不動産がある場合の遺言|共有・評価・換価をどう考える?
不動産がある遺言では、「誰に残すか」だけを先に決めないことが大切です。
その不動産を相続後も持つのか、共有するのか、それとも死亡後に売って現金で分けるのか。まず出口から考えます。
30秒で結論
不動産は「残す・共有する・調整する・売る」の4択から考えます
一人に残す
住む人・使う人・管理する人へ。
共有する
本当に共同保有が必要か確認。
他財産で調整
不動産と預金等を組み合わせる。
売って分ける
死亡後に換価して現金で分配。
共有|「子ども2人だから2分の1ずつ」は一度立ち止まる
共有自体が悪いわけではありません。しかし、共有した後も管理・修繕・賃貸・売却などについて複数人で意思決定する場面が続きます。
共有を検討しやすい
- 保有目的が一致している
- 管理方針が決まっている
- 費用負担を決められる
- 将来の売却方針も近い
共有を慎重にしたい
- 一人は売りたい・一人は残したい
- 賃貸経営への考え方が違う
- 共有者の次の相続が近い
- 将来さらに共有者が増えそう
評価|相続税評価額だけで「公平」を決めない
さらに賃貸不動産では、相続税評価額や市場価値だけでなく、収益力、借入、修繕、空室、管理負担も承継判断に影響します。
| 見るもの | 遺言で確認する理由 |
|---|---|
| 相続税評価 | 取得者ごとの相続税負担を見る |
| 市場価値 | 家族間の実質的な財産価値を見る |
| 収益力 | 賃貸不動産を持ち続ける合理性を見る |
| 換金性 | 必要なときに売却できるかを見る |
| 管理負担 | 修繕・空室・契約等を誰が担うかを見る |
※具体的な路線価計算、補正率、貸家建付地等の評価方法は不動産評価専用ページで詳しく扱います。
売却を前提にする遺言にも、いくつかの設計があります
「自分が亡くなったら、この不動産は売ってほしい」という希望は珍しくありません。ただし、すべて同じ書き方になるわけではありません。
| 希望 | 設計の方向 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 必ず売って子2人へ分けたい | 換価を前提とした遺言 | 売却実行者、費用、税金、分配割合 |
| 長男に残し、売るかは任せたい | 長男への単独承継 | 長男が保有・売却を判断 |
| 売却後の金銭を特定の人へ渡したい | 清算型遺贈等を検討 | 受遺者、遺言執行、課税関係 |
| 債務・費用を払った残額を分けたい | 清算型の設計 | 控除項目、残額、分配割合 |
| 売るか残すか子どもに任せたい | 承継先を決め、売却を強制しない | 共有を避けるか、判断権を誰に持たせるか |
「売って半分ずつ」だけでは足りない|売却型遺言の7確認
- どの不動産を売却するのか
- 誰が売却を実行するのか
- 売却についてどこまで裁量を持たせるのか
- どの費用を売却代金から控除するのか
- 被相続人の債務をどう扱うのか
- 残った金銭を誰に何割渡すのか
- 予定どおり売れない場合をどうするのか
遺言執行者|「誰が売るのか」を決めておく
死亡後に不動産を換価する設計では、売却を誰が実行するかが重要です。遺言執行者を指定し、必要な権限を適切に設計することを検討します。
税理士は「売却価格」より「実際に分けられるお金」を見る
例えば1億円で売れたとしても、1億円をそのまま相続人へ分けられるとは限りません。
売却前に確認
- 被相続人の取得時期
- 購入代金・建築費等の資料
- 取得費を証明できる資料
- 想定売却価格
税務で確認
- 譲渡所得の発生見込み
- 取得費・譲渡費用
- 相続税の取得費加算の適用可能性
- 誰に譲渡所得が帰属する設計か
TAX × REAL ESTATE
不動産に強い税理士は、5つの数字を分けて見ます
- 相続税評価額 — 相続税計算の基礎
- 市場価値 — 実際の売却価格の目安
- 収益力 — 保有を続ける経済性
- 税引前売却代金 — 売却時の金額
- 売却後手取り — 費用・税負担等を踏まえた実質資金
相続税評価額が低いから残す、時価が高いから売る、という一つの数字だけでは判断しません。不動産の出口まで含めて比較します。
自宅・賃貸不動産・遊休地では、遺言の答えが違います
自宅
誰が住み続けるかを最優先。配偶者の生活、将来の売却、二次相続も確認します。
賃貸不動産
誰が経営を引き継ぐか。賃料だけでなく借入・空室・修繕・管理能力まで確認します。
遊休地・空き家
誰も使わないなら、無理に共有させず、生前売却・死亡後換価も比較します。
最終的に売るなら「生前に売る」案も比較する
A|生前売却
- 本人が売却を判断できる
- 不動産を現金化してから遺言を作れる
- 生前の譲渡所得税等を確認する
B|死亡後売却
- 相続開始まで不動産を保有する
- 遺言で換価・分配方法を設計する
- 相続税とその後の売却税務を確認する
SELF CHECK
不動産の遺言を作る前のチェック
- その不動産を相続後も残したいか
- 実際に使う人・管理する人は誰か
- 共有にする明確な理由があるか
- 相続税評価額と市場価値の両方を確認したか
- 賃貸不動産なら収益力・借入・修繕を確認したか
- 他の相続人へ渡せる預金等があるか
- 死亡後に売却する可能性が高いか
- 売却するなら誰が実行するか
- 売却費用・税金を考えた後の手取りを確認したか
- 取得費資料を今のうちに探したか
FAQ
不動産を売る遺言のよくある質問
Q. 遺言に「不動産を売って子ども2人で半分ずつ」と書けば十分ですか?
希望の方向は分かりますが、実務では売却を誰が行うか、費用・債務・税金等をどう扱うか、残額をどう分配するかなども確認する必要があります。具体的条項は個別に専門家と設計することをおすすめします。
Q. 換価分割と換価遺言は同じですか?
同じ「売って分ける」結果になることはありますが、相続開始後に相続人が遺産分割として換価する場合と、生前に遺言者が換価・分配を指示する場合では出発点が異なります。本ページは主に後者の遺言設計を扱います。
Q. 清算型遺贈とは何ですか?
財産を換価し、必要な費用等を清算した後の金銭を受遺者へ渡すことを意図する遺言設計を指して使われる用語です。具体的な法的性質・課税関係は遺言内容や受遺者等によって確認が必要です。
Q. 売却代金1億円なら、2人に5,000万円ずつ残せますか?
必ずしもそうではありません。売却費用や譲渡所得に係る税負担等が生じる可能性があるため、実際に分配できる資金を別に確認します。
Q. 誰も使わない実家なら死亡後売却がよいですか?
死亡後売却だけでなく、生前売却も比較します。本人が住んでいるか、生活資金、譲渡所得、相続税評価、特例、認知症リスク等によって判断は変わります。
ROLE SHARING
このページで詳しく扱わないこと
OUR VIEW
不動産の遺言は「名義」ではなく「出口」まで設計します
当事務所では、相続税評価だけを見て不動産の承継先を決めません。
税務
相続税、納税資金、譲渡所得、取得費、二次相続。
不動産
市場価値、収益力、換金性、共有、管理、売却可能性。
承継設計
誰が持つか、誰が使うか、いつ売るか、誰へ現金を残すか。
CONSULTATION
不動産を「残すか、売るか」から整理したい方へ
不動産が財産の大部分を占める場合、遺言本文を書く前に出口を整理することが重要です。当事務所では、相続税評価・市場価値・収益力・換金性・売却後手取りまで確認し、財産承継の方向を整理します。
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