面談予約はこちら
予約専用ダイヤル

0422-07-5393

受付時間:9:00~18:00(平日)

不動産の生前贈与|贈与税・登記費用・相続との違いを解説

令和8年(2026年)版
不動産の生前贈与は、
贈与税だけで判断してはいけません

不動産を子や孫へ生前贈与すると、財産と将来の収益を早期に移せる一方、贈与税、登録免許税、不動産取得税、登記費用が発生します。 さらに、小規模宅地等の特例、将来売却時の譲渡所得、借入金、共有関係まで確認する必要があります。

結論:不動産は「贈与した場合」と「相続まで保有した場合」を必ず比較します。 贈与税が0円でも、登記や不動産取得税を含めると相続より負担が大きくなる場合があります。 一方、値上がりが見込まれる土地、賃料を生む建物、事業承継上早期に移す必要がある不動産では、生前贈与が有効な場合があります。

1.不動産の生前贈与とは

不動産の生前贈与とは、土地、建物、マンション、賃貸不動産、共有持分などを、所有者が存命中に無償で他の人へ移転することです。 贈与契約を締結し、法務局で所有権移転登記を行います。

不動産贈与で動くもの
所有権贈与者から受贈者へ移転
収益・費用賃料、固定資産税、修繕、管理
将来の税務相続税、譲渡所得、取得費
名義だけを変える手続ではありません。
贈与後は、原則として受贈者が所有者となり、売却、賃貸、担保設定、管理などの権限と責任を持ちます。

2.不動産の生前贈与でかかる主な税金・費用

1
贈与税

原則として受贈者に課税されます。暦年課税または相続時精算課税により計算します。

2
登録免許税

所有権移転登記時に課税されます。贈与による所有権移転は、原則として固定資産税評価額に対して2%です。

3
不動産取得税

受贈者に課税されます。住宅・住宅用土地には軽減措置が適用できる場合があります。

4
司法書士等の費用

登記申請、戸籍・評価証明書等の取得、契約書作成などの実費・報酬が生じます。

5
贈与税申告費用

土地評価、賃貸割合、借地権、マンション評価などが複雑な場合、税理士報酬が生じます。

6
将来の譲渡所得税

受贈者が売却すると、原則として贈与者の取得費・取得時期を引き継いで計算します。

項目 生前贈与 相続
登録免許税 原則2% 相続による所有権移転は原則0.4%
不動産取得税 原則として課税 相続による取得は原則として非課税
贈与税・相続税 贈与税。精算課税では相続時に精算 相続税
小規模宅地等の特例 贈与した土地には原則適用不可 相続・遺贈で取得し要件を満たせば適用可能

※税率・軽減措置は、不動産の種類、取得日、所在地、用途等により異なります。実行時点の法令・自治体制度を確認します。

3.不動産の贈与税評価は、売買価格とは異なります

一般的な評価方法
路線価地域の土地路線価方式路線価×地積を基礎に各種補正
倍率地域の土地倍率方式固定資産税評価額×評価倍率
建物固定資産税評価額貸家の場合は借家権割合等を反映
  • 賃貸土地は、借地権・借家権・賃貸割合などを反映することがあります
  • 不整形地、間口狭小、奥行長大、がけ地、セットバックなどの補正があります
  • マンションは、土地部分と建物部分を評価し、一定の居住用区分所有財産には補正があります
  • 共有持分は、不動産全体を評価したうえで持分割合を反映します
借入金付きの不動産を贈与する場合は、通常の相続税評価額で計算しないことがあります。
負担付贈与や個人間の対価を伴う取引では、土地・建物を通常の取引価額により評価する取扱いがあるため、特に注意が必要です。

4.暦年課税と相続時精算課税のどちらを使うか

比較項目 暦年課税 相続時精算課税
年110万円 受贈者ごとの基礎控除 受贈者ごとの基礎控除。複数の特定贈与者がいる場合は按分
税率 10%から55%の累進税率 2,500万円特別控除後の超過部分に20%
相続時 一定期間内の贈与を加算 年110万円控除後の適用財産を原則として贈与時価額で加算
制度変更 将来、精算課税を選択可能 同じ贈与者について暦年課税へ戻れない
不動産との相性 持分を段階移転できるが、毎回登記費用が生じる まとまった不動産を一度に移しやすいが、撤回不可・値下がりに注意
相続時精算課税では、贈与後に値上がりした場合でも、原則として贈与時の価額で相続税計算へ反映されます。 反対に、贈与後に値下がりしても原則として贈与時価額で加算されるため、常に有利とは限りません。

5.不動産は、贈与と相続のどちらが有利か

比較する5つの視点
①移転時の税金贈与税・相続税
②登記・取得税登録免許税・不動産取得税
③相続特例小規模宅地等の特例
④将来収益賃料・所得移転
⑤将来売却取得費・譲渡税
生前贈与が候補となる場面
  • 将来の値上がりが見込まれる
  • 賃料収入を早期に次世代へ移したい
  • 後継者へ管理を早期に引き継ぎたい
  • 相続税がかからない見込みで早期移転したい
  • 住宅取得や事業承継上、今移す必要がある
相続まで保有する方が候補となる場面
  • 小規模宅地等の特例を使える可能性が高い
  • 登録免許税・不動産取得税を抑えたい
  • 贈与者の住まい・生活収入として必要
  • 将来の売却・利用方針が決まっていない
  • 借入金・共有・権利関係が複雑

6.贈与した土地には、小規模宅地等の特例を原則として使えません

小規模宅地等の特例は、相続または遺贈により取得した一定の宅地等について、要件を満たした場合に適用される制度です。 生前贈与により取得した土地は、相続税の課税価格へ加算される場合であっても、その贈与土地自体について特例を適用することはできません。

相続時精算課税で贈与した土地も同じです。
相続時に贈与時価額を相続税へ加算しても、その土地は相続または遺贈により取得した財産ではないため、小規模宅地等の特例の対象になりません。
自宅土地を贈与する前の比較
生前贈与早期移転できる
ただし特例は原則使えない
VS
相続要件を満たせば
一定面積まで大幅減額の可能性

7.収益不動産を生前贈与する場合

収益不動産の贈与で移るもの
所有権土地・建物・持分
収入賃料・更新料など
支出・責任修繕・税金・管理
賃料収入の移転

贈与後の賃料は原則として受贈者の不動産所得となります。贈与者の所得税・住民税が下がる一方、受贈者側で課税されます。

建物だけを贈与する方法

土地を親、建物を子とする方法がありますが、地代、使用貸借、借地権、賃貸借契約、敷金、修繕負担を整理します。

借入金の処理

不動産だけ贈与して借入金を親に残すのか、債務を引き継ぐのかにより、課税・金融機関手続・負担付贈与の問題が変わります。

  • 賃貸借契約上の賃貸人変更
  • 敷金・保証金返還債務の承継
  • 管理会社・入居者・保証会社への通知
  • 減価償却費の未償却残高と耐用年数
  • 固定資産税、修繕、火災保険、管理費の負担
  • 消費税の課税関係
  • 所得税・住民税・社会保険への影響

8.借入金付き不動産と負担付贈与

受贈者が借入金やその他の債務を引き受けることを条件に不動産を贈与すると、負担付贈与に該当することがあります。

負担付贈与の基本
不動産の通常の取引価額原則として時価で評価
受贈者が負担する債務借入金等
受贈者の贈与税課税価格差額に課税
贈与者にも譲渡所得課税が生じる可能性があります。
負担付贈与では、贈与者は受贈者が負担する債務額で不動産を譲渡したものとして扱われ、譲渡益が生じると所得税・住民税の対象となります。

金融機関の承諾なく債務者を変更できないことが多いため、税務だけでなく融資契約と担保設定を事前に確認します。

9.贈与を受けた不動産を将来売却するとき

取得費と取得時期は、原則として贈与者から引き継ぎます
贈与者の購入価額等購入代金・手数料等
受贈者へ引継ぎ取得費・取得時期
将来売却売却代金-取得費-譲渡費用
  • 贈与時の相続税評価額が、将来売却時の取得費になるわけではありません
  • 贈与者が取得したときの購入契約書、領収書、建築資料等を引き継ぎます
  • 取得時期も引き継ぐため、長期譲渡・短期譲渡の判定に影響します
  • 受贈者が贈与取得時に支払った一定の登記費用・不動産取得税等は、取得費に算入できる場合があります
  • 取得費が不明な場合は概算取得費を使うことがありますが、不利になる可能性があります
近く売却する予定の不動産は、贈与前に譲渡所得を試算してください。
贈与税が低くても、取得費が低い不動産では将来の譲渡所得税が大きくなることがあります。

10.不動産の種類ごとの注意点

自宅の土地・建物

配偶者控除、小規模宅地等の特例、居住権、老後の住まい、将来売却の3,000万円控除などを比較します。

更地

収益を生まない一方、固定資産税負担があります。将来の建築・売却・共有回避を含めて判断します。

貸宅地・借地権

借地権割合、貸宅地評価、地代、名義変更承諾、地主・借地人との契約を確認します。

賃貸アパート・マンション

賃料、借入金、敷金、修繕、減価償却、管理、消費税、小規模宅地等の特例を確認します。

区分マンション

令和6年以後の居住用区分所有財産の評価、管理費・修繕積立金、賃貸状況を確認します。

共有持分

持分だけ贈与すると管理・売却・担保設定に他共有者との調整が必要です。共有解消も同時に検討します。

11.不動産を生前贈与する手続の流れ

STEP 1 登記、固定資産税課税明細、賃貸借、借入金を確認
STEP 2 相続税評価額、時価、将来収益、譲渡所得を整理
STEP 3 贈与した場合と相続した場合の税金・費用を比較
STEP 4 暦年課税・相続時精算課税・配偶者控除等を選択
STEP 5 贈与契約書を作成し、金融機関・共有者等と調整
STEP 6 所有権移転登記、賃貸人変更、管理引継ぎを実行
STEP 7 贈与税申告・届出・不動産取得税等へ対応
主な確認資料
  • 登記事項証明書、公図、測量図、建物図面
  • 固定資産税課税明細書、固定資産評価証明書
  • 賃貸借契約書、レントロール、敷金一覧
  • 借入金残高証明書、金銭消費貸借契約書、抵当権資料
  • 購入時の売買契約書、建築請負契約書、領収書
  • 管理費・修繕費・固定資産税・保険料の資料

12.不動産の生前贈与に関するよくある質問

Q1.不動産は110万円ずつ持分贈与できますか。
可能ですが、毎年評価、契約、登記、登録免許税、司法書士費用が生じます。共有持分が細分化するため、税額だけでなく管理・売却のしやすさも確認します。
Q2.相続時精算課税なら、不動産2,500万円まで無税ですか。
贈与時に特別控除を使って贈与税が0円となることはありますが、年110万円控除後の適用財産は原則として贈与者の相続時に贈与時価額で加算されます。完全な非課税制度ではありません。
Q3.不動産を贈与すると不動産取得税はかかりますか。
原則として受贈者に課税されます。住宅や住宅用土地には一定の軽減措置があるため、所在地の都道府県へ確認します。
Q4.贈与と相続では登録免許税が違いますか。
一般に、贈与による所有権移転は固定資産税評価額の2%、相続による所有権移転は0.4%です。個別の軽減・非課税措置がある場合は別途確認します。
Q5.贈与した土地に小規模宅地等の特例は使えますか。
原則として使えません。相続時精算課税や生前贈与加算により相続税へ加算されても、その土地自体は相続・遺贈により取得した財産ではないためです。
Q6.建物だけ子へ贈与できますか。
可能です。ただし、土地の使用関係、地代、使用貸借、借地権、賃貸借契約、敷金、借入金、修繕負担を整理する必要があります。
Q7.借入金も子へ引き継げば贈与税を減らせますか。
負担付贈与となる可能性があり、不動産を通常の取引価額で評価するほか、贈与者に譲渡所得課税が生じる場合があります。金融機関の承諾も必要です。
Q8.贈与を受けた不動産を売るときの取得費は贈与時評価額ですか。
原則として違います。贈与者の購入代金等を基にした取得費と取得時期を受贈者が引き継ぎます。
Q9.賃貸不動産を贈与すると、過去の賃料も子の所得になりますか。
原則として、贈与後に権利が確定する賃料が受贈者の所得です。贈与日前後の賃料、未収賃料、敷金等は契約・会計上の整理が必要です。
Q10.自宅は配偶者へ2,110万円まで非課税で贈与できますか。
婚姻期間20年以上などの要件を満たす場合、配偶者控除2,000万円と暦年課税の基礎控除110万円を利用できることがあります。ただし、登録免許税・不動産取得税、相続時の配偶者税額軽減との比較が必要です。

13.関連する生前贈与ページ

不動産の贈与・相続・売却を表で比較します

当事務所では、贈与税・相続税だけでなく、登録免許税、不動産取得税、小規模宅地等の特例、賃料収入、将来の譲渡所得まで一体で検討します。

不動産の生前贈与を相談する 生前贈与を概算比較する

監修・更新情報

監修:佐々木税務会計事務所

最終更新:令和8年8月

本ページは一般的な制度の概要を説明するものです。実際の課税・登記・金融機関手続は、不動産の用途、所在地、権利関係、借入金、当事者の関係等により異なります。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
専門家紹介はこちら