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収益不動産の生前贈与|建物だけの贈与・家賃収入・土地評価を解説

令和8年(2026年)版・上級実務ガイド
収益不動産の生前贈与は、
建物の名義を変えるだけでは完成しません

アパート、マンション、店舗、事務所などの収益不動産では、建物だけを子へ贈与し、将来の家賃収入を次世代へ移す方法が検討されることがあります。 しかし、家賃収入、費用負担、賃貸借契約、土地利用関係、借入金、所得税、土地評価、相続税の実態が一致していなければ、想定した効果が得られない可能性があります。

結論:所有権・収益・費用・管理・契約・税務申告を一体で設計します。 暦年課税、相続時精算課税、相続まで親が保有する場合を比較し、贈与税だけでなく、贈与後の家賃蓄積額、所得税、土地評価、登録免許税、不動産取得税、将来の相続税まで確認します。
収益不動産の贈与は「不動産の移転」ではなく「収益と承継の設計」です。 誰が所有し、誰が家賃を受け取り、誰が費用を負担し、誰が将来の相続税を納めるのかを整理します。

1.30秒で分かる収益不動産の生前贈与

収益不動産を子・孫へ承継したい
目的は何ですか
家賃収入の移転・納税資金・所得分散・相続財産の増加抑制・管理承継
何を移しますか
建物全部・建物持分・土地建物・取得資金
どの制度を使いますか
暦年課税・相続時精算課税・相続まで保有
土地評価・賃貸借・借入金・所得税・登記費用を確認
将来の家賃蓄積額と相続税まで比較して、実行するか判断します。
建物だけを贈与しても、土地評価が必ず維持されるとは限りません。
贈与前後の所有関係、土地利用関係、既存の賃貸借契約、現実の入居、賃料授受、サブリースの実体などを個別に確認します。

2.収益不動産の贈与で多いご相談

建物だけを子へ贈与したい

土地は親が保有し、建物と家賃収入を子へ移す設計です。

家賃収入を子へ移したい

親の預金増加を抑え、子へ将来の納税・修繕資金を準備します。

土地の評価減を確認したい

貸家建付地、使用貸借、借地権、既存賃借人の権利を整理します。

相続時精算課税を使うべきか

贈与時評価、家賃収入、相続時の持戻しを比較します。

借入金が残っている

債務引受け、負担付贈与、金融機関承諾、譲渡所得を確認します。

持分だけ段階的に贈与したい

贈与税と毎年の登記費用、共有管理、所得按分を確認します。

サブリース後に贈与したい

契約形式だけでなく、現実の貸付けと契約承継を確認します。

法人へ移す場合と比較したい

個人間贈与、法人売却、現物出資等を別ページと連携して比較します。

3.なぜ収益不動産を生前贈与するのか

1
家賃収入を移す

贈与後の家賃収入を子へ帰属させ、親の預金が毎年増加するのを抑えることを検討します。

2
納税資金を準備

将来その不動産を承継する子へ、相続税、修繕、固定資産税等の資金を蓄積させます。

3
管理経験を承継

親が元気なうちに、賃貸経営、管理会社対応、修繕判断を引き継ぎます。

4
相続財産増加を抑制

建物そのものだけでなく、将来の家賃収入が親の相続財産として蓄積する影響を検討します。

5
所得を分散

家族全体の所得税・住民税等を比較します。ただし、社会保険・扶養・各種所得制限も確認します。

「収入づけ」とは

実務でいう「収入づけ」は、単に所得税率の差を利用することではありません。 将来資産を承継する方へ、家賃収入と管理経験を移し、相続税・修繕費・固定資産税・代償金等に備える資金を生前から形成する設計です。

4.建物・持分・土地建物――何を贈与するか

贈与する財産 主な目的 主な注意点
建物全部 家賃収入を全面的に移す 土地利用、賃貸借承継、借入金、費用負担
建物持分 段階的な収入移転 毎年の登記費用、共有管理、所得配分
土地・建物全部 資産全体を承継 贈与税負担、取得税、登録免許税が大きくなりやすい
土地持分・建物持分 共有割合を調整 評価、将来売却、管理意思決定
取得資金 子名義で新規取得 贈与税、資金使途、借入条件
借入金付き不動産 資産・債務を一体承継 負担付贈与、時価評価、金融機関承諾、譲渡所得

5.建物だけを子へ贈与する方法

建物だけ贈与する基本イメージ
贈与前土地+賃貸建物+家賃収入
建物を贈与契約・登記・賃貸人変更・管理移管
贈与後親:土地子:建物・家賃

建物のみを贈与すると、土地の所有権を親に残したまま、建物と将来の家賃収入を子へ移すことができます。 建物の相続税評価額は原則として固定資産税評価額を基礎とし、賃貸中の家屋は貸家として評価されるため、土地建物全部を贈与する場合より贈与税負担を抑えられることがあります。

建物所有者を変えると、土地と建物の所有者が分かれます。
土地を子がどの法律関係で使用するのか、使用貸借か賃貸借か、既存の入居者・サブリース会社の権利がどう継続するかを整理しなければなりません。

名義だけでなく実態を移します

家賃入金

入金口座を子へ変更し、子の収入として管理します。

賃貸人・契約

賃貸人の地位、管理契約、サブリース契約等を確認します。

費用負担

修繕費、管理費、建物固定資産税、保険料等を子が負担します。

税務申告

子が不動産所得を申告し、減価償却費等を計算します。

敷金等

敷金返還債務、前受賃料、未収賃料の承継を整理します。

借入金

債務者・返済者・担保・金融機関契約を確認します。

6.家賃収入を子へ移す「収入づけ」

家賃収入を移す効果
贈与前親の家賃収入が預金として蓄積
建物贈与後子が家賃収入を受領・申告
将来子の納税・修繕・管理資金を形成

高収益物件では、建物評価額だけでなく、今後10年・20年にわたり発生する家賃収入が誰の財産として蓄積するかが重要です。 建物を子へ贈与すると、原則として贈与後の家賃収入は建物所有者である子へ帰属します。

親が家賃を受け取り続ける場合は注意が必要です。
建物名義だけを子へ移しても、親が家賃を管理し、費用を負担し、自由に使用している場合、所得の帰属や贈与の実態が問題となります。

所得分散だけで判断しません

  • 子の所得税・住民税
  • 国民健康保険料・社会保険扶養
  • 青色申告承認申請・事業的規模
  • 消費税の納税義務・インボイス
  • 保育料、奨学金、各種所得制限
  • 将来の相続税納税資金

7.建物だけを贈与した場合の土地評価

ここが、収益不動産の建物贈与で最も慎重な検討を要する論点です。 土地所有者と貸家所有者が同一である典型的な貸家建付地と、土地を親、建物を子が所有する場合とでは、法律関係が異なります。

典型的な貸家建付地

土地所有者が貸家を所有し、その貸家を第三者へ現実に賃貸している土地です。借家人の事実上の敷地利用による制約を考慮して評価します。

親の土地・子の建物

子の土地利用権が使用貸借である場合、その権利価額は原則ゼロとされ、土地が自用地評価となる場面があります。

「建物を贈与する前から賃貸中だったから必ず貸家建付地のまま」と断定することはできません。
贈与前の賃貸関係、借家人の敷地利用上の権利・制約、建物贈与後の土地利用関係、契約承継、賃料授受等を個別に確認します。
実務上の検討

親が土地・賃貸建物を所有し、現実に第三者へ賃貸した後、建物だけを子へ贈与する類型では、贈与前から存在する借家人の敷地利用上の制約が贈与後も継続するかが重要です。 公的通達に明文で一律の結論が示されているわけではないため、個別事実を確認し、申告時に説明できる資料を整えます。

土地利用関係の比較

土地利用関係 一般的な税務上の論点 必要な確認
使用貸借 土地使用権の価額は原則ゼロ。土地は自用地評価となる場面がある 契約、地代、実態、既存賃借人の権利
通常の賃貸借 借地権認定、権利金、地代水準等 契約内容、地代、借地権の帰属
相当の地代 借地権評価・貸宅地評価との関係 相当の地代、届出、地代改定
無償返還届出 主として法人関係で用いられる取扱い 当事者、契約、届出、法人税・相続税評価
既存賃貸借の継続 借家人の敷地利用上の制約が継続するか 入居、賃料、契約承継、土地建物所有関係

8.サブリース・既存賃貸借契約をどう扱うか

収益建物を一括借上げするサブリース契約がある場合、建物贈与に伴い、賃貸人の地位、敷金等の返還債務、賃料、管理権限、契約解除条項等を確認します。

実体ある既存契約の承継が重要です。
贈与前から賃貸借が現実に開始し、建物が引き渡され、賃料支払義務が発生していることなどを確認します。
評価減のためだけに形式的なサブリース契約を作成することは適切ではありません。
契約予約だけ、建物未完成、未引渡し、賃料未発生、実体のない同族間契約などでは、貸家・貸家建付地としての評価が否定される可能性があります。

契約承継で確認する事項

  • 賃貸借・サブリース契約上の地位移転の可否
  • 賃借人・サブリース会社への通知または承諾
  • 敷金・保証金返還債務
  • 未収賃料・前受賃料・滞納金
  • 修繕義務・原状回復義務
  • 管理会社との管理委託契約
  • 家賃保証・マスターリース条件
  • 入居者の現実の使用状況

9.暦年課税・相続時精算課税・相続まで保有の比較

方法 贈与時 贈与後の家賃 相続時 向いている可能性がある例
暦年課税 基礎控除110万円。超過部分に累進税率 子へ帰属 相続開始前贈与加算を確認 評価額が比較的小さい建物・持分を段階移転
相続時精算課税 年110万円の基礎控除、特別控除2,500万円、超過分20% 子へ帰属 原則として贈与時価額を基礎に精算 高収益建物を早期移転し、将来収益を子へ移したい
相続まで保有 贈与税・登記費用なし 親へ帰属し、預金等として蓄積 相続時の建物・土地評価、相続登記 移転費用が効果を上回る、所得移転が不要
相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの将来の贈与は原則として暦年課税へ戻せません。
収益物件だけでなく、その親から今後受ける現金・株式等の贈与も含めて選択します。

10.収益不動産と相続時精算課税

高収益建物の生前贈与では、相続時精算課税が有力な比較対象になります。 令和6年以後は、特定贈与者ごとに年110万円の基礎控除が設けられ、これとは別に累計2,500万円の特別控除があります。

相続時精算課税で確認する効果
贈与時建物評価額で贈与税を計算
贈与後家賃は子へ将来収益を移転
相続時原則として贈与時価額を基礎に精算
相続時精算課税の重要な効果は、建物の評価額を消すことではなく、贈与後に生じる家賃収入を次世代へ移せる点にあります。
建物が値下がりする可能性も確認します。
相続時精算課税は原則として贈与時の価額を相続税計算へ反映するため、贈与後に老朽化・空室化等で評価が下がる資産では、相続まで保有する方が有利な場合があります。

詳細は相続時精算課税の専門ページで解説します。

11.借入金付き物件・負担付贈与

収益不動産に借入金が残っており、子が債務を引き受ける場合は、単純な無償贈与とは異なります。 受贈者が債務を負担する条件の贈与は、負担付贈与となる可能性があります。

土地・建物の負担付贈与は、通常の相続税評価額ではなく、贈与時の通常の取引価額を基礎に計算します。
贈与財産の通常の取引価額から負担額を控除した額が、受贈者の贈与税課税価格となります。
受贈者側
  • 通常の取引価額
  • 引き受ける債務額
  • 贈与税
  • 登録免許税・不動産取得税
  • 返済能力・金融機関審査
贈与者側
  • 負担額で資産を譲渡した扱い
  • 譲渡所得の発生
  • 取得費・減価償却
  • 借入金返済・抵当権
  • 消費税の負担部分
債務者は当事者間の合意だけでは変更できない場合があります。
免責的債務引受け、重畳的債務引受け、連帯保証、抵当権等について、金融機関と事前協議が必要です。

12.贈与時・贈与後に確認する税金と費用

項目 主な取扱い 注意点
贈与税 暦年課税または相続時精算課税 建物・土地・持分の適正評価
登録免許税 贈与による所有権移転は原則2% 固定資産税評価額を基礎。相続登記0.4%との差
不動産取得税 贈与でも原則課税 収益物件は自己居住用住宅の軽減対象外となることが多い
所得税・住民税 贈与後の家賃収入は原則として受贈者 減価償却、必要経費、青色申告、事業税
消費税 無償贈与は原則として対価性なし 負担付贈与、事業用建物、課税事業者、契約承継は個別確認
固定資産税 賦課期日現在の所有者へ課税 実質負担と不動産所得の経費処理を整理
専門家費用 税理士・司法書士・不動産鑑定等 土地評価、契約承継、借入金の複雑性で変動
業務用不動産に係る登録免許税・不動産取得税は、不動産所得の必要経費となる場合があります。
将来売却時の取得費との重複はできないため、会計処理と保存資料を整理します。

13.収益不動産贈与が機能するための成功条件

目的が明確

家賃移転、納税資金、管理承継など目的を文書化します。

3案比較

暦年課税、相続時精算課税、相続まで保有を比較します。

適正評価

建物・土地・貸家・持分を法令通達に沿って評価します。

賃貸関係の実体

入居、引渡し、賃料、契約の継続を確認します。

収支を完全移管

家賃、費用、管理、申告を受贈者へ移します。

土地関係を整理

使用貸借、賃貸借、借地権等を確認します。

借入先と協議

債務・抵当権・保証・契約違反を確認します。

長期試算

贈与後10年程度の家賃・税金・相続財産を比較します。

資料保存

契約書、評価資料、賃貸借、通帳、申告書を保存します。

14.裁決・失敗事例から学ぶ注意点

公表裁決

建物が完成・賃貸開始していないのに貸家建付地評価を主張した事例

国税不服審判所の公表裁決では、相続開始時に建物が建築中で、現実に貸付けの用に供されていなかった土地について、貸家建付地評価が否定されています。 また、賃貸借予約契約があっても、建物が完成しておらず、賃借人への引渡しや賃料支払義務が発生していない場合には、現実の賃貸借とは認められないと判断された事例があります。

失敗の核心
契約書や将来の予定ではなく、課税時期に完成建物が存在し、現実の入居・引渡し・賃料の授受または権利義務が発生しているかが重要です。
公表裁決

親子間の土地利用を賃貸借と主張したが使用貸借と判断された事例

親子間で地代の明確な取決めがなく、固定資産税等に近い金額を負担していたケースについて、土地賃貸借ではなく使用貸借と判断され、土地を自用地として評価すべきとされた公表裁決があります。

失敗の核心
「地代を払っている」と称しても、契約、金額、会計処理、領収書、継続性等から土地使用の対価と認められなければ、使用貸借と判断される可能性があります。
実務上の失敗

建物を贈与した後も、家賃と費用を親が管理していた

登記名義だけを子へ移し、家賃入金口座、管理契約、修繕費、保険料、固定資産税、確定申告が親のままでは、家賃所得の帰属や贈与の実行について説明が困難になります。

実務上の失敗

相続時精算課税の選択後に建物価値が大きく下落した

老朽化や空室化により相続時の建物評価が贈与時より下がっても、相続時精算課税では原則として贈与時の価額を基礎に精算します。 将来の収益移転効果と、建物評価下落リスクを比較する必要があります。

実務上の失敗

借入金を含めて移したが負担付贈与を検討しなかった

債務引受けがある不動産贈与では、時価を基礎とする贈与税、贈与者の譲渡所得、消費税、金融機関承諾など、通常の無償贈与とは異なる論点が生じます。

15.税務署はここを確認します

贈与の実行

契約、登記、引渡しが実行されたか。

家賃の帰属

誰の口座へ入り、誰が自由に使用したか。

費用の負担

修繕、管理、保険、固定資産税を誰が払ったか。

管理の実態

管理会社との契約・指示権限は誰にあるか。

土地利用関係

使用貸借、賃貸借、地代、借地権を確認。

賃貸の実体

入居、引渡し、賃料発生、空室状況。

財産評価

建物・土地・貸家・持分評価は適正か。

借入金

債務者、返済者、担保、負担付贈与の有無。

申告の整合

贈与税、所得税、消費税、相続税の説明が一致するか。

16.税理士が設計するポイント

贈与目的

家賃移転か、相続税か、管理承継かを明確にします。

移転対象

建物全部、持分、土地建物のどれが合理的か。

制度選択

暦年課税、相続時精算課税、相続を比較します。

長期収支

今後の家賃、空室、修繕、税金を試算します。

土地評価

贈与前後の貸家建付地・使用貸借等を整理します。

借入金

負担付贈与、債務引受け、金融機関条件を確認します。

将来売却

取得費・減価償却・譲渡所得は別ページと連携します。

家族間配分

他の子への財産、遺留分、代償金を確認します。

証拠資料

評価、契約、賃貸借、通帳、申告の保存方法を決めます。

17.収益不動産贈与・設計チェックシート

このチェックシートは、贈与の適否や税務上の効果を保証するものではありません。 相談前の整理と、確認漏れを防ぐためのものです。

  • 贈与の目的を明確にした
  • 建物全部・持分・土地建物を比較した
  • 暦年課税・相続時精算課税・相続を比較した
  • 贈与後10年程度の家賃収入を試算した
  • 親の将来の相続財産減少額を試算した
  • 子の所得税・住民税・社会保険を確認した
  • 建物・土地の適正評価を行った
  • 貸家建付地評価への影響を確認した
  • 使用貸借・賃貸借・地代を整理した
  • 既存の入居・サブリースの実体を確認した
  • 家賃入金口座の変更を準備した
  • 管理契約・賃貸借契約の承継を確認した
  • 敷金・保証金・未収賃料を整理した
  • 修繕費・固定資産税等の負担者を決めた
  • 借入金と金融機関承諾を確認した
  • 負担付贈与に該当しないか確認した
  • 登録免許税・不動産取得税を試算した
  • 消費税の課税関係を確認した
  • 将来の売却・建替え予定を確認した
  • 贈与後の確定申告体制を準備した
17~20項目:主要論点の準備が進んでいます。契約・登記・申告の最終確認へ進みます。
12~16項目:土地評価、賃貸借、借入金、制度比較に確認事項が残っています。
11項目以下:建物の名義変更を先行せず、収益・費用・土地・債務・税務を一体で設計してください。

18.検討から実行までの流れ

STEP 1 土地・建物・賃貸借・借入金資料を収集
STEP 2 贈与目的と承継者を決定
STEP 3 暦年課税・相続時精算課税・相続を試算
STEP 4 建物・土地・貸家・持分を評価
STEP 5 土地利用・賃貸借・サブリースを整理
STEP 6 借入金・金融機関・担保を確認
STEP 7 税金・登記・専門家費用を比較
STEP 8 贈与契約・所有権移転登記
STEP 9 家賃・費用・管理・契約を受贈者へ移管
STEP 10 贈与税・所得税・消費税の申告を実施

主な確認資料

  • 登記事項証明書、公図、測量図、建物図面
  • 固定資産税課税明細書・評価証明書
  • 賃貸借契約書・サブリース契約書・管理委託契約書
  • 入居者一覧・家賃明細・空室状況
  • 借入金残高証明書・金銭消費貸借契約書・抵当権資料
  • 過去の確定申告書・青色申告決算書・減価償却明細
  • 修繕履歴・長期修繕計画・保険契約
  • 家賃入金通帳・敷金等の管理資料

19.収益不動産の生前贈与に関するよくある質問

Q1.建物だけを子へ贈与できますか。
可能です。ただし、土地利用関係、賃貸借契約、家賃・費用の帰属、借入金、土地評価への影響を確認します。
Q2.建物を贈与すれば、家賃収入は自動的に子のものになりますか。
原則として建物所有者へ帰属しますが、入金口座、賃貸人、管理契約、費用負担、申告の実態を一致させる必要があります。
Q3.親が土地を持ち、子が建物を持つ場合、土地は貸家建付地ですか。
一律には判断できません。使用貸借なら土地が自用地評価となる場面があり、既存賃貸借が継続する類型では借家人の敷地利用上の制約等を個別に検討します。
Q4.サブリース契約を結べば土地評価を維持できますか。
契約形式だけでは足りません。建物の完成・引渡し、現実の賃貸開始、賃料発生、契約当事者の実体、贈与後の承継を確認します。
Q5.空室の建物を贈与しても貸家評価になりますか。
空室の事情、期間、継続募集等によって判断されます。恒常的な空室や貸付実体がない場合は貸家・貸家建付地評価が認められない可能性があります。
Q6.建物持分を毎年110万円ずつ贈与できますか。
評価上は可能ですが、毎年の贈与契約、登記費用、共有管理、家賃・経費按分、定期贈与の問題を比較します。
Q7.相続時精算課税は高収益物件に向いていますか。
贈与後の家賃収入を子へ移せる点は有力ですが、建物価値の下落、制度選択の継続、相続時の精算を含めて判断します。
Q8.相続時精算課税を使えば相続税がなくなりますか。
なくなる制度ではありません。原則として贈与時価額を相続税計算へ反映し、既納贈与税を精算します。
Q9.借入金も子へ移せますか。
金融機関の承諾が必要となる場合があります。また、債務引受けにより負担付贈与となる可能性があります。
Q10.負担付贈与では建物を固定資産税評価額で評価できますか。
土地・家屋等の負担付贈与は、通常の取引価額を基礎に計算します。相続税評価額だけで計算しない点に注意が必要です。
Q11.贈与者にも所得税がかかりますか。
無償贈与では通常の譲渡所得課税はありませんが、負担付贈与では負担額による譲渡として譲渡所得が生じる場合があります。
Q12.不動産取得税はかかりますか。
贈与による不動産取得も原則として課税対象です。収益物件は自己居住用住宅の軽減を利用できないことが多いため、都道府県へ確認します。
Q13.登録免許税はいくらですか。
贈与による所有権移転登記は、原則として固定資産税評価額の2%です。実行時点の税率を確認してください。
Q14.贈与後の減価償却はどうなりますか。
受贈者が贈与者の取得価額や取得時期等を引き継いで計算するのが基本です。過去の減価償却明細を保存してください。
Q15.家賃の入金口座だけ子名義にすればよいですか。
口座変更だけでは足りません。所有権、賃貸人、管理、費用負担、申告の実態を一致させます。
Q16.贈与後にすぐ売却してもよいですか。
可能ですが、取得費・所有期間・減価償却・譲渡所得・贈与目的等を確認します。詳細は「贈与後の不動産売却」ページで扱います。
Q17.法人へ移した方がよいですか。
個人間贈与とは課税関係が大きく異なります。売買、現物出資、法人設立、所得税・法人税・消費税・融資を比較します。
Q18.親が認知症になる前に建物を贈与した方がよいですか。
意思能力があるうちの承継は重要ですが、認知症対策だけで贈与を決めず、家族信託、任意後見、遺言等と比較します。
Q19.贈与契約書は必要ですか。
不動産贈与では契約内容、所有権移転日、費用負担、賃貸借・敷金等の承継を明確にするため作成します。
Q20.収益物件の贈与は必ず相続税対策になりますか。
必ず有利になるわけではありません。贈与税、登記・取得税、所得税、土地評価、建物価値の下落、相続まで保有する場合を比較します。

20.当事務所の考え方

建物の名義を移すだけでは、収益不動産の承継は完成しません。 所有、収益、費用、管理、契約、債務、税務申告の実態を一致させます。

佐々木税務会計事務所では、「建物だけを贈与すれば相続税対策になります」「サブリース契約を結べば土地評価を維持できます」といった一律のご案内は行いません。

収益不動産の承継では、建物評価額よりも、将来の家賃収入、土地評価、賃貸借契約、借入金、移転費用、所得税、相続時精算課税、相続まで保有する場合との比較が重要です。 法令・通達・裁決と実際の契約・入居・資金の流れに基づき、説明できる設計をご提案します。

税理士コメント

高収益物件の建物だけを次世代へ移す方法は、将来の家賃収入と納税資金を承継する有力な選択肢になり得ます。 一方で、土地と建物の所有者が分かれるため、土地評価、使用貸借、賃貸借、借入金、将来の売却が複雑になります。 当事務所では、目先の贈与税だけでなく、10年後・相続時までを見据えて判断します。

21.関連する専門ページ

収益不動産の贈与は、将来の家賃収入と相続まで含めて比較します

建物だけを贈与する場合、相続時精算課税を使う場合、相続まで保有する場合について、 贈与税、所得税、土地評価、借入金、登録免許税、不動産取得税、将来の相続税を総合的に試算します。

収益不動産の贈与を相談する 生前贈与を概算比較する

22.根拠法令・参考資料

  • 相続税法第7条、第9条、第21条の2、第21条の9以下
  • 所得税法第60条
  • 相続税法基本通達9-11、21の2-4等
  • 財産評価基本通達26(貸家建付地)、93(貸家)等
  • 国税庁 タックスアンサー No.4614「貸家建付地の評価」
  • 国税庁 タックスアンサー No.4553「使用貸借に係る土地を贈与により取得したとき」
  • 国税庁 タックスアンサー No.4426「負担付贈与に対する課税」
  • 国税庁 タックスアンサー No.4423「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
  • 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2215「固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合」
  • 国税不服審判所 公表裁決事例(貸家建付地・使用貸借・低額譲受け)

本ページは、公的機関の法令・通達・タックスアンサー・公表裁決を基礎資料とし、他の専門事務所が公表する設計類型も比較研究した上で作成しています。 他社事例は法的根拠として引用せず、一般的な相談類型の把握に利用しています。 税率・制度・地方税の軽減は、実行時点の最新情報をご確認ください。

監修・更新情報

監修:佐々木税務会計事務所

最終更新:令和8年8月

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
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