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相続放棄とは?するべきか迷ったときの判断ガイド|3か月・限定承認・相続税

相続放棄とは?するべきか迷ったときの判断ガイド|3か月・限定承認・相続税

30秒で結論

亡くなった方に借入金、未払金、保証債務などがある場合、相続人は預貯金や不動産などの財産だけでなく、原則として債務も承継します。

債務を承継したくない場合には、相続放棄または限定承認を検討します。ただし、相続放棄には原則3か月の期限があり、相続財産を処分した場合などには単純承認をしたものと扱われる可能性があります。

また、相続放棄をしても死亡保険金や遺贈によって財産を取得した場合には、相続税が課されることがあります。

まず確認したい3つのこと

  • 相続放棄の期限はいつまでか
  • 被相続人の預金、不動産、家財などをすでに動かしていないか
  • 借入金だけでなく、保証債務や未払金がないか

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所へ申述し、その相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われる制度です。

相続放棄が有効に成立した場合には、相続人として、原則として次のいずれも承継しません。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式・投資信託
  • 自動車・貴金属その他の財産
  • 借入金
  • 未払金
  • 保証債務・連帯保証債務
プラスの財産だけを受け取り、借金だけを相続放棄することはできません。

また、相続人同士で「自分は相続しない」と約束しただけでは、民法上の相続放棄にはなりません。遺産分割協議で何も取得しないことと、家庭裁判所で行う相続放棄は別の手続です。

相続放棄の期限は原則として3か月です

相続放棄は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。この期間を一般に熟慮期間といいます。

通常は、次の2つの事実を知った時から熟慮期間が進行します。

  • 被相続人が死亡したこと
  • その死亡によって自分が相続人となったこと

したがって、すべての場合に被相続人の死亡日から3か月を数えるわけではありません。先順位の相続人が全員相続放棄したことにより、後から自分が相続人となった場合などは、その後順位者が自分のために相続が開始したことを知った時期が問題となります。

死亡から3か月が経過している場合

死亡から3か月が経過しているという理由だけで、直ちに相続放棄ができないとは限りません。一方、借金や保証債務を知った日から当然に新しい3か月が始まるわけでもありません。

3か月経過後の相続放棄について詳しく見る →

3か月以内に判断できない場合

相続財産や債務を調査しても、熟慮期間内に単純承認、限定承認、相続放棄のいずれを選ぶか判断できない場合があります。

この場合には、熟慮期間が満了する前に、家庭裁判所へ相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てる方法があります。

期間伸長が認められるか、どの程度の期間が伸長されるかは家庭裁判所が個別に判断します。期間を経過した後に当然に期限を復活させる制度ではありません。

相続放棄を検討するときに避けたい行為

相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合には、単純承認をしたものとみなされることがあります。

相続放棄を検討している間は、特に次の行為に注意してください。

  • 被相続人の預金を解約する
  • 預金を引き出して相続人自身のために使用する
  • 不動産、自動車、株式などを売却する
  • 貴金属、ブランド品、骨董品などを売却する
  • 遺産分割協議書に署名・押印する
  • 債権者へ被相続人の借金を支払う
  • 被相続人の財産を隠したり、私的に消費したりする

もっとも、相続財産に関する行為をした場合に、すべて一律に相続放棄ができなくなるわけではありません。保存行為に当たるか、財産的価値のない物の処分か、行為の目的、金額、時期などを踏まえて個別に判断する必要があります。

すでに預金を引き出した、葬儀費用を支払った、家財を処分した場合

直ちに結論を出さず、通帳、領収書、請求書、写真、処分明細などの資料を保存してください。

相続放棄の失敗事例と注意点を見る →

相続放棄をすると次順位の親族が相続人になることがあります

相続放棄をした人は、その相続について初めから相続人ではなかったものと扱われます。

そのため、先順位の相続人が全員相続放棄すると、次順位の親族が新たに相続人になることがあります。

順位相続人
第1順位子などの直系卑属
第2順位父母・祖父母などの直系尊属
第3順位兄弟姉妹。一定の場合には甥・姪

例えば、子全員が相続放棄しても、必ず配偶者だけが相続人になるわけではありません。直系尊属や兄弟姉妹等がいれば、その人たちが新たに相続人となる可能性があります。

配偶者へ財産を集めることだけが目的の場合

相続放棄ではなく、遺産分割協議による方法をまず検討するのが通常です。

限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の限度において、被相続人の債務や遺贈を弁済することを留保して相続する制度です。

例えば、債務の総額が明確でない一方、自宅など残したい財産がある場合に検討対象となることがあります。

  • 原則として熟慮期間内に家庭裁判所へ申述する
  • 共同相続の場合は、相続放棄をした人を除く共同相続人全員で行う
  • 相続財産目録の作成が必要となる
  • 公告・債権者への催告・換価・弁済などの清算手続が必要となる
  • 含み益のある資産について、みなし譲渡所得課税が問題となることがある

手続と税務が複雑であるため、相続放棄より常に有利な制度というわけではありません。

限定承認・単純承認・みなし譲渡所得について詳しく見る →

保証債務も相続の対象となる可能性があります

亡くなった方が会社、親族、知人などの保証人または連帯保証人になっていた場合、保証債務は原則として相続の対象となる可能性があります。

保証債務は通常の借入金と異なり、主債務者が正常に返済している間は被相続人や相続人へ請求が来ないことがあります。そのため、相続手続が終わった後に金融機関や保証会社から突然請求を受ける場合があります。

一方、保証契約が存在するというだけで、その保証額を相続税から直ちに債務控除できるわけではありません。

保証契約の有効性、各相続人の責任範囲、相続放棄の可否などの法律判断は弁護士、相続税の債務控除や求償権の税務評価は税理士が担当します。

保証債務・連帯保証人の相続について詳しく見る →

相続放棄をしても死亡保険金を受け取れる場合があります

生命保険契約で特定の人が死亡保険金受取人に指定されている場合、死亡保険金請求権は一般に受取人固有の権利とされます。

そのため、相続放棄をした人でも、契約内容に従って死亡保険金を受け取れる場合があります。

ただし、次の場合には取扱いが異なる可能性があります。

  • 受取人が被相続人本人である
  • 受取人が被相続人より先に死亡している
  • 受取人指定がない、または不明確である
  • 死亡保険金ではなく、被相続人に帰属する給付金等である

保険証券や保険約款を確認し、誰がどの権利に基づいて受け取るのかを確認する必要があります。

相続放棄をしても相続税がかかる場合があります

被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、民法上は受取人固有の財産であっても、相続税法上はみなし相続財産として相続税の対象となる場合があります。

また、相続放棄をした人自身が取得した死亡保険金には、原則として「500万円×法定相続人の数」の非課税制度を適用できません。

一方、非課税限度額や相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして計算します。

相続放棄をした人が、次の財産を取得した場合には、相続税申告の要否を確認する必要があります。

  • 死亡保険金
  • 死亡退職金
  • 遺言による遺贈財産
  • その他のみなし相続財産
「相続放棄をしたので、相続税も関係ない」とは限りません。
預金・葬儀費用・生命保険・相続税のQ&Aを見る →

相続放棄の手続の基本

一般的な手続の流れは次のとおりです。

  1. 熟慮期間の起算日と期限を確認する
  2. 相続人と相続順位を戸籍で確認する
  3. 預貯金、不動産、債務、保証債務等を調査する
  4. 相続財産を処分していないか確認する
  5. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する
  6. 家庭裁判所から照会があった場合は、事実に基づいて回答する

裁判所の案内による標準的な費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、裁判所が指定する郵便料です。

必要な戸籍等の一部を申述前に取得できない場合には、申述後の追加提出が認められることがあります。期限が迫っている場合に、すべての戸籍がそろうまで申述を待つべきとは限りません。

相続放棄の手続き完全ガイドを見る →

状況別|相続放棄の詳しい解説

今の状況に近い項目からご確認ください。

税理士・弁護士・司法書士の担当範囲

弁護士

  • 相続放棄が可能かどうかの法律判断
  • 法定単純承認の成否に関する判断
  • 家庭裁判所への相続放棄の申述代理
  • 3か月経過後の事情説明
  • 債権者との交渉
  • 訴訟・支払督促等への対応

司法書士

司法書士は、法律上の範囲内で、家庭裁判所へ提出する相続放棄申述書等の書類作成を担当できる場合があります。代理や債権者との交渉ができる範囲には法律上の制限があります。

税理士

  • 相続税申告の要否判定
  • 相続財産と債務の税務上の整理
  • 死亡保険金・死亡退職金の相続税課税
  • 相続放棄を踏まえた相続税申告
  • 準確定申告
  • 不動産・非上場株式等の相続税評価
  • 限定承認に伴うみなし譲渡所得の検討

佐々木税務会計事務所では、相続財産、借入金、保証債務、死亡保険金、相続税申告の要否などを税務面から整理します。相続放棄の法律判断や家庭裁判所への申述代理が必要な場合には、弁護士等と役割を分けて対応します。

相続放棄を検討している方の確認資料

ご相談時には、可能な範囲で次の資料をご用意ください。

  • 被相続人の死亡日・最後の住所が分かる資料
  • 相続人との関係が分かる戸籍謄本等
  • 預金通帳・残高証明書・取引履歴
  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書
  • 不動産の登記事項証明書
  • 株式・投資信託等の残高資料
  • 借入金の契約書・残高証明書
  • 保証契約書・連帯保証契約書
  • 債権者から届いた請求書・督促状と封筒
  • 生命保険証券・契約内容のお知らせ
  • 葬儀費用等の請求書・領収書
  • すでに引き出した預金や処分した財産の資料
資料がすべてそろうまで待たないでください。

相続放棄には原則として3か月の期限があります。戸籍や財産資料がすべてそろっていなくても、現在分かっている内容と手元の資料を基に、早めに期限を確認することが重要です。

相続放棄と相続税を分けて整理することが重要です

相続放棄は民法上の手続ですが、死亡保険金、死亡退職金、準確定申告、相続税申告などの税務手続は別に確認する必要があります。

相続放棄を検討していることを理由として、相続税の申告期限や準確定申告の期限が当然に停止または延長されるわけではありません。

特に、死亡保険金を受け取る場合や、他の相続人が財産を取得する場合には、相続税申告の要否を早めに確認してください。

相続放棄を踏まえた相続税・死亡保険金・財産債務を整理します

相続財産、借入金、保証債務、死亡保険金、相続税申告の要否を税務面から確認します。法律手続が必要な場合には、弁護士等と役割を分けて対応します。

相続に関する相談はこちら →

公的機関の参考情報

ご注意

本ページは、相続放棄、限定承認および関連する税務について一般的な情報を提供することを目的としています。熟慮期間の起算点、法定単純承認の成否、相続放棄の効力、財産処分の可否、債権者への対応等は個別の事実関係によって判断が異なります。

 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社で約10年間、企業経営・事業承継のコンサルティングに従事。その後、法律事務所で約5年間、相続・資産承継の実務を経験し、大手税理士法人では約10年間、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策などの資産税業務を専門に担当しました。 これまで培った税務・法務・経営の知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広い相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、**「創族(そうぞく)」**を理念に、相続税申告だけでなく、生前対策、遺言、家族信託、事業承継など、ご家族の将来を見据えた相続・資産承継に取り組んでいます。
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