面談予約はこちら
予約専用ダイヤル

0422-07-5393

受付時間:9:00~18:00(平日)

遺言と相続税・二次相続|分け方で税負担はどう変わる?

遺言で相続税を考えるときは、「今回いくら安くなるか」だけでは足りません。
一次相続・二次相続・その後の財産の出口まで、時間軸で考えます。

30秒で結論

一次相続の税額が一番安い遺言が、家族全体で一番有利とは限りません

一次相続の税額
配偶者の二次相続
その後保有・売却・納税
このページの核心:配偶者の税額軽減を「最大限使うか」ではなく、配偶者の生活に必要な財産を確保した上で、一次・二次相続を通算して誰に何を残すかを考えます。
01

なぜ「誰が取るか」で相続税が変わるのか

相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分で取得したものと仮定して計算します。その後、実際に財産を取得した割合に応じて各人へ税額を配分し、配偶者の税額軽減などの各種控除を適用します。

相続税の総額

法定相続分を基礎に計算。

各人への配分

実際の取得財産に応じて税額を配分。

各種特例・控除

配偶者軽減、小規模宅地、2割加算等が最終税額へ影響。

遺言の役割:法定相続分を変えること自体より、最終的に誰がどの財産を取得する設計になるかが税務上重要です。

相続税の計算方法を詳しく見る →

02

配偶者の税額軽減|「1億6,000万円まで非課税」だけで決めない

配偶者が相続や遺贈により実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までを基準として、配偶者の相続税が軽減されます。

一次相続だけを見ると

  • 配偶者へ多く残すほど一次相続税が小さくなることがある
  • 配偶者の税額が0になるケースも多い

二次相続まで見ると

  • 配偶者固有の財産に一次相続財産が加わる
  • 二次相続では配偶者の税額軽減はない
  • 法定相続人の数が減り、基礎控除も小さくなることがある
「配偶者に全部」が税務上の正解とは限りません。一方で、二次相続税を減らすために配偶者の生活資金まで削るのも本末転倒です。税金より先に生活保障を確認します。

SIMULATION

同じ3億円でも、配偶者の取得額で一次+二次の税負担は変わります

簡易モデル|父の財産3億円・母の固有財産1億円・子2人

比較を分かりやすくするため、債務・生前贈与・生命保険・小規模宅地等の特例・未成年者控除等はなく、財産の増減・消費もないものとして、現行税率で単純化しています。

一次相続で母が取得一次相続税想定二次相続財産二次相続税合計
1億6,000万円約2,669万円2億6,000万円約5,320万円約7,989万円
1億円約3,813万円2億円約3,340万円約7,153万円
この例では、一次相続税は母1億6,000万円取得の方が安い一方、二次相続まで合計すると結果が逆転します。

※これは「母は1億円取るべき」という結論ではありません。母の年齢、生活費、自宅、介護費、将来贈与、資産の増減、相続開始時期等で結果は変わります。個別シミュレーションが必要です。

03

配偶者に「いくら」ではなく「何を」残すか

二次相続設計では、取得金額だけでなく財産の性質を見ることが重要です。

財産配偶者へ残すときの視点子へ一次相続から残すときの視点
自宅配偶者の生活基盤を最優先配偶者の居住を害さないか
現預金生活・医療・介護費として重要子の相続税納税資金にもなる
収益不動産収益が老後資金になる一方、管理負担もある管理できる子へ早く承継する意味がある場合も
値上がりが見込まれる資産二次相続まで価値が増える可能性一次相続から子へ承継する比較価値がある
換金しにくい財産生活費・納税には使いにくい取得者の納税資金を別途確認
税理士は「配偶者50%」と割合だけでは決めません。配偶者に必要な生活資産と、将来増える可能性のある資産・管理を要する資産を分けて考えます。
04

小規模宅地等|「誰が土地を取るか」で適用関係が変わる

小規模宅地等の特例は、対象となる宅地の用途だけでなく、誰が取得するか、保有・居住・事業継続等の要件が関係する類型があります。

遺言作成時に確認

  • 自宅を誰に残す予定か
  • 賃貸土地・事業用土地を誰が引き継ぐか
  • 取得者が各類型の要件を満たす可能性があるか

税制だけで決めない

  • その人が本当に使う土地か
  • 管理を続けられるか
  • 将来売る予定ではないか
裁決でも「取得者」が重要です。平成27年6月25日裁決では、同じ宅地の持分でも、取得者の属性・利用関係により特定居住用宅地等に該当する範囲が異なると判断されています。
05

孫へ直接残す|「一代飛ばせば得」とは限りません

遺言によって孫へ直接財産を残せば、子を経由せず次世代へ財産を移せるため、将来の相続回数を減らせる可能性があります。

比較するメリット

  • 子の相続を経由せず孫へ承継できる
  • 長期の資産承継として合理的な場合がある

相続税の注意

  • 配偶者・一親等の血族以外は原則2割加算
  • 代襲相続人でない孫への遺贈は2割加算の対象になり得る
  • 相次相続控除の適用対象者は「相続人」に限定される
世代飛ばし=節税、と一律にはいえません。2割加算、遺留分、孫の年齢・管理能力、贈与との比較まで確認します。
06

二次相続が近いと「相次相続控除」がある。でも過信しない

相続開始前10年以内に、今回の被相続人が前の相続で財産を取得し相続税を負担していた場合、一定の相次相続控除があります。

ここに重要な落とし穴があります。国税庁Q&Aでは、父の相続で母が財産を取得していても、配偶者の税額軽減により母自身が相続税を納めていなかった場合、母の二次相続では相次相続控除額は算出されないと明示されています。
一次相続で配偶者の税額をゼロにしたから、二次相続で相次相続控除が使えるわけではありません。
07

遺言どおりに分けなかったら、贈与税になる?

遺言を作っても、死亡後に相続人全員が別の分け方を希望することがあります。

国税庁 No.4176:特定の相続人へ全部の遺産を与える遺言があっても、相続人全員がそれと異なる遺産分割をした一定の事例について、受遺者が遺贈を事実上放棄し共同相続人間で遺産分割をしたものとし、受遺者から他の相続人への贈与とはしないとしています。
ただし、いつでも自由に「やり直せる」という意味ではありません。一度有効に財産が分属した後の再配分は、贈与・譲渡等となる可能性があります。遺言の種類・内容・放棄時期・分割の実態を確認します。
08

未分割になると、税額軽減・特例をすぐ使えないことがあります

配偶者の税額軽減は、原則として配偶者が実際に取得した財産を基礎に計算されます。申告期限までに分割されていない財産は、当初申告では軽減対象になりません。

配偶者の税額軽減

未分割財産は当初申告では原則対象外。一定の手続をした上で後日分割すれば更正の請求が可能。

小規模宅地等

原則として申告期限までの分割等が重要。未分割時には所定の手続が必要。

遺言には「税務期限を守りやすくする」という実務的意味もあります。ただし、遺言があるだけで特例の要件を自動的に満たすわけではありません。
09

税金を下げても「払えない遺言」では意味がない

相続税は、原則として申告期限までに金銭で納めます。相続税が少なくても、取得した財産の大半が不動産・非上場株式等で現金がなければ納税に困ることがあります。

税額

誰がいくら納めるか。

現金

誰が預金・保険金等を取得するか。

出口

売却・延納等が必要になるか。

遺言では「財産額」と「現金」を分けて見ます。相続税評価額1億円の土地を取得しても、納税用の預金がなければ資金繰りは別問題です。

不動産がある場合の遺言を詳しく見る →

TAX CASES

遺言設計に直結する裁決・国税庁事例

裁決平成12年6月30日裁決|配偶者の税額軽減と「分割された財産」

配偶者の税額軽減における「分割されていない財産」の意味が争われた事例です。審判所は、配偶者が特定遺贈で取得するなど、もともと遺産分割の対象とならない財産は「未分割財産」とは異なると整理しています。

遺言への示唆:「遺言で配偶者へ取得させること」と「遺産分割で配偶者が取得すること」は、税額軽減の適用過程で同じ論点ではありません。

裁決平成24年4月24日裁決|隠蔽・仮装と配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減について、隠蔽・仮装行為がある場合に軽減対象から除外する規定の適用が争われました。

遺言への示唆:分け方を工夫しても、名義財産等を含め正しい財産把握・申告が前提です。「配偶者に残せば控除でゼロ」という設計は、財産把握が正しくなければ成立しません。

裁決平成27年6月25日裁決|小規模宅地等と取得者

同一宅地の持分について、取得者と利用実態に応じて特定居住用宅地等・特定同族会社事業用宅地等への該当範囲が判断されました。

遺言への示唆:土地に特例があるのではなく、対象宅地の利用状況と「誰が取得するか」まで含めて要件を確認します。

国税庁No.4176|遺言と異なる遺産分割

特定相続人へ全財産を与える遺言がある場合でも、相続人全員で異なる遺産分割をした一定の事例について、その分割内容を基礎に相続税を計算し、受遺者から他の相続人への贈与とはしないとしています。

遺言への示唆:死亡後の変更可能性まで考えても、「遺言は無意味」ではありません。手続の起点・特例・納税期限を明確にする役割があります。

国税庁No.4168|二次相続と相次相続控除

父の相続で母が配偶者の税額軽減により相続税を納めていなかった場合、2年後の母の相続では相次相続控除額が算出されないとするQ&Aがあります。

遺言への示唆:「10年以内に二次相続なら税額控除があるから大丈夫」とは考えないこと。

税務リスク未分割と特例

国税庁は、申告期限まで未分割の財産について、配偶者の税額軽減・小規模宅地等を当初申告で原則適用できず、一定の届出・後日の分割・更正の請求が必要になることを明示しています。

遺言への示唆:税務上の最適案だけでなく、10か月以内に実行・申告できる案にすることが重要です。

TAX ACCOUNTANT’S VIEW

税理士はここを見る|「一次相続税の最小化」ではなく、家族全体の資産承継

  • 配偶者の固有財産はいくらあるか
  • 配偶者の年齢・生活費・介護資金
  • 一次相続・二次相続の概算税額
  • 小規模宅地等の取得者要件
  • 相続税額の2割加算
  • 値上がり・収益が見込まれる財産を誰へ残すか
  • 不動産の相続税評価と市場価値
  • 各相続人の納税資金
  • 将来売却した場合の税負担
  • 相次相続控除の有無

税額だけでなく、配偶者の安心と、子どもへ残る財産の質まで見る。それが遺言と相続税を一緒に考える意味です。

SELF CHECK

遺言を書く前の相続税・二次相続チェック

  • 現在の相続税概算を計算した
  • 配偶者自身の財産も一覧にした
  • 配偶者の今後の生活費・介護費を考えた
  • 一次相続だけでなく二次相続も試算した
  • 配偶者へ残す「金額」だけでなく「財産の種類」も検討した
  • 小規模宅地等の取得者要件を確認した
  • 不動産の相続税評価と市場価値を分けて考えた
  • 各相続人が相続税を払う現金を持てるか確認した
  • 孫等へ直接残す場合の2割加算を確認した
  • 二次相続が近い場合の相次相続控除も確認した
  • 遺言どおりに分けられない場合の代替案を考えた
  • 相続税申告期限10か月以内に実行できる設計か確認した

FAQ

遺言・相続税・二次相続のよくある質問

Q. 配偶者に1億6,000万円まで残せば、必ず一番得ですか?

いいえ。一次相続では有利になることがありますが、配偶者の固有財産や二次相続まで含めると、家族全体の税負担が増える場合があります。一方、配偶者の生活保障は税金より優先して考える必要があります。

Q. 配偶者には自宅と現金、どちらを残した方がよいですか?

一律には決められません。自宅は生活基盤、現金は生活・介護・納税に必要です。小規模宅地等の特例、二次相続、将来売却も含めて比較します。

Q. 孫に直接遺言すれば相続税を一回減らせますか?

相続回数を減らす効果が考えられる一方、代襲相続人でない孫等への遺贈は相続税額の2割加算対象になり得ます。遺留分や管理能力も含めて判断します。

Q. 遺言と違う分け方をしたら贈与税ですか?

一定の事実関係では、相続人全員で遺言と異なる遺産分割を行っても、受遺者から他の相続人への贈与とはせず、その分割内容に基づいて相続税を計算する国税庁事例があります。ただし、既に財産が確定的に分属した後の再配分とは区別が必要です。

Q. 二次相続が10年以内なら相次相続控除がありますか?

要件があります。特に、一次相続で二次相続の被相続人となる配偶者が配偶者の税額軽減により相続税を負担していない場合、その税額を基礎とする相次相続控除は算出されません。

Q. 遺言があれば小規模宅地等の特例は確実に使えますか?

いいえ。対象宅地の用途、取得者、保有・居住・事業継続等の要件を満たす必要があります。遺言で取得者を決める段階から確認します。

Q. 二次相続対策のため、配偶者にはほとんど残さない方がよいですか?

その考え方も適切ではありません。配偶者の生活・住居・医療・介護資金を十分に確保することが前提です。そのうえで、余剰資産や将来増える可能性の高い資産をどう承継するかを検討します。

OUR VIEW

「今の税金」ではなく、「家族に残る財産」で遺言を考えます

相続税対策だけなら、一次相続で配偶者の税額軽減を最大限使う案が魅力的に見えることがあります。しかし、遺言の目的は「今回の相続税を最小にすること」ではありません。

配偶者

生活・住居・介護に必要な財産を確保。

子ども

将来まで含めた税負担と納税資金を確認。

財産

誰が持つことで価値を維持しやすいかまで考える。

一次相続+二次相続の税額比較は「答え」ではなく「判断材料」です。税金・生活・不動産・家族関係を合わせて、最終的な遺言の分け方を決めます。

CONSULTATION

遺言を書く前に、一次・二次相続を比較したい方へ

配偶者へどこまで残すか、不動産は誰へ残すか、子へ一次相続から渡すべき財産は何か。現在の財産と配偶者の固有財産を整理し、必要に応じて複数パターンで相続税を比較しながら、遺言に落とし込む前の資産承継を検討します。

遺言・資産承継サポートを見る
 
この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
専門家紹介はこちら