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保証債務は相続される?連帯保証人の死亡・相続放棄・相続税を解説

保証債務は相続される?連帯保証人の死亡・調査方法・相続放棄・相続税を解説

亡くなった方が、会社、親族、知人などの借入れについて 保証人または連帯保証人になっていた場合、 その保証債務は、原則として相続の対象となる可能性があります。

保証債務は、通常の借入金と異なり、 預金通帳や固定資産税の資料だけでは発見できないことがあります。

主債務者が返済を続けている間は、 保証人やその相続人に請求が来ないこともあります。 そのため、相続手続が終わってから数か月または数年後に、 主債務者の倒産、返済停止などをきっかけとして、 金融機関や保証会社から突然請求を受けることがあります。

もっとも、 「被相続人が保証人だった」 というだけで、直ちに相続人全員が債務全額を支払うことになるとは限りません。

次の事項を分けて確認する必要があります。

・保証契約が有効に成立しているか
・保証の対象となる主債務はいくらか
・保証債務が相続開始時に存在していたか
・共同相続人間でどのように承継されるか
・相続放棄または限定承認を検討できるか
・主債務者へ求償できるか
・相続税の債務控除を適用できるか

このページでは、保証債務と連帯保証債務の相続、 保証契約の調査方法、債権者から請求を受けた場合の対応、 相続放棄・限定承認との関係、 相続税申告における債務控除について解説します。

保証会社・金融機関から請求が届いたら、直ちに支払わないでください

請求書、督促状、保証契約書、封筒などを保管し、 債務を認める書面への署名、分割返済の約束、一部弁済をする前に、 弁護士へ相談してください。 相続放棄、消滅時効、保証契約の有効性などに影響する可能性があります。

保証債務とは

保証債務とは、主債務者が債務を履行しない場合に、 保証人が主債務者に代わって履行する責任を負う債務です。

例えば、会社が金融機関から借入れを行い、 その会社の代表者が個人で保証人となるケースがあります。

この場合の関係は、一般的に次のようになります。

債権者
金融機関、保証会社、取引先など

主債務者
実際に借入れや取引を行った会社・個人

保証人
主債務者が支払わない場合に、一定の責任を負う人

保証人が死亡した場合でも、 既に成立している保証債務が当然に消滅するわけではありません。

保証契約の内容、保証の種類、契約時期、 主債務の内容などを確認した上で、 相続の対象となる範囲を判断する必要があります。

保証人と連帯保証人の違い

一般の保証人と連帯保証人では、 債権者から請求を受けた際の法的な立場が異なります。

一般の保証人

一般の保証人には、一定の要件の下で、 次の権利が認められることがあります。

・まず主債務者へ請求するよう求める権利
・主債務者に弁済能力があり、執行が容易であることを証明して、先に主債務者の財産へ執行するよう求める権利
・保証人が複数いる場合に、一定の範囲で負担を分ける取扱い

ただし、契約内容や法律上の例外によって、 これらを主張できない場合があります。

連帯保証人

連帯保証人には、一般の保証人と比べて重い責任があります。

債権者は、主債務者へ先に請求することなく、 連帯保証人へ請求できる場合があります。

また、主債務者に財産があることを理由として、 連帯保証人が当然に支払を拒めるわけではありません。

実務上、金融機関からの事業融資、 不動産賃貸借、会社の取引保証などでは、 連帯保証となっているケースが多いため、 契約書の表題だけでなく条項の内容を確認する必要があります。

保証債務は相続されますか?

被相続人が負担していた保証債務は、 一身専属的な性質を有する特別な場合を除き、 原則として相続の対象となり得ます。

したがって、相続人が単純承認をした場合には、 預貯金、不動産などの積極財産だけでなく、 保証債務を含む消極財産も承継する可能性があります。

保証人が死亡した時点で主債務者が正常に返済しており、 債権者から保証人へ請求が行われていなかったとしても、 保証債務が存在しないとは限りません。

将来、主債務者が返済できなくなった場合に、 相続人へ請求が行われる可能性があります。

「死亡時に請求が来ていなかった」 「主債務者が返済中だった」 という事情だけで、保証債務が相続されないとは判断できません。

相続人は保証債務の全額を負担しますか?

金銭の支払を目的とする保証債務は、 共同相続の場合、通常は可分債務として、 各相続人に法定相続分に応じて承継されることが問題となります。

例えば、被相続人に配偶者と子2人がいる場合の法定相続分は、 一般的には次のとおりです。

・配偶者 2分の1
・子1人目 4分の1
・子2人目 4分の1

仮に、相続の対象となる保証債務が4,000万円であり、 特別な事情がないものとして法定相続分で承継される場合には、 形式的には次のような負担関係が問題となります。

・配偶者 2,000万円相当
・子1人目 1,000万円相当
・子2人目 1,000万円相当

ただし、実際の責任範囲は、 保証契約、主債務の内容、相続放棄の有無、 相続人の範囲、債権者との合意などによって異なります。

また、共同相続人間の遺産分割協議で、 「長男が借金を全部引き継ぐ」と合意しただけでは、 その合意を当然に債権者へ対抗できるとは限りません。

債権者の承諾を得ない限り、 債権者との関係では、各相続人が承継した責任が残る可能性があります。

遺産分割協議だけでは債権者に対する責任を消せないことがあります

相続人同士で債務の負担者を決めても、 債権者がその合意に参加または承諾していなければ、 債権者との関係では別の結論となる可能性があります。 債務引受や免責の可否について、債権者との調整が必要です。

一人の相続人が相続放棄した場合

相続放棄の申述が有効に受理され、 その相続放棄が有効である場合、 相続放棄をした人は、その相続について 初めから相続人ではなかったものと扱われます。

そのため、その人は原則として、 被相続人の保証債務を相続人として承継しません。

ただし、先順位の相続人が相続放棄すると、 次順位の親族が新たに相続人となることがあります。

例えば、子全員が相続放棄した場合には、 被相続人の父母等の直系尊属、 さらに直系尊属がいない場合には、 兄弟姉妹等が相続人となる可能性があります。

相続放棄の一般的な期限、手続、死亡保険金、 保存義務等については、1ページ目をご確認ください。

相続放棄の期限・手続・税金上の注意点を見る >>

保証債務を後から知った場合の相続放棄

相続開始から数か月または数年が経過した後に、 保証会社や金融機関から突然請求を受け、 初めて保証債務の存在を知ることがあります。

この場合、死亡から3か月を経過しているというだけで、 直ちに相続放棄が不可能になるとは限りません。

一方で、 保証債務を知らなかった日から、 必ず新たに3か月を数えられるわけでもありません。

主に次の事情を個別に検討します。

・被相続人の死亡を知った時期
・自分が相続人となったことを知った時期
・被相続人との交流状況
・他の相続財産を認識していたか
・財産や債務を調査したか
・相続財産がないと信じた理由
・保証債務を知った時期
・それ以前に債務の存在を推測できる資料がなかったか
・相続財産を取得、使用または処分していないか
・保証債務を知った後、速やかに行動したか

3か月経過後の熟慮期間の起算点や最高裁判例については、 3ページ目で詳しく解説しています。

3か月経過後の相続放棄について詳しく見る >>

保証債務がある場合の限定承認

保証債務の有無や金額が明確でない一方で、 自宅、不動産、預貯金などの相続財産を 直ちに放棄したくない場合があります。

このような場合には、 相続によって得た財産の限度で債務等を弁済する 限定承認を検討することがあります。

ただし、限定承認には次のような注意点があります。

・原則として3か月以内に家庭裁判所へ申述する
・共同相続の場合は、相続放棄者を除く共同相続人全員で行う
・相続財産目録を作成する
・官報公告や債権者への個別催告を行う
・相続財産の管理、換価および弁済を行う
・含み益のある資産にみなし譲渡所得が生じる可能性がある

保証債務が将来現実化する可能性だけを理由として、 限定承認が常に有利になるわけではありません。

主債務者の返済能力、 相続財産の内容、 不動産等の含み益、 限定承認に伴う所得税を含めて検討する必要があります。

限定承認・先買い・みなし譲渡所得について詳しく見る >>

保証債務を調べる方法

保証債務は、預金残高証明書や固定資産税の課税明細書だけでは、 確認できないことがあります。

保証債務の可能性がある場合には、 次の資料や状況を確認します。

被相続人の契約書・郵便物

・金銭消費貸借契約書
・保証契約書
・連帯保証契約書
・銀行取引約定書
・信用保証委託契約書
・リース契約書
・賃貸借契約書
・債権者からの残高通知
・返済予定表
・督促状、請求書
・内容証明郵便

「保証人控え」と明記された書類だけでなく、 主債務者の契約書に保証人として署名・押印している場合もあります。

確定申告書・法人の決算書

被相続人が会社経営者であった場合には、 本人の確定申告書だけでなく、 関係会社の決算書、勘定科目内訳明細書、 借入金明細、金融機関別借入残高を確認します。

ただし、会社の決算書に借入金が記載されていても、 被相続人が個人保証しているとは限りません。

反対に、個人保証が付されていても、 決算書だけでは保証の有無が分からないことがあります。

不動産の登記事項証明書

被相続人の所有不動産に、 抵当権や根抵当権が設定されている場合には、 借入れまたは担保提供の存在を推測できることがあります。

ただし、登記事項証明書から分かるのは、 主として担保権の設定状況です。

次の事項は、登記だけでは確定できません。

・現在の借入残高
・被相続人が主債務者か物上保証人か
・被相続人が別途連帯保証人となっているか
・既に返済済みで担保抹消だけが未了か
・無担保の保証債務が存在するか

したがって、 「登記に担保がないから保証債務もない」 と判断することはできません。

通帳・取引履歴

次の入出金が手掛かりになる場合があります。

・金融機関への定期的な返済
・保証料の支払
・会社への貸付け、会社からの返済
・主債務者に代わる弁済
・保証会社への支払

もっとも、被相続人が保証人にすぎず、 主債務者が正常に返済していた場合には、 被相続人の通帳に取引が現れないこともあります。

関係会社・共同経営者・顧問専門家への確認

被相続人が会社経営者であった場合には、 次の関係者が資料を保有している可能性があります。

・会社の代表者、役員
・経理担当者
・共同経営者
・顧問税理士
・顧問弁護士
・会社の金融機関担当者

ただし、金融機関等が、 相続人からの照会に直ちに回答するとは限りません。 戸籍、法定相続情報一覧図、本人確認資料等を求められることがあります。

信用情報機関への照会で保証債務は全部分かりますか?

被相続人本人の信用情報を法定相続人が開示請求できる場合があります。

しかし、信用情報の開示だけで、 すべての保証債務を確認できるとは限りません。

次のような契約は、信用情報に十分現れない可能性があります。

・法人融資に対する個人保証
・個人間の貸付けに対する保証
・取引先との継続的な保証
・賃貸借契約上の保証
・未登録または古い契約
・信用情報機関の登録対象外の契約

信用情報は重要な調査資料の一つですが、 契約書、会社資料、郵便物、登記等と併せて確認する必要があります。

経営者保証に関する確認

被相続人が会社の代表取締役、取締役、 実質的な経営者であった場合には、 会社借入れに対する個人保証の有無を特に確認します。

主に、次の借入れや契約が問題となります。

・銀行、信用金庫、信用組合からの事業融資
・信用保証協会付融資
・日本政策金融公庫等からの融資
・不動産取得資金
・設備資金
・リース契約
・取引先に対する支払保証
・会社の賃貸借契約

近年、経営者保証を付けない融資もありますが、 「会社借入れだから個人には関係ない」 と判断することはできません。

融資ごとに、保証契約、担保設定、 残高、返済状況を確認する必要があります。

身元保証や継続的保証も相続されますか?

「保証」と呼ばれる契約には、 金融機関の借入保証だけでなく、 身元保証、賃貸借契約の保証、 継続的取引に関する保証などがあります。

これらについては、 契約の性質、契約期間、 保証の対象、極度額の有無、 保証人死亡時の条項等により、 相続される範囲が異なることがあります。

特に、将来発生する不特定の債務を保証する契約では、 保証人の死亡によって将来分の責任がどのように扱われるか、 既に発生した債務と将来発生する債務を分けて検討する必要があります。

契約書を確認せず、 すべての保証が同じように相続されると断定することはできません。

保証契約が有効に成立しているか確認します

債権者から保証債務の請求を受けた場合でも、 請求書に記載された金額を直ちに支払うのではなく、 まず保証契約の成立と内容を確認します。

主に、次の事項を確認します。

・保証契約書が存在するか
・被相続人本人が署名または記名押印したものか
・保証の対象となる主債務が特定されているか
・保証限度額または極度額はいくらか
・元本、利息、遅延損害金、費用のどこまでを保証するか
・保証期間はいつまでか
・契約変更や追加融資が保証の対象となるか
・保証契約締結時に必要な法的要件を満たしているか
・主債務が時効その他の理由で消滅していないか
・既に弁済または相殺された金額がないか

契約締結時期や保証契約の種類によって、 適用される法令が異なることがあります。

保証契約の有効性や請求額について争いがある場合は、 弁護士による確認が必要です。

債権者から請求を受けた場合の確認手順

1.届いた書類と封筒を保存する

次の資料を処分せずに保存します。

・請求書
・督促状
・保証契約書の写し
・主債務の契約書
・残高計算書
・返済履歴
・債権譲渡通知書
・内容証明郵便
・通知が入っていた封筒
・書留等の受領記録

2.請求者が正当な債権者か確認する

債権譲渡、会社分割、保証履行などによって、 当初の金融機関とは別の会社から請求が届くことがあります。

請求者が現在の債権者であること、 債権譲渡等の経緯を示す資料を確認します。

3.保証契約と主債務を確認する

保証契約だけでなく、 保証の対象となる主債務の契約内容、残高、 返済履歴を確認します。

4.相続関係を確認する

戸籍等により、相続人、法定相続分、 相続放棄の有無を確認します。

5.相続財産を処分していないか確認する

相続放棄を検討する場合には、 法定単純承認に当たる行為がないかを確認します。

・預金の解約、使用
・不動産や株式の売却
・遺産分割協議
・相続財産からの債務弁済
・価値のある家財の処分

6.弁護士へ相談する

次の事項は、弁護士へ相談する必要があります。

・保証契約の有効性
・請求額の妥当性
・各相続人の責任範囲
・相続放棄の可否
・消滅時効
・債権者との交渉
・訴訟、支払督促への対応

請求を受けた直後に避けたい行為

専門家へ相談する前に、次の行為をすることは避けてください。

・「支払います」と回答する
・債務承認書へ署名する
・分割返済の合意書へ署名する
・一部だけ支払う
・被相続人の預金から支払う
・相続人個人の預金から支払う
・請求書や封筒を捨てる
・裁判所から届いた書類を放置する

支払や債務承認が、 相続放棄、消滅時効、法定単純承認等の判断に 影響する可能性があります。

裁判所から訴状や支払督促が届いた場合には、 回答期限や異議申立期間があるため、直ちに弁護士へ相談してください。

保証債務を支払った場合の求償権

保証人または保証債務を承継した相続人が、 主債務者に代わって債権者へ弁済した場合には、 一定の範囲で主債務者に対する求償権を取得することがあります。

簡単にいえば、 保証人が代わりに支払った金額について、 本来の債務者へ返還を求める権利です。

ただし、主債務者が倒産、破産、債務超過などの状態であれば、 求償権が存在しても実際に回収できない可能性があります。

次の事項を確認する必要があります。

・主債務者の財産状況
・事業の継続状況
・破産、民事再生等の有無
・他の債権者の状況
・担保の有無
・保証人が支払った金額
・求償権の消滅時効
・他の保証人に対する求償の可否

保証債務を支払ったからといって、 同額を主債務者から確実に回収できるわけではありません。

保証債務は相続税から債務控除できますか?

相続税の計算では、 被相続人の債務で相続開始時に現に存在し、 確実と認められるものは、 一定の要件の下で相続財産の価額から控除します。

しかし、保証債務は、 保証契約が存在するというだけでは、 原則として直ちに債務控除の対象となりません。

これは、相続開始時に主債務者が正常に返済している場合には、 保証人または相続人が実際に保証債務を履行するかどうかが 確定していないためです。

国税庁の相続税法基本通達では、 保証債務について、主に次の要件を満たす場合に、 債務控除を認める取扱いが示されています。

・主債務者が弁済不能の状態にあること
・保証債務者が債務を履行しなければならないこと
・主債務者へ求償しても返還を受ける見込みがないこと

これらの要件を満たす場合には、 主債務者が弁済不能となっている部分の金額について、 保証債務者の債務として控除できる可能性があります。

保証契約額1億円でも、そのまま1億円を控除できるとは限りません

保証限度額が1億円であっても、 主債務者が正常に返済しており、 相続開始時に保証人が履行しなければならない状況でなければ、 原則として1億円をそのまま相続税の債務として控除することはできません。

相続税の債務控除を判断する時点

保証債務が債務控除の対象となるかは、 原則として相続開始時の状況を基礎として判断します。

相続開始後に主債務者の経営が悪化したというだけで、 当然に相続開始時の債務控除が認められるとは限りません。

相続開始時に、主に次の事情があったかを確認します。

・主債務者が返済を停止していた
・期限の利益を喪失していた
・債権者から保証人へ請求が行われていた
・主債務者が債務超過であった
・破産、民事再生、会社更生等を申し立てていた
・事業を停止または廃止していた
・差押えや滞納処分を受けていた
・主債務者に換価可能な財産がほとんどなかった
・保証人の求償権を回収できる見込みがなかった

単に会社の決算が赤字であることや、 資金繰りが厳しいという事情だけで、 直ちに「弁済不能」と判断できるとは限りません。

債務控除を検討するための資料

保証債務の債務控除を検討する場合には、 次の資料を準備します。

・保証契約書
・主債務の金銭消費貸借契約書
・相続開始日時点の借入残高証明書
・返済予定表、返済履歴
・債権者からの請求書、督促状
・期限の利益喪失通知
・主債務者の決算書、試算表
・主債務者の預金残高資料
・主債務者の不動産、設備等の財産資料
・主債務者の借入金明細
・破産、民事再生等に関する資料
・主債務者への求償が困難であることを示す資料
・担保権および担保財産の評価資料
・他の保証人、連帯債務者に関する資料

主債務者が法人の場合には、 帳簿上の純資産額だけでなく、 資産の実際の換価価値、 回収不能債権、簿外債務、担保設定等も確認します。

相続税申告時に保証債務が確定していない場合

相続税の申告期限は、 原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

申告期限までに、 主債務者の弁済能力や求償可能性を判断できない場合があります。

しかし、保証債務の調査中であることを理由として、 相続税の申告期限が当然に延長されるわけではありません。

申告時点で確認できる事実と資料に基づいて、 債務控除の可否を慎重に判断します。

申告後に新たな事実が判明した場合には、 その内容と法定期間を確認した上で、 修正申告、更正の請求その他の手続を検討します。

保証債務を過大に控除した場合には、 追加の相続税、延滞税、加算税等が生じる可能性があります。

反対に、控除できる保証債務を申告に反映していなかった場合には、 要件を満たせば更正の請求等を検討できることがあります。

保証債務を弁済した後の税務

相続人が保証債務を履行した場合には、 相続税だけでなく、その後の所得税や法人税の処理が問題になることがあります。

例えば、次の事項を確認します。

・主債務者に対する求償権の取得
・求償権の回収可能性
・求償権を放棄した場合の税務
・主債務者が同族会社である場合の寄附金、受贈益等
・他の保証人との負担調整
・代位取得した担保権の評価

特に、主債務者が被相続人または相続人の同族会社である場合には、 保証債務の弁済と求償権の放棄を 単なる家族内・会社内の資金移動として処理しないよう注意が必要です。

保証債務がある場合の遺産分割

保証債務が存在する可能性がある場合には、 積極財産だけを基準として、 早急に遺産分割を終えることは慎重に判断する必要があります。

例えば、不動産を一人の相続人が取得し、 他の相続人が預貯金を取得した後に、 多額の保証債務が判明することがあります。

その場合でも、債権者との関係では、 各相続人が承継した債務の責任を負う可能性があります。

遺産分割を検討する際には、 次の事項を整理します。

・保証債務の金額と現実化する可能性
・各相続人が承継する可能性のある負担
・主債務者への求償可能性
・担保財産の有無
・相続財産の換価可能性
・納税資金
・相続人間の求償、精算方法
・債権者の承諾を得た債務引受の可否

保証債務の相続でよくある誤解

主債務者が返済中なら、保証債務は相続されない

主債務者が返済中であっても、 保証契約が継続している限り、 将来保証債務が現実化する可能性があります。

ただし、相続税の債務控除については、 相続開始時に主債務者が正常に返済している場合、 原則として直ちに控除できるとは限りません。

連帯保証人が死亡すれば契約は終了する

保証人の死亡だけで、 既に成立している保証債務が当然に消滅するとは限りません。

契約の種類、対象債務、保証期間等を確認する必要があります。

遺産分割で長男が債務を負担すれば、他の相続人は無関係になる

相続人間の合意と、 債権者に対する責任は分けて考える必要があります。

債権者が合意していなければ、 相続人間の遺産分割だけで、 他の相続人が当然に免責されるとは限りません。

保証契約額の全額を相続税から控除できる

保証契約が存在するだけでは、 原則として全額を債務控除することはできません。

主債務者の弁済不能、 保証債務を履行しなければならない状況、 求償不能などを確認する必要があります。

信用情報を調べれば保証債務はすべて分かる

信用情報に登録されない保証契約もあります。

契約書、会社資料、郵便物、登記、 関係者への確認等を併せて行う必要があります。

請求が来たら少額だけ払って時間を稼げばよい

一部弁済や返済の約束が、 相続放棄、消滅時効その他の法的主張に 影響する可能性があります。

支払前に弁護士へ相談してください。

保証債務の相続に関するよくあるご質問

父が会社の連帯保証人でした。子も会社の借金全額を負いますか?

直ちに子一人が全額を負うとは限りません。

相続人の範囲、法定相続分、 相続放棄の有無、保証契約の内容等を確認します。

ただし、相続人間で負担者を決めただけでは、 債権者に対して他の相続人が当然に免責されるとは限りません。

会社が返済を続けています。相続税から保証額を控除できますか?

会社が正常に返済しており、 保証人が履行しなければならない状況でない場合には、 原則として保証額をそのまま債務控除することはできません。

相続後に会社が倒産しました。相続税を訂正できますか?

相続開始時に保証債務が確実な債務であったかが重要です。

相続後に倒産したという事実だけで、 当然に相続開始時の債務控除が認められるとは限りません。

相続開始時の財務状態、返済状況、 請求状況等を確認した上で、 更正の請求等が可能かを検討します。

保証会社から突然請求が来ました。死亡から3か月を過ぎています

死亡から3か月を経過していても、 熟慮期間の起算点を検討できる場合があります。

ただし、保証債務を知った日から 当然に新たな3か月が始まるとは限りません。

請求書と封筒を保存し、 相続財産を処分した状況等を整理して、 速やかに弁護士へ相談してください。

被相続人の会社の決算書を見れば保証の有無が分かりますか?

決算書に会社の借入金は記載されますが、 被相続人個人の保証契約の内容まで 記載されていないことがあります。

金融機関の融資契約書、保証契約書等を別途確認する必要があります。

保証債務を支払えば主債務者から必ず返してもらえますか?

法律上、求償権を取得する場合がありますが、 主債務者に資力がなければ実際に回収できない可能性があります。

保証債務について税理士が債権者と交渉できますか?

保証契約の有効性に関する法律判断、 債権者との交渉、訴訟対応は、 弁護士の担当領域です。

税理士は、保証債務の相続税上の債務控除、 相続税申告、求償権の税務評価等を担当します。

税理士・弁護士・司法書士の担当範囲

弁護士

・保証契約の有効性の確認
・各相続人の責任範囲の判断
・相続放棄の申述代理
・債権者との交渉
・消滅時効の確認
・支払督促、訴訟等への対応
・債務整理、破産等の検討

司法書士

・家庭裁判所へ提出する相続放棄申述書等の作成
・相続登記
・担保権に関する登記手続
・法定相続情報一覧図等の作成支援

ただし、司法書士の代理・交渉業務には、 法律上の範囲と制限があります。

税理士

・保証債務の相続税上の債務控除の検討
・主債務者の財務状況の税務・会計面からの確認
・相続税申告
・更正の請求、修正申告等の税務手続
・求償権の相続税評価
・準確定申告
・同族会社との取引に関する税務整理

佐々木税務会計事務所では、 保証債務の相続税上の取扱い、 主債務者の財務状況、 求償権の評価等を整理します。

保証契約の有効性、相続放棄、 債権者との交渉等の法律事務が必要な場合には、 弁護士等と役割を分けて対応します。

ご相談時に確認したい資料

保証債務に関するご相談では、 可能な範囲で次の資料をご用意ください。

・被相続人の戸籍、法定相続情報一覧図
・保証契約書、連帯保証契約書
・主債務の金銭消費貸借契約書
・銀行取引約定書
・残高証明書
・返済予定表、返済履歴
・請求書、督促状
・債権譲渡通知書
・通知が入っていた封筒
・被相続人の預金通帳、取引履歴
・被相続人の確定申告書
・関係会社の決算書、勘定科目内訳明細書
・関係会社の借入金明細
・不動産の登記事項証明書
・担保設定の内容が分かる資料
・主債務者の財産、負債、返済能力が分かる資料
・破産、民事再生等に関する資料
・相続人が既に行った支払、処分等の記録

資料がすべてそろうまで待たないでください

相続放棄には原則として3か月、 相続税申告には原則として10か月の期限があります。 保証債務の存在が疑われる場合には、 現在手元にある資料を基に、早期に調査を始めることが重要です。

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保証債務が疑われる場合は、相続財産を動かす前にご相談ください

保証債務は、相続開始時には請求がなく、 将来、主債務者の経営悪化等によって 突然現実化することがあります。

一方、保証契約が存在するというだけで、 相続税から保証額の全額を控除できるわけではありません。

保証債務の相続では、 次の3つを分けて検討することが重要です。

・相続人が保証債務を法的に承継するか
・相続放棄または限定承認を選択するか
・相続税の債務控除を適用できるか

佐々木税務会計事務所では、 保証契約、主債務者の財務状況、 相続財産、求償可能性等を確認し、 相続税申告上の取扱いを整理します。

保証債務・相続放棄・相続税をまとめて整理します

保証債務の存在、主債務者の返済能力、 相続税の債務控除、求償権等を税務面から確認します。 法律手続が必要な場合には、弁護士等と連携して対応します。

武蔵野市・吉祥寺を中心に、 三鷹市、調布市、小金井市、国分寺市、国立市、立川市、昭島市、 杉並区、練馬区、府中市、稲城市などの相続税相談に対応しています。

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この記事の監修

佐々木税務会計事務所

相続税申告、準確定申告、相続財産・債務の調査、 不動産評価、非上場株式評価等を取り扱う税理士事務所です。 保証債務がある相続では、主債務者の財務状況、 相続税の債務控除、求償権の評価等を整理し、 法律判断や債権者対応が必要な場合には、 弁護士等と役割を分けて対応します。

ご注意

本ページは、保証債務の相続および関連する税務について、 一般的な情報を提供することを目的としています。

保証契約の有効性、各相続人の責任範囲、 相続放棄の可否、消滅時効、債権者への対応等は、 個別の契約内容および事実関係によって判断が異なります。 これらの法律判断、相続放棄の申述代理、 債権者との交渉、訴訟対応については、 弁護士へご相談ください。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
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