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遺言執行者とは|役割・必要性・できること

遺言は「書いて終わり」ではありません。
死亡後に、遺言どおりの財産承継を実際に進める人が「遺言執行者」です。

遺言をつくる誰に・何を残すか決める
遺言執行者遺言内容を実現する
財産を承継預金・不動産・遺贈・換価等
01遺言を実行する人
02すべての遺言で必須ではない
03遺言で指定できる
04相続人でもなれる
05複雑な遺言ほど重要

30秒で結論

遺言執行者は「遺言の内容を実現する人」です

必ず指定しなければならないわけではありません。ただし、相続人以外への遺贈、不動産、預貯金、換価、相続人が多いケースなどでは、死亡後の手続を誰が進めるかまで決めておく意味が大きくなります。

何をする?

相続財産を確認し、遺言の内容を実現するために必要な手続を行います。

誰がなれる?

一定の欠格事由を除き、相続人を指定することもできます。遺言内容に応じて選びます。

いつ動く?

遺言者の死亡後、就任・通知・財産確認を経て、遺言の執行へ進みます。

01

遺言執行者とは?

裁判所は、遺言執行者を「遺言の内容を実現する者」と説明しています。民法1012条は、遺言執行者に、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を認めています。

大切なのは「相続人の代表者」ではないこと。遺言執行者は、相続人全員の希望をまとめる人ではなく、まず遺言者が残した遺言の内容を実現する立場です。
02

遺言執行者は必ず必要?

すべての遺言について、遺言執行者を必ず指定しなければならないわけではありません。相続人だけで実現できる遺言もあります。

指定を強く検討したいケース

  • 相続人以外の人へ財産を遺贈する
  • 不動産が複数ある
  • 預貯金・有価証券が多い
  • 不動産等を売却して現金で分ける
  • 相続人が多い、遠方・海外にいる
  • 財産を特定の相続人へ集中させる
  • 死亡後の手続を中心になって行う人がいない
  • 遺言内容の実現に複数の手続が必要

比較的シンプルなケース

  • 相続関係が単純
  • 財産の種類が少ない
  • 相続人間の連絡・協力に問題がない
  • 遺言内容の実現に複雑な処分がない

※それでも遺言内容によって判断は変わります。「家族だから不要」と一律には判断しません。

03

遺言執行者ができること・できないこと

手続・行為考え方ポイント
相続人への就任・遺言内容の通知任務開始後の重要な初動です。
相続財産目録の作成相続人の請求があるときは目録を作成し交付します。
遺贈の履行遺言執行者がいる場合、遺贈の履行は遺言執行者のみが行います。
特定財産承継遺言の対抗要件具備一定の範囲で必要な行為が可能です。
一定の預貯金の払戻し・解約特定財産承継遺言について民法1014条3項の規定があります。
不動産を売却して分配換価を内容とする遺言など、遺言内容・権限を確認して判断します。
遺言内容を自分の判断で変更×遺言執行者は遺言を書き換える人ではありません。
相続人間の紛争を代理して解決×紛争代理は遺言執行者という地位とは別問題です。
相続税申告を遺言執行者の資格だけで代理×税務代理は税理士業務として別途整理します。
「遺言執行者なら何でもできる」わけではありません。具体的な権限は遺言の内容、対象財産、民法その他の法令を確認して判断します。
04

死亡後は何をする? 遺言執行の流れ

STEP 1遺言確認方式・内容を確認
STEP 2就任任務を開始
STEP 3相続人へ通知就任・遺言内容
STEP 4財産確認対象財産を整理
STEP 5執行預金・登記・遺贈・換価等
STEP 6完了引渡し・報告等
自筆証書遺言では「検認が必要か」も確認します。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書など、検認が不要となるものがあります。遺言執行者の問題と遺言書の保管・検認は別に整理します。

自筆証書遺言書保管制度|法務局保管の使い方 →

05

相続人は勝手に財産を処分できる?

遺言執行者がある場合、民法1013条は、相続人が相続財産の処分その他、遺言の執行を妨げる行為をすることを制限しています。

だからこそ、遺言執行者の有無は死亡後の実行力に関係します。ただし、第三者との関係など例外・対抗関係もあるため、「相続人がした処分はすべて絶対に無効」と単純化しません。
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誰を遺言執行者に選ぶ?

民法上、未成年者と破産者は遺言執行者になることができません。それ以外については、相続人を指定することも可能です。ただし、「なれるか」と「その人を選ぶのが適切か」は別問題です。

候補向いている場面確認したい点
配偶者・子など家族内容が比較的単純で、家族関係が安定事務負担、年齢、居住地、他の相続人との関係
弁護士法的対立の可能性が高い、複雑な法的論点紛争対応が必要か、報酬等
司法書士等不動産・登記手続が大きな比重を占める執行全体の範囲と他専門家との連携
信託銀行等財産が多い、長期・組織的な執行を重視受託基準、対象財産、報酬等
選び方の基準は「資格名」ではなく、遺言内容です。不動産、税務、換価、遺留分、相続人関係まで見て、死亡後に実際に動ける体制を考えます。
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遺言執行者を指定していなかったら?

遺言で遺言執行者が指定されていない場合や、指定された遺言執行者がいなくなった場合には、利害関係人の申立てにより家庭裁判所が遺言執行者を選任することができます。

誰が申立て?

相続人、受遺者、遺言者の債権者などの利害関係人。

どこへ?

遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。

費用は?

執行対象となる遺言書1通につき収入印紙800円+連絡用郵便料。

家庭裁判所による選任が必要になると、死亡後に一つ手続が増えます。執行者が必要になる可能性が高い遺言では、生前に誰を指定するかまで決めておくことに意味があります。
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不動産がある遺言|「誰が取得するか」と「誰が実行するか」は別

遺言設計

誰に不動産を残すかを決める。

  • 単独承継
  • 共有
  • 換価
  • 代償

遺言執行

死亡後に誰が手続を進めるかを決める。

  • 登記への対応
  • 売却手続
  • 代金管理
  • 受遺者等への引渡し

不動産がある場合の遺言|共有・評価・換価をどう考える? →

IMPORTANT

換価遺言|不動産を売って現金で分ける場合は特に注意

例えば、「不動産を売却し、債務や費用を支払った残額をA・B・Cへ一定割合で分配する」という遺言です。遺言執行者が売却・代金管理・分配を担う設計が考えられます。

不動産相続財産
遺言執行者が換価売却・代金管理
金銭を分配遺言に従って交付
ここで税務が発生します。「遺言執行者が売却した=遺言執行者に譲渡所得が課税される」という単純な関係ではありません。換価遺言の法的性質、受遺者、相続人、財産の帰属等により相続税・譲渡所得の検討が必要です。

国税庁税務大学校でも、換価遺言について「相続税の課税財産は何か」「不動産等を換価した場合の譲渡所得の納税義務者は誰か」などを主要論点として研究しています。したがって、換価遺言は遺言文案だけでなく税務まで一体で確認すべき類型です。

TWO CLOCKS

死亡後は「遺言執行」と「相続税」が同時に動きます

遺言執行の時計

  • 遺言確認
  • 遺言執行者就任
  • 相続人への通知
  • 財産確認
  • 預金・不動産・遺贈・換価
  • 財産の引渡し・執行完了
同時進行

相続税の時計

  • 相続人調査
  • 財産・債務調査
  • 財産評価
  • 取得者・特例確認
  • 納税資金確認
  • 原則10か月以内に申告・納税
遺言があるから相続税申告が自動的に終わるわけではありません。遺言を実現する手続と、財産を評価して税額を確定する手続は別です。ただし、取得者・売却・換価・納税資金などで両者は密接に関係します。

TAX ACCOUNTANT’S VIEW

税理士ならここを見る|「執行できるか」だけでなく、その後の税金まで確認する

遺言執行で確認
  • 誰が何を取得する遺言か
  • 不動産をそのまま承継するか
  • 売却して現金化するか
  • 誰が売却・分配を実行するか
  • 遺言執行費用をどう扱うか
税務で確認
  • 相続税評価額はいくらか
  • 誰に相続税がかかるか
  • 小規模宅地等の特例等への影響
  • 納税資金が足りるか
  • 売却時の譲渡所得は誰に帰属するか

遺言執行は法律上の「実行」、相続税申告は税務上の「確定」です。資産家・不動産所有者では、この二つを別々に考えないことが重要です。

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遺言執行者・専門家の役割を混同しない

役割中心となる仕事
遺言執行者遺言内容を死亡後に実現する
税理士相続税申告、財産評価、譲渡所得等の税務
司法書士相続・遺贈等に伴う不動産登記等
弁護士相続紛争、交渉、調停、訴訟等
一人ですべてを抱える必要はありません。重要なのは、遺言内容に応じて必要な専門家が連携できるよう、死亡後の実行体制まで設計しておくことです。

SELF CHECK

遺言執行者を指定すべきかセルフチェック

  • 相続人以外へ財産を遺贈する予定がある
  • 不動産がある
  • 不動産を売却して代金を分ける予定がある
  • 預貯金・証券口座が複数ある
  • 相続人が多い
  • 遠方・海外に住む相続人がいる
  • 財産を一人へ集中承継させたい
  • 事業・自社株等がある
  • 死亡後に中心となって手続をする家族がいない
  • 家族の一人に大きな事務負担をかけたくない
  • 遺言内容と相続税・不動産売却が密接に関係する
当てはまる項目が多いほど、「誰を遺言執行者にするか」まで遺言作成時に検討する価値が高くなります。

FAQ

遺言執行者のよくある質問

Q. 遺言執行者は必ず必要ですか?

すべての遺言で必須ではありません。ただし、遺贈、不動産、換価、複数の金融機関など、死亡後の執行が複雑になるほど指定する実益が大きくなります。

Q. 子どもを遺言執行者にできますか?

成年の子などを指定することは可能です。ただし、他の相続人との関係、年齢、事務能力、負担、不動産や税務の複雑性等も確認して判断します。

Q. 財産を多くもらう相続人を遺言執行者にしてもよいですか?

直ちに禁止されるわけではありません。ただし、他の相続人から見た中立性や、執行内容の複雑性、利益対立の可能性等を考えて選定します。

Q. 遺言執行者を指定していなかった場合は?

必要がある場合、利害関係人が家庭裁判所へ遺言執行者選任を申し立てることができます。

Q. 遺言執行者は不動産を売却できますか?

遺言の内容・与えられた権限によります。換価して代金を分配する遺言などでは売却が執行内容となり得ます。具体的な遺言文言と権限を確認します。

Q. 遺言執行者は銀行預金を解約できますか?

遺言内容によります。民法1014条には、特定財産承継遺言の対象が預貯金債権である場合の払戻請求・解約申入れについて規定があります。金融機関の実務も含めて確認します。

Q. 遺言執行者が相続税申告もしてくれますか?

遺言執行者という地位と税務代理は別です。相続税申告・税務代理を依頼する場合は、税理士への依頼として整理します。

Q. 遺言執行者に報酬は必要ですか?

遺言で報酬を定めることができます。また、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって報酬を定める仕組みもあります。専門家・金融機関へ依頼する場合は、それぞれの報酬体系を事前に確認します。

Q. 遺言執行者は辞められますか?

就任後は、正当な事由がある場合に家庭裁判所の許可を得て辞任する制度があります。また、任務を怠った場合等には利害関係人が解任を請求できる制度があります。

OUR VIEW

遺言は「内容」と「実行」の両方を設計する

何を残すか

不動産・預金・株式等を整理する。

誰に残すか

遺留分・税金・生活・二次相続まで考える。

誰が実行するか

死亡後の執行者と専門家連携を決める。

遺言の完成は、署名・押印した時点だけではありません。その内容が死亡後に無理なく実現でき、相続税申告・不動産登記・必要な売却等へつながるところまで考えておくことが重要です。

CONSULTATION

「誰に何を残すか」から「誰が実行するか」まで整理します

当事務所では、遺言の形式だけでなく、相続税・不動産・納税資金・二次相続を踏まえ、死亡後に実行可能な資産承継を整理します。登記・法務等については、必要に応じて各専門家との役割分担を行います。

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この記事を担当した執筆者
佐々木税務会計事務所 共同代表 佐々木謙
保有資格
専門分野相続・贈与・不動産・法人経営
経歴経営コンサルティング会社において約10年間、企業経営や事業承継に関するコンサルティング業務に従事。その後、法律事務所にて約5年間、相続・資産承継に関する実務を経験し、大手税理士法人では約10年間にわたり、相続税申告、財産評価、事業承継、生前対策など資産税業務を専門に担当しました。 これまで培ってきた税務・法務・経営コンサルティングの知見を活かし、一般のご家庭から地主・企業オーナーまで、幅広いお客様の相続・資産承継をサポートしています。 現在は佐々木税務会計事務所の共同代表として、「創族(そうぞく)」を理念に掲げ、相続税申告にとどまらず、生前対策、遺言書作成、家族信託、事業承継など、ご家族の未来を見据えた総合的な相続サポートに取り組んでいます。 相続は税金だけの問題ではなく、ご家族の人生に関わる大切な節目です。税務・法務・経営、それぞれの視点から最適な解決策をご提案し、お客様が安心して未来へ歩んでいただけるよう、分かりやすく実践的な情報発信にも力を入れています。
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