遺言で失敗しないための設計|遺留分・不動産・相続税を税理士が解説
遺言は、法律どおりに書けているだけでは十分とは限りません。大切なのは、「誰に・何を残すか」まで考え、死亡後に実行できる分け方にすることです。
「誰に何を残すか」を決める前に、6つの視点で確認します。
30秒で結論
遺言の失敗は「無効になること」だけではありません
形式上は有効でも、死亡後に困ることがあります。
- 遺留分の請求を受ける
- 不動産が共有になり、管理や売却が難しくなる
- 相続税は払えるが、手元資金が足りない
- 一次相続では有利でも、二次相続で負担が増える
CASE
例えば、こんな遺言。形式上は有効でも困ることがあります
遺言者の希望:賃貸経営をしている長男にアパートを承継させたい。
相続後:他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける。
さらに:長男は相続税も支払う必要があるが、取得財産の多くは不動産で手元現金が少ない。
結果:遺言どおり不動産を承継できても、その後に多額の現金が必要になる。
7 CHECKPOINTS
遺言を書く前に確認したい7つのこと
希望
誰に何を残したいか
遺留分
他の相続人への影響
不動産
持ち続けられるか
相続税
取得者ごとの税負担
現金
税金・遺留分を払えるか
二次相続
次の相続まで見る
実行
死亡後に手続できるか
遺留分|「希望どおり残す」と「死亡後に揉めない」は別です
一定の相続人には、法律上保障される最低限の取り分である遺留分があります。遺留分を侵害する内容の遺言が直ちに無効になるわけではありませんが、遺留分権利者から遺留分侵害額に相当する金銭の請求を受ける可能性があります。
よくある希望
- 事業を継ぐ子に会社・不動産を集中したい
- 介護してくれた子に多く残したい
- 配偶者に自宅を確実に残したい
設計で確認すること
- 誰の遺留分に影響するか
- 請求された場合の金額感
- 取得者に支払原資があるか
- 他の財産でバランスを取れないか
個別の遺留分紛争、請求・交渉等は弁護士の専門領域です。本ページでは、生前の財産承継設計として確認すべき視点を扱います。
不動産|相続税評価額だけで「公平」を決めません
預金1億円と、相続税評価額1億円の不動産。税務上の数字だけを見ると同額ですが、実際の財産としての性質はまったく異なります。
| 見るもの | なぜ確認するのか |
|---|---|
| 相続税評価 | 相続税を計算する基礎になる価額を確認します。 |
| 市場価値 | 実際に売却した場合の価格感は、相続税評価額と一致するとは限りません。 |
| 収益力 | 賃料収入だけでなく、修繕・空室・借入等を含めて考えます。 |
| 換金性 | 相続税や遺留分の支払いに必要なとき、現金化しやすいか。 |
| 管理負担 | 取得者が管理・修繕・契約等を継続できるか。 |
| 将来の税金 | 将来売却する場合の譲渡所得等も視野に入れます。 |
相続税|「一次相続の税額が安い遺言」が最適とは限りません
遺言によって誰がどの財産を取得するかは、各人の最終的な相続税負担や利用できる特例等にも関係します。
配偶者の税額軽減
配偶者が実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までを基準に、一定の要件のもと税額が軽減されます。
小規模宅地等の特例
一定の宅地等について評価額を減額できる制度ですが、宅地の利用状況、取得者などの要件があります。誰が取得するかまで確認して設計します。
税理士は「2つの現金不足」を見ます
不動産や自社株などを特定の人へ集中して残す場合、死亡後に問題になるのは財産額だけではありません。実際に支払える現金があるかが重要です。
二次相続|夫婦の相続は2回で考えます
夫婦の一方が亡くなった一次相続だけを見ると、配偶者へ多く残すことで税負担が小さくなる場合があります。しかし、その後に残された配偶者が亡くなる二次相続では状況が変わります。
一次相続だけを見ると
配偶者の税額軽減などにより、配偶者へ多く財産を残す案が有利に見えることがあります。
二次相続まで見ると
配偶者固有の財産に一次相続で取得した財産が加わり、次の相続で子どもの税負担等が大きくなる場合があります。
死亡後に「実行できる遺言」かも確認します
遺言の内容が決まったら、死亡後にその内容を実現できるかを確認します。不動産の名義変更、預貯金の手続、遺言執行者の指定など、実行面の設計も重要です。
争い
遺留分、遺言無効、相続人間の紛争等。
登記
不動産の相続登記、登記実務等。
方式
公正証書遺言等の作成実務。
財産設計
相続税、評価、不動産、納税資金、二次相続。
TAX ACCOUNTANT’S VIEW
税理士はここを見る|「税額」だけではなく、相続後まで確認します
- 実際の取得者ごとの相続税額
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例の適用可能性
- 一次相続と二次相続
- 各相続人の納税資金
- 不動産の相続税評価と市場価値
- 不動産の収益力・換金性
- 将来売却する場合の税負担
相続税評価額を均等に分ければ公平、とは考えません。その財産を受け取った後に、持ち続けられるか、税金を払えるか、将来処分しやすいかまで含めて考えます。
DESIGN EXAMPLE
同じ財産でも、遺言の設計は変わります
案A|評価額を均等にする
相続税評価額を基準に、3人が同程度になるよう分ける。
案B|使う人・管理する人を重視する
配偶者に自宅、管理できる長男に賃貸不動産、長女に預金を組み合わせる。
案C|税金・現金・二次相続まで見る
配偶者の生活、小規模宅地等の適用可能性、取得者ごとの相続税、納税資金、二次相続まで試算して調整する。
SELF CHECK
遺言を書く前のセルフチェック
- 相続人を正確に確認した
- 預金・不動産・株式など財産を一覧にした
- 不動産の相続税評価だけでなく市場価値も把握した
- 不動産を共有させる必要が本当にあるか検討した
- 遺留分への影響を確認した
- 各相続人の概算相続税を確認した
- 相続税を払う現金が誰に残るか確認した
- 遺留分を請求された場合の支払原資を確認した
- 配偶者の生活資金を確認した
- 一次相続だけでなく二次相続も確認した
- 取得予定者が先に亡くなった場合も考えた
- 死亡後に誰が遺言を実行するか確認した
FAQ
遺言設計のよくある質問
Q. 遺留分を侵害する遺言は無効ですか?
遺留分を侵害する内容であることだけを理由に、直ちに遺言全体が無効になるわけではありません。ただし、遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。具体的な紛争・請求対応は弁護士への相談が必要になることがあります。
Q. 子ども2人なら、不動産を2分の1ずつにすれば公平では?
金額上は公平に見えても、共有後の管理、売却、建替えなどの意思決定が複雑になることがあります。他の財産との組合せも含めて検討します。
Q. 配偶者に全部残せば相続税はかかりませんか?
配偶者の税額軽減には大きな効果がありますが、実際に取得した財産や申告等について要件があります。また二次相続まで含めると、家族全体の税負担等が変わる可能性があります。
Q. 相続税がかかりそうなら、遺言を書く前に計算した方がよいですか?
課税が見込まれる場合、不動産が多い場合、配偶者と子の取得割合を調整する場合などは、概算でも事前に確認する価値があります。
Q. 節税効果が最も高い遺言が一番よいですか?
税負担は重要な判断材料ですが、それだけで決めるものではありません。配偶者の生活、財産管理、相続人間の公平感、不動産の収益力や換金性などを合わせて考えます。
Q. 不動産は相続税評価額で平等に分ければよいですか?
相続税評価額は相続税計算のための重要な価額ですが、市場価値や収益力、換金性、管理負担とは別の視点です。当事務所では複数の視点から承継先を検討します。
ROLE SHARING
詳しい制度・手続は、それぞれの専門ページで確認できます
OUR VIEW
当事務所は「遺言書」ではなく「相続後まで困らない資産承継」を設計します
遺言書は、資産承継を実現するための手段の一つです。当事務所では、相続税だけ、不動産だけ、遺言の文章だけを切り離して考えるのではなく、家族・財産・税金・不動産・相続後の生活を一緒に確認します。
税務
一次・二次相続、特例、取得者ごとの税負担、納税資金まで確認。
不動産
相続税評価、市場価値、収益力、共有、管理、売却まで確認。
承継
誰に何を残すかだけでなく、死亡後に実行できる形まで整理。
CONSULTATION
遺言の文章を書く前に、財産の分け方から考えたい方へ
相続税がかかる、不動産が多い、遺留分が気になる、配偶者と子への分け方に迷う場合は、遺言本文を作る前の設計が重要です。当事務所では、現在の財産を整理し、必要に応じて相続税を試算しながら、遺言に落とし込む前の財産承継を検討します。
遺言・資産承継サポートを見る

















