暦年課税と相続時精算課税はどちらが有利?違いと選び方を税理士が比較
どちらが有利かは一律に決まりません
令和6年から相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられたため、両制度の違いは以前より分かりにくくなりました。 制度を選ぶときは、贈与税だけでなく、相続税、贈与期間、財産の値動き、贈与後の収益、申告手続、撤回の可否まで比較します。
1.暦年課税と相続時精算課税の全体像
- 受贈者ごとに年110万円の基礎控除
- 基礎控除後の金額に10%から55%の累進税率
- 贈与額・時期・相手を毎年柔軟に決めやすい
- 一定期間内の贈与は相続税へ加算される場合がある
- 受贈者ごとに年110万円の基礎控除
- 贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除
- 特別控除超過部分は一律20%
- 同じ贈与者について一度選ぶと暦年課税へ戻れない
暦年課税の110万円は、その年に受けた暦年課税の贈与全体に対する受贈者ごとの基礎控除です。 相続時精算課税の110万円も受贈者ごとの年額であり、同一年に複数の特定贈与者がいる場合は、各特定贈与者からの贈与額に応じて按分します。
2.暦年課税と相続時精算課税の違いを比較
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 年110万円の基礎控除 | 受贈者ごとに年110万円 | 受贈者ごとに年110万円。複数の特定贈与者がいる場合は按分 |
| 基礎控除を超えた部分 | 10%から55%の累進税率 | 累計2,500万円の特別控除後、超過部分に20% |
| 2,500万円の特別控除 | なし | 贈与者ごとに累計2,500万円 |
| 相続時の取扱い | 一定期間内の贈与を贈与時価額で加算 | 年110万円控除後の適用財産を原則として贈与時価額で加算 |
| 制度選択の対象者 | 原則として贈与者・受贈者の年齢や続柄による制限なし | 原則として60歳以上の父母・祖父母等から、18歳以上の推定相続人である子・孫等への贈与 |
| 申告 | 通常、年間贈与額が110万円以下なら不要 | 初年度は選択届出書が必要。年110万円を超える場合等は贈与税申告も必要 |
| 翌年以後の制度変更 | 要件を満たせば、将来、相続時精算課税を選択できる | 同じ贈与者について暦年課税へ戻れない |
| 贈与財産 | 種類・金額・回数に原則として制限なし | 種類・金額・回数に原則として制限なし |
| 一般的な検討場面 | 少額贈与を毎年柔軟に続ける、複数人へ分散する | まとまった財産を早期に移す、値上がり・収益移転を検討する |
※上表は一般的な制度比較です。個別の有利不利を判定するものではありません。
3.最も大きな違いは、贈与者の相続時の取扱いです
相続税へ加算
原則としてすべて相続税へ加算
令和6年1月1日以後の贈与について、加算期間は相続開始時期に応じて3年から7年へ段階的に延長されます。 完全な7年加算となるのは、令和13年1月1日以後に開始する相続です。
選択後に受けた相続時精算課税適用財産は、年110万円の基礎控除後の金額を、原則として贈与時価額で相続税の課税価格へ加算します。
4.対象者と、選択後に変更できるか
ただし、制度は贈与者ごとに選択します。 父からの贈与について相続時精算課税を選び、母からの贈与について暦年課税を利用することは可能です。
5.暦年課税を検討しやすいケース
贈与者が比較的若く、毎年の贈与を長く継続できる可能性がある場合。
子・孫など複数の受贈者へ贈与し、それぞれの暦年課税の基礎控除を活用したい場合。
財産状況、生活費、家族関係を確認しながら、その都度贈与額を決めたい場合。
孫などが相続・遺贈等で財産を取得しない場合、生前贈与加算の対象外となる可能性を検討する場合。
将来の税制、財産、家族関係が不確定で、撤回できない制度選択を避けたい場合。
将来の相続税率と比較し、年110万円を超える贈与を計画的に行う場合。
6.相続時精算課税を検討しやすいケース
住宅資金、事業資金、資産管理の移行などのため、早期に多額の財産を移転したい場合。
贈与者が高齢で、暦年課税による贈与を長期継続することが難しい場合。
将来の価額上昇が見込まれ、贈与時の価額で相続税計算へ反映させることを検討する場合。
収益不動産や株式など、贈与後に生じる賃料・配当を受贈者へ移したい場合。
相続税の基礎控除内に収まる見込みで、贈与時の税負担を抑えて早期移転したい場合。
令和6年以後の年110万円部分を、原則として相続時にも加算しない取扱いを利用したい場合。
贈与者の生活資金、制度の撤回不可、財産の値下がり、不動産取得税・登録免許税、将来の家族関係も確認します。
7.財産の種類によって選び方が変わります
| 財産 | 暦年課税で検討する点 | 相続時精算課税で検討する点 |
|---|---|---|
| 現金・預金 | 毎年の贈与額を調整しやすく、複数人へ分散しやすい | 住宅資金・事業資金など、まとまった金額を早期に移しやすい |
| 上場株式 | 毎年一部ずつ贈与し、値動きを分散できる | 贈与後の値上がり・配当移転を期待できるが、値下がりリスクがある |
| 非上場株式 | 株価と贈与税率を見ながら段階的に承継できる | 株価上昇前の早期移転に使える可能性があるが、経営権・議決権も検討 |
| 土地・建物 | 持分を毎年贈与すると登記・評価・共有が複雑になりやすい | 一括移転しやすいが、登録免許税、不動産取得税、小規模宅地等の特例に注意 |
| 収益不動産 | 建物や持分の段階移転を検討できるが、管理が複雑になり得る | 賃料収入を早く移せるが、借入金・敷金・修繕・所得税も確認 |
贈与では相続より登録免許税率が高く、不動産取得税が生じることがあります。 また、贈与した土地について、贈与者の相続時に小規模宅地等の特例を利用できないことが一般的です。
8.贈与者の年齢と、贈与できる期間から考える
長期の暦年贈与を検討しやすい
暦年課税の分散効果を検討
精算課税または多額贈与も比較
相続税・生活資金・財産別に試算
年齢だけで制度を決めるものではありませんが、贈与できる期間は重要です。 暦年課税は長期間・複数人へ贈与するほど効果が積み上がりやすい一方、相続時精算課税は早期にまとまった財産を移しやすい制度です。
9.ケース別に見る制度選択の考え方
贈与額を毎年調整でき、複数人へ分散できるため、暦年課税を比較しやすいケースです。 ただし、相続開始前贈与加算と贈与者の生活資金を確認します。
住宅取得等資金の非課税、相続時精算課税、暦年課税を組み合わせて比較します。 期限内申告、住宅要件、受贈者の所得要件などの確認が必要です。
相続時精算課税により贈与時価額で相続税計算へ反映させる方法を検討できます。 ただし、値下がりした場合も原則として贈与時価額で加算されます。
相続時精算課税による早期移転が候補になりますが、不動産取得税、登録免許税、借入金、敷金、将来売却、小規模宅地等の特例を比較します。
相続時精算課税により贈与時の負担を抑えられる場合があります。 ただし、選択後に撤回できない点と贈与者の生活資金を確認します。
暦年課税では、孫が相続・遺贈や死亡保険金を取得するかにより生前贈与加算が変わります。 相続時精算課税を選ぶ場合は、孫も対象となり得ますが相続時に精算します。
10.制度選択で判断を誤りやすい例
相続時精算課税の特別控除を使って贈与税が0円でも、年110万円控除後の適用財産は原則として相続時に加算されます。
相続税率、贈与期間、受贈者数によっては、贈与税を負担して110万円を超える贈与をした方が有利な場合があります。
同じ贈与者について、選択後に暦年課税へ戻ることはできません。
孫など相続・遺贈等で財産を取得しない人への暦年贈与や、贈与税を負担する贈与の方が適することもあります。
値下がり、登録免許税、不動産取得税、小規模宅地等の特例、借入金、将来の譲渡まで検討します。
相続税、所得税、住民税、社会保険、不動産諸税、譲渡所得税、家族関係を含めて総合判断します。
11.制度を選ぶための実務フロー
12.暦年課税と相続時精算課税のよくある質問
Q1.結局、どちらの方が相続税を減らせますか。
Q2.相続時精算課税にも毎年110万円ありますか。
Q3.父は相続時精算課税、母は暦年課税にできますか。
Q4.一度選んだ相続時精算課税を暦年課税へ戻せますか。
Q5.相続税がかからない場合は相続時精算課税が有利ですか。
Q6.不動産はどちらの制度が向いていますか。
Q7.暦年課税で毎年110万円を贈与するのが最も安全ですか。
Q8.相続時精算課税の2,500万円は毎年使えますか。
Q9.両制度を同じ年に使えますか。
Q10.制度を選ぶ前に何を準備すればよいですか。
13.関連する生前贈与ページ
※「#」のリンクは、専門ページ公開後に正式URLへ差し替えてください。
当事務所では、暦年課税、相続時精算課税、各種特例について、贈与税・相続税・不動産諸税・将来の譲渡まで含めて検討します。
生前贈与について相談する 相続税を概算する監修・更新情報
監修:佐々木税務会計事務所
最終更新:令和8年8月
本ページは一般的な制度比較を説明するものです。 個別の適用関係は、贈与日、相続開始日、当事者の年齢・関係、財産内容、過去の届出・申告状況等により異なります。

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