT

税務署が確認するポイント

贈与の成立

  • 贈与意思・受諾
  • 契約書
  • 株主名簿
  • 議決権・配当の実態

株価評価

  • 株主区分
  • 会社規模・業種
  • 特定評価会社
  • 資産・負債
  • 重要取引

制度・申告

  • 年間贈与額
  • 精算課税届出
  • 承継税制認定・届出
  • 期限・納付
  • 過去異動との整合

税務調査対策は後から資料を作ることではありません。 評価、意思決定、承認、契約、名義書換、申告を同じ事実関係で整えることが基本です。

CHECKLIST

実行前チェックリスト

FAQ

よくあるご質問

自社株式は額面金額で贈与できますか?

贈与税は原則として贈与時の時価で計算します。額面や取得価額がそのまま評価額になるわけではありません。

年間110万円までなら贈与税はかかりませんか?

暦年課税では受贈者の年間贈与合計額が110万円以下なら原則として課税されませんが、他の贈与、定期贈与、相続開始前贈与の加算等を確認します。

毎年少しずつ贈与できますか?

可能ですが、毎年の評価、契約、承認、名義書換が必要です。複数年の贈与を最初から約束すると定期贈与の問題が生じ得ます。

配当還元方式を選べば株価は低くなりますか?

配当還元方式は同族株主以外の株主等に用いる特例方式で、自由に選択できません。

相続時精算課税なら2,500万円まで無税ですか?

贈与時に税負担が生じない場合がありますが、原則として相続時に贈与財産を加算して精算します。完全な非課税制度ではありません。

贈与後に株価が下がった場合は?

相続時精算課税では原則として贈与時価額を基礎に相続時に加算します。下落リスクも踏まえて選択します。

事業承継税制なら贈与税は払わなくてよいですか?

一定要件の下で納税が猶予される制度です。認定、申告、継続届出等が必要です。

会社の承認は必要ですか?

譲渡制限株式の場合は、会社法・定款に従った承認が必要です。

贈与契約書だけで完了しますか?

契約に加え、承認、株主名簿書換、申告、配当・議決権管理まで行います。

親族間で安く売れば贈与税を抑えられますか?

著しく低い価額の場合、買主側に差額の贈与税、売主側に所得税法59条のみなし譲渡課税が問題となる場合があります。

全部の株式を贈与した方がよいですか?

一律ではありません。経営権移転の時期、後継者の経験、他株主、種類株式等を踏まえます。

他の相続人への配慮は必要ですか?

必要です。遺留分や遺産分割に備え、遺言、生命保険、他財産等を検討します。

株価対策後に贈与した方がよいですか?

事業目的と経済合理性を確認します。不自然な一連の取引は通達評価が排斥されるリスクがあります。

贈与税申告はいつまでですか?

原則として翌年2月1日から3月15日までに、受贈者が申告・納税します。

NEXT STEP

自社株式の贈与は、株価計算だけでは終わりません

株価、贈与税、相続税、議決権、他の相続人、 会社法上の手続、事業承継税制、買取方式まで比較します。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木 清子
保有資格税理士・行政書士
専門分野相続税・家族問題・不動産
経歴大手税理士法人において、相続税申告、財産評価、遺産分割、生前対策、相続手続など、数多くの資産税案件に携わった後、佐々木税務会計事務所の共同代表として現在に至ります。 これまで、遺産総額数千万円規模の一般のご家庭から、数百億円規模の資産を有する地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしてまいりました。 相続は、ご家族ごとに抱える事情や想いが異なり、同じ案件は一つとしてありません。 そのため私は、税法や制度だけに目を向けるのではなく、お客様一人ひとりのお話を丁寧にお伺いし、ご家族にとって最適な選択肢をご提案することを何より大切にしています。 相続税申告はもちろん、財産評価、遺産分割、生前対策、遺言書の作成、資産承継など、それぞれのご家庭の状況に応じたきめ細やかなサポートを心掛けています。 また、相続手続が完了した後も、ご家族が安心して生活を送れるよう、資産承継後の見守りや財産管理に関するご相談にも継続して対応しております。 相続は、一度きりの手続きではなく、ご家族のこれからの人生につながる大切な節目です。 だからこそ、お客様の不安に寄り添い、一つひとつの疑問を丁寧に解消しながら、安心して未来へ歩んでいただけるよう、誠実にサポートしてまいります。
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